2023.10.06
【プロ解説】西洋梨ラ・フランス、ル・レクチェ、和梨の違いとは? 切り方、食べ方、食べ頃、保存方法
梨と聞くと、シャリシャリした食感の和梨を思い浮かべる人が多いのでは? ただ最近は、とろけるような舌触りと上品な甘さがたまらない洋梨(西洋梨)に注目が集まっているんです!
洋梨と聞くと海外から輸入されるフルーツと思われがちですが、実はここ最近で販売されているものの多くが国産。有名な品種「ラ・フランス」「ル・レクチェ」以外にも、さまざまな品種が秋から冬にかけて出回るようになってきました。最近は贈答用のフルーツとしても人気なのだとか。
そこで今回は和梨と洋梨の違いをはじめ、洋梨の食べごろの見分け方、美味しく食べるコツまでを、東京・日本橋三越本店にあるフルーツ専門店<サン・フルーツ>店長の阿部昌弘さんに解説してもらいました。
旬の洋梨をより美味しく食べるための、プロならではのポイントが満載です!
目次
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【和梨・洋梨の違い】和梨はもぎたて、洋梨は収穫後の追熟で美味しくなる!
梨は、一般的には大きく和梨(日本梨)、洋梨(西洋梨)、中国梨の3つに分類されます。ここでは和梨と洋梨の違いについて解説します。
総じて洋梨は和梨と比べるとよりやわらかな食感、芳醇な香り、甘くジューシーな味わいが魅力です。生産上の大きな違いは、洋梨は樹になっている状態で完熟させてから収穫する「樹上完熟」ではなく、未熟な状態で収穫してから貯蔵して「追熟」で完熟させるという点があげられます。
「洋梨は樹上で完熟しないので、収穫したてはゴリゴリとかたく、甘みも少なく、青草のような独特の香りがあります。しかし収穫後に追熟させることで、洋梨に含まれるでんぷんが糖と水へと変化することで、やわらかくジューシーな果肉になるんです」
同じ梨でも、熟成させるタイミングが異なるとはびっくりですね!
●和梨の特徴。追熟不要で、もぎたてが最も美味しい!
日本では昔からおなじみの和梨には、大きく青梨(出荷前半は皮が黄緑色、出荷後半は黄色が強い)と赤梨(皮が黄色~濃い茶色)の2種類があります。
「青梨も赤梨も、和梨は樹上で完熟させるのが大きな特徴です。そのため収穫したあとの追熟は不要。もぎたてが最も美味しいとされています」
青梨の約80%を占める代表品種が「二十世紀」。シャキシャキとした歯応え、さわやかな甘みと酸味のバランスが特徴で、全体的にすっきりした味わいです。
一方、「幸水」「豊水」「新高」などの種類に代表される赤梨は、青梨よりも糖度が高く、酸味が少ないため、甘さが際立つ味わい。青梨ほどのシャキシャキ感はなく、少しやわらかめの食感です。
●昔の洋梨はまずかった!? 日本の追熟技術の向上や「ラ・フランス」登場で人気フルーツに
洋梨が日本に伝わったのは明治5年ごろで、山形県で栽培された「バートレッド」という品種が最初と言われています。ただし、当時は「洋梨=まずい」というイメージを持たれていたのだとか。
「それまで和梨しかなかった日本では、『追熟』という概念がなかったので、収穫したばかりの洋梨を食べて『まずい』と判断してしまったようです。そのため洋梨は生食ではなく、缶詰などに加工されるのが一般的でした」
美味しさが見直されたのは、昭和後期から。追熟の技術によって、洋梨の魅力が知られると同時に、「バートレッド」に比べて育てやすく、香りが豊かで食味の良い「ラ・フランス」が注目され始めたことで、徐々に人気のフルーツへと変化していきました。
追熟されなかったことで、かつて洋梨はまずいと思われていたのは意外ですね!
【洋梨の特徴】代表品種「ラ・フランス」と「ル・レクチェ」の旬はいつ? 味わい、見た目の違い、産地は?
次に、洋梨の特徴を見ていきましょう。日本で流通している主要な洋梨の品種は、「ラ・フランス」が約65%と大きなシェアを占めています。そして、近年じわじわと生産を伸ばしシェア約10%と追い上げている品種「ル・レクチェ」の人気も高まっています。
そんな「ラ・フランス」と「ル・レクチェ」の見た目と味わいの特徴、違いを紹介します。
●ラ・フランスの特徴は? 旬は9月下旬〜10月下旬まで
見た目 | ややゴツゴツした形状 |
味わい | なめらかな舌触りと上品な甘みが味わえる |
旬 | 9月下旬〜10月下旬 |
おもな産地 | 山形県 |
洋梨のトップシェアを占める「ラ・フランス」は、山形県がシェア6割以上を占めています。ふぞろいでゴツゴツとした見た目とは対照的に、上品でとろけるような食感が魅力です。
●ル・レクチェの特徴は? 旬は11月下旬~12月下旬
見た目 | ラ・フランスに比べて細長く、熟すと鮮やかな黄色に変化する |
味わい | ラ・フランスに比べて糖度が高く、ザラつきの少ない果肉 |
旬 | 11月下旬~12月下旬 |
おもな産地 | 新潟県 |
「ル・レクチェ」は主に新潟県で生産されており、洋梨の中でも生産が難しい品種と言われています。収穫後に40〜60日間追熟させる必要があり、きめ細やかな果肉で濃厚な甘みが特徴です。
●洋梨の産地とは。山形、青森、新潟など、寒い北日本エリアで栽培
洋梨は和梨とは違って、収穫後に追熟することで甘くなめらかな果肉になることから、「マンゴーのように温かい地域で栽培されているフルーツなのかな?」とイメージする人がいるかもしれません。
でも、実のところ洋梨の産地は北日本に集中しています。病気や虫に弱く、高温下では実がなりにくいため、主な産地は山形、新潟、青森、北海道といった寒い地域に集中しているというのは意外ですね!
ラ・フランス、ル・レクチェ以外にもある!洋梨品種はこちら>>
続いて、洋梨を購入するときの見分け方と保存方法について見ていきましょう。
【洋梨の選び方・見分け方】軸周辺の皮にシワが入ったら食べごろ!
「洋梨の食べごろを見分けるポイントは『皮の状態』です。熟してくると、軸周辺の皮にシワが現れます。皮がその状態になると果肉がやわらかくなり、洋梨特有の甘い香りが漂います。皮の変化をきっかけに、見た目、感触、香りをチェックしましょう。また<サン・フルーツ>で販売しているル・レクチェには、果皮のチェックタブが付いているので、購入時の参考にしてください」
【洋梨の保存方法】かたい場合、直射日光の当たらない場所で追熟が正解!
洋梨は完熟すると非常にやわらかく、傷みやすくなるため、未熟な状態で発送されます。そのため、食べる前に熟し具合を確認し、未熟であればしっかり追熟させることが美味しく食べるポイントです。
「未熟な洋梨は、直射日光が当たらない場所に置いて数日間追熟させましょう。熟成を早めたいときは、まず2日間ほど冷蔵庫で保管してください。冷やして果実の呼吸を一旦抑えることで、常温に戻した際に一気にでんぷんから糖に変える動きが活発化します。その後、透明なポリエチレン袋などにりんごと一緒に入れ、直射日光が当たらない場所に数日間置いてください。りんごが出すエチレンガスによって、追熟が早まる効果があるんです」
完熟した洋梨はすぐ冷蔵庫に入れるのがおすすめだそう。
「熟成がすすむと傷み始めてしまうので、完熟のサインが表れたら冷蔵庫で保存してください。追熟させた洋梨をすぐに食べきれない場合も、冷蔵庫で保存しておきましょう。ただし、冷蔵庫に入れても追熟はゆっくり進むので、完熟後はできるだけ早めに召し上がってください」
【洋梨の食べ方】冷蔵庫から出して1時間ほど常温に置けば、甘い香りを堪能できる!
洋梨の魅力は、なんといってもジューシーな甘みと芳醇な香り。これを存分に楽しむためには、食べる時に果実の温度を上げておくのがポイントです。
「完熟後は冷蔵庫に入れておくべきですが、温度が低すぎると香りが感じにくくなってしまいます。そのため食べるときは、冷蔵庫から出して1時間ほど常温に置いてからカットすると、洋梨ならではの香りが存分に楽しめます」
香りも味わいたいけれど、冷たい梨を頬張る楽しみも捨てがたいという人は、常温に戻したあと、氷水で表面だけ温度を下げる方法がおすすめ。
「昼間の暑い時間帯であれば、冷蔵庫から取り出したあと室温に1時間ほど置いてから、氷水に10分ほど浸してからカットすると、ひんやり感もありつつ芳醇な香りが楽しめますよ。氷水に入れるときは、半分程度浸かっていればOKです」
【洋梨の切り方①】実は皮ごと食べても美味しい! 縦方向に薄くスライスするのがおすすめ
実はあまり知られていませんが、追熟した洋梨の皮はやわらかくなるため、皮ごと食べることも可能です。
「洋梨の甘みは下に落ちていくので、果軸側よりも下側のお尻の部分が最も甘い部分。そのため縦に切ると、美味しい部分を均等に分けることができます」
皮つきのまま縦に2等分に切り、中央の種をくり抜き、果実を横に倒して包丁で縦方向に薄くスライスします。皮つきの場合は薄く切るのがポイントです。
「ただし洋梨品種の『バートレット』は、追熟後も皮に青臭さが残りやすいため、皮はむいて食べる方がいいでしょう」
【洋梨の切り方②】皮をむいて食べるなら、厚めにカットやサイコロ状、丸く切り抜くのもおすすめ!
皮をむく場合も、縦に2等分します。中央の種をくり抜いたあとのおすすめのカット方法は3種類。お好みの方法を試してみてください。
- 縦方向に厚めにスライスしてから、皮をむく。
- 皮をむいたあと、サイコロ状にカットする。
- 皮をむいたあと、フルーツボーラーなどで丸くくり抜き、残った部分はそのまま食べる。
なお追熟しすぎた状態(過熟)の洋梨は、果肉がもろくなってカットしにくくなります。その場合は、さっと水洗いして皮ごと薄くスライスしたり、ダイス状にカットしたりして食べるのがおすすめです。
日本橋三越本店<サン・フルーツ>に入荷予定の洋梨の品種一覧
和梨と洋梨の違いや、洋梨の味わいの特徴、美味しく食べるためのポイントについてご紹介しました。和梨と洋梨で熟成方法の仕方が違うというのは驚きでしたね!
最後に、日本橋三越本店<サン・フルーツ>では「ラ・フランス」と「ル・レクチェ」以外の品種も扱っているというので教えていただきました(以下表)。
●日本の主な洋梨の産地
洋梨の産地 | 品種 |
山形県 | ラ・フランス、バラード、オーロラ、シルバーベル、マルグリット・マリーラ、カリフォルニア、ドワイエネ・デュ・コミス |
新潟県 | ル・レクチェ |
青森県 | ゼネラル・レクラーク、バートレッド、プレコース、フレミッシュ・ビューティー |
北海道 | ブランデーワイン、レッドバートレッド、グランドチャンピオン |
ラ・フランスやル・レクチェ以外にも、さまざまな品種が国内で生産されているんですね!
旬をむかえるのは品種によって早い品種では9月上旬ごろから、旬が遅い品種では年末ごろまで出回るといったように、品種によって幅があるそうです。
毎年、天候などによって生産状況が変わり入荷される時期や品種が異なるため、そのときの旬のおすすめを知りたい場合は、ぜひ日本橋三越本店<サン・フルーツ>のスタッフにお問い合わせください!
※収穫状況によって取扱いが無い品種がございます。
※取扱い:日本橋三越本店 新館地下2階
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取材協力/<サン・フルーツ>
創業90余年のフルーツ専門店。旬のフルーツを中心に、品種や産地、生産者などにこだわった多様なフルーツを取り扱っている。手軽に食べられるカットフルーツをはじめ、ジャム、コンポート、ゼリー、ジュースなどの加工品も充実。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、日本橋三越本店 新館地下2階 サン・フルーツにてお取扱いがございます。
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