2023.11.21
関西の冬の定番! 鮭を使った「粕汁」のレシピ。シチューのように濃厚です
寒さが増すと、温かい汁ものが何よりおいしいですよね。全国的には豚汁が有名ですが、関西地方では昔から、「粕汁」が冬の定番として愛されています。なぜ関西かというと、粕汁に使われる酒粕が出回るのが日本で最も寒い12月~3月の新酒の時期であり、関西には神戸の灘や京都の伏見といった日本を代表する酒処があるからといわれています。
そこで今回は「豚汁のように具だくさんな汁もののレパートリーを増やしたい!」と思っている方や、「甘酒用に買った酒粕が使い切れなくて困っている」という方にも役立つ粕汁のレシピを、料理研究家で栄養士でもある橋本加名子さんに教えてもらいました。
酒粕とは4種類ある。粕汁に使いやすいのは「板粕」と「バラ粕」
まずは粕汁を作る前に、どんな酒粕を使えばよいか知っておきましょう。
酒粕とは、日本酒の元となる醪(もろみ)から日本酒を搾ったときに出る白い「かす」のこと。実は酒粕といっても「板粕」「バラ粕」「ペースト状の粕」「練り粕(踏み込み粕)」の4種類があります。
おもに出回っているのは、板状に搾られた酒粕をそのままはがした「板粕」と、バラバラになった「バラ粕」の2種類です。バラ粕は商品によっては板粕より水分量が多いものもありますが、形状が違うだけです。どちらもアルコール分を8~9%含んでいるので傷みにくく、常温保存もできます。商品によりますが、冷蔵で6か月程度の保存が可能です。
「ペースト状の粕」はパックやパウチ袋に入っていた粕です。圧力をあまりかけずに搾られたものや、料理に使いやすいよう板粕やバラ粕を酒などで伸ばして作られたものなど、商品によって保存の条件や賞味期限が異なります。
「練り粕(踏み込み粕)」は茶褐色をしたペースト状の粕です。板粕、バラ粕を足で踏み込むか機械で混ぜて空気を抜き、ひと夏(4~6か月)熟成させた酒粕で、アミノ酸が豊富でうま味が濃いのが特徴です。瓜などの野菜、肉・魚を漬け込む用に使用されています。
今回は、手に入りやすく品質も平均的な板粕とバラ粕のうち、板粕を使って作ります(バラ粕でも同様に作れます)。
粕汁とは? うま味たっぷり、マイルドに作る2つのポイント
「粕汁とはもともと、お正月に食べた鮭やぶりなどの残った頭や骨からだしをとり、酒粕と根菜をはじめとした冬野菜を煮込んで作る料理でした。今では魚以外に豚肉や鶏肉も使われますが、私は父が北海道出身でお正月に荒巻鮭を食べる習慣があったので、子どもの頃から鮭を使った粕汁に慣れ親しんできました」
なお、酒粕にはアルコールが8~9%ほど含まれています。粕汁を食べると「飲酒運転になる?」「子供は食べられる?」と疑問に思う方がいるようですが…。
「今回紹介するレシピでは、しっかり煮立たせているので、アルコール度数はかなり低くなります(※アルコール分は完全に飛ぶことはありません)。それでも気なる場合は、沸騰時間をレシピより長くするか、食べるのを控えてください」
それでは粕汁作りの2つのポイントを見ていきましょう!
【ポイント①】鮭はうま味が出るアラの部分を使い、霜降りをして臭みをとる
鮭は熟成によるうま味が出た塩鮭のなかでも、塩加減がほどよい甘塩(甘口)鮭を使います。身よりも骨からうま味が多く出るので、骨が多くついた「カマ」などのアラの部分を使うとおいしくなります。魚売り場では、お買い得品コーナーに「切り落とし」という名称でも売られていることがあるので、チェックしてみてください。
鮭はそのまま使うと生臭みを感じるので、熱湯をかける「霜ふり」という下処理をして臭みをとります。切り身だけを使う場合も必ず行ってください。
【ポイント②】酒粕は煮汁でゆるめてから加え、ひと煮して酒臭さ、アルコール分を飛ばす
板粕もバラ粕も、そのままでは溶けにくくダマになりやすいので、煮汁でゆるめてペースト状にしてから使います。
また、酒粕はアルコール分を含んでいるので、2~3分煮てアルコール分を飛ばしましょう。煮ることで同時に酒臭さも抜けて、食べやすく良い風味に変わります。
「私の父はお酒が飲めなかったのですが、粕汁は大好物だったので、このポイントをしっかり守って作り、お酒が苦手な方やお子さんにもおいしく召し上がってもらえると嬉しいですね」
鮭と根菜のうま味たっぷり! まったり濃厚な「粕汁」の作り方
<材料>(4人分)
- 鮭(甘塩)…アラや切り身、合わせて300g
- じゃがいも(男爵)…1個
- 大根…100g
- にんじん…1/3本
- ごぼう…1/2本
- こんにゃく(アク抜き不要タイプ)…1/2枚
- 昆布…1枚(5㎝)
- 水…5カップ
- 酒粕(板粕、またはバラ粕)…150g
- みそ(好みのもの)…大さじ1~2
- サラダ油…大さじ1
- 細ねぎ(小口切り)…適量
<作り方>
1. 具材を切る
じゃがいもは皮をむき、8等分に切って水に浸けておく。大根とにんじんは皮をむき、7mm厚さのいちょう切りにする。ごぼうはよく洗い、7mm厚さの斜め薄切りにして酢水(分量外)に浸けておく。こんにゃくは7mm厚さの色紙切りにする。
2. 鮭に熱湯をかけて臭みをとる(霜ふり)
ボウルの上にザルを置き、鮭の皮目を下にして乗せ、熱湯を回しかける。全体的に白っぽくなるまで熱湯をかけたら、水気をきる。
「甘塩鮭は塩に漬けた加工品なので生の切り身のように血などはついていません。白っぽくなれば、臭みはお湯と一緒に流れていきます。片面だけにお湯をかけるだけでOK。皮目にもお湯をかけたり、この後に水洗いしたりする必要もありません」
3. 野菜とこんにゃくをさっと炒める
鍋にサラダ油を中火で熱し、大根、にんじん、水気をきったごぼうを入れて炒める。全体的に油がまわったら、こんにゃくを加えてひと混ぜする。
4. じゃがいも、昆布、鮭を加え、弱めの中火でゆっくり煮てうま味を引き出す
水気をきったじゃがいもを加え、分量の水を注ぐ。昆布、2の鮭を加えて弱めの中火にする。
「鮭は煮崩れやすいので、切らずにそのまま入れてください。鮭からだしが出るので、かつお節でだし汁をとる必要はありません。一緒に昆布を入れて、じっくり弱めの中火でうま味を引き出していきます」
5. 煮立ってきたら昆布を取り出し、アクを取り除いてさらに煮る
煮立ってきたら昆布を取り出す。さらに煮てアクが浮いてきたら取り除く。
「結構アクが浮いてくるので、ていねいに取り除きましょう」
6. 酒粕に煮汁を加えてゆるめ、ペースト状に溶きのばす
5を煮ているあいだに、ボウルに酒粕を細かくちぎって入れ、5の煮汁を1と1/2カップ取り出して加える。小さめのホイッパーなどで酒粕をほぐすように混ぜ、ペースト状に溶きのばす。
「酒粕は温かいほど柔らかくなりやすいので、煮汁で溶きのばします。細かなペースト状にならなくても、大きな塊がなくなればOKです」
7. 酒粕を鍋に加え、中火にして2~3分煮て酒臭さを飛ばす
5の鍋に6の酒粕を加え、ひと混ぜする。中火にして煮立ったら2~3分加熱する。
「しっかり煮立てることでアルコール分が飛び(※)、酒臭さがやわらいで酒粕の甘い風味が引き立ちます」
※アルコール分は完全に飛ぶことはありません。
8. 仕上げにみそを溶き入れ、火を止める
味をみて、仕上げにみその分量を適宜調整しながら溶き入れ、火を止める。器に盛り、細ねぎをちらせば完成。
「使う鮭の塩分濃度によって汁の味の濃さが変わるので、必ず味見してから加減してみそを加えましょう。鮭の塩気を考えて、みそ汁よりも薄めにすると味のバランスよく仕上がります。冷めると具材が汁を吸うので、汁が少なく感じたらお湯を足してください」
まるでクリームシチューのような濃厚さ! コク深くて体の芯からポカポカ温まる「粕汁」の完成
お椀からは酒粕の甘く芳醇な香りがして、それだけで食欲をそそります。汁をひと口いただくと、まるでクリームシチューのようにクリーミーな舌ざわりと濃厚なお味! 鮭の塩気が良いアクセントになって、根菜の甘さを引き立ててくれます。鮭のアラはドーンと大きいまま料理しているので、食べ応えも抜群です。
酒粕には血管を拡張する成分が含まれているそうですが、しばらくすると体がポカポカしてきて、粕汁は寒い冬にうってつけの食べ物だと実感できました。
「日本酒と同じく酒粕にも味の違いがあって、粕汁の味も変わります。そんな違いも楽しんでみてください。みそも白みそにすると、より関西風に近くなりますよ」
心も体も温まる粕汁、この冬、ぜひ作ってみてください!
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橋本加名子さん
料理研究家、栄養士、フードコーディネーター、国際薬膳調理師。タイ料理、ヴィーガンタイ料理、和食、発酵の料理教室「おいしいスプーン」主宰。企業で働きながら子育てをした経験を活かし、「体にやさしくて、作りやすい家庭料理」を提案し続けている。飲食店のプロデュースやフードコーディネートにも携わる他、雑誌、書籍、ウェブサイト等で活躍。『ホットクックお助けレシピ』シリーズ(河出書房新社)、『たんぱく質の10分おかず』(ART NEXT)など著書多数。
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