2015.08.21
幅允孝のよく噛んで読みましょう #2 冷水さんのハーブレシピ
時に味わい深く、時に人生の栄養となるのは、ひと皿のおいしい料理も、一冊の素敵な本も同じなのかもしれません。ブックディレクターの幅允孝さんがそんな「よく噛んで」読みたい、おいしい本たちを紹介してくれます。今月は目にもカラダにも涼やかなハーブのレシピブックです。
真夏のカラダを活性化させる本『ハーブのサラダ』
「今日も暑い1日になりそうです。」と毎朝ニュースキャスターは言っている。「熱中症にご注意ください」というテレビの声に「はいはい、わかりました」と独り言で応え、本日も灼熱の世界に飛び込んでいく。
ここまで暑い日が続くと、さすがに体調もよろしくない。「果たして2020年の東京オリンピックは、こんな時期の開催で大丈夫なのだろうか?」と5年後を心配する前に、まずは今年の高校球児の無事を祈るべきか。いやいや、球児のカラダも気にかかるが、まずは自分の体をしっかり保たなくては。
というわけで、滋養のあるものを食べたいが、どうも最近は胃袋も疲弊気味。そこで助けてもらったのが、冷水希三子さんの『ハーブのサラダ』というレシピである。爽やかな葉っぱを食べて、まずは胃の活性化を図ろうというわけだ。
アタマとカラダの消化に良い、たった3行のシンプルレシピ
ハーブ関連本はたくさんある中で、この新刊は実に明快なレシピ集といえる。既刊で多いのは、ハーブの効能やスパイスと合わせた使い方辞典など。しかし、この本はパセリ、ディル、コリアンダー、ミント、バジル、タイムなどなどを存分に用いたシンプルなレシピ集として徹底している。
例えば、レモンバームの頁を開いてみよう。「主に葉を使う」とか「香りを移したいものも向く」といった使い方や相性の良い食材を簡単に教授。その後に続くレシピは、せん切りのレモンバームを使った「いんげんサラダ」やキャベツにりんごを加えた「レモンバームコールスロー」など疲れた胃も受け付けてくれそうなものばかりだ。
冷水さんの前作『ONE PLATE OF SEASON』にも通じることだが、彼女のレシピの特徴は、3〜4行程で完成させることができる潔さにある。本書の中では「タイムのスコーンと葉っぱのサラダ」の6行程が最大だったが、ほとんどがあっという間にできてしまう手軽さ。それでいて「押さえるところはしっかり押さえる」気配りが、著者の人柄を想像させる。
また、冒頭で紹介するハーブの基本的な取り扱い方は、誰にとってもきっと役立つはずだ。同じハーブといっても育った場所によって香りや味は違うのだから、まずはそれらを確かめるところからハーブとの付き合いをスタートさせるという話。洗うというより水に浸すハーブならではの洗浄法。ビニールとペーパータオルを用いた水をしっかり切るためのミルフィーユ型保存法など、目から鱗のアイデアがいっぱいだ。
ハーブを身近にひきよせる、涼やかな心持ちの本をどうぞ
ハーブというと、なんだか洒落た料理の傍につんとした顔で鎮座しているイメージをお持ちの方もいるかもしれない。けれど、この本を読めば、ハーブが食卓の主役にもなるし、絶妙なスパイスにもなることを教えてもらえる。種類によって好き嫌いはあるかもしれないけれど、ハーブは随分自由な食材。自分の好きな香りをむしゃむしゃしながら、なんとか涼やかな気持ちになってください。ちなみに冷水希三子さんって、名前も涼しげで素敵ですよねぇ。
Profile
幅允孝(はば・よしたか)
ブックディレクター/BACH(バッハ)代表。
人と本がもうすこし上手く出会えるよう、さまざまな場所で本の提案をしている。
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