2015.07.31
お酒は20歳になってから、ウイスキーは20周年になってから!
1995年に160年ぶりに復活を遂げたアラン蒸溜所が、2015年で20周年を迎えました。ウイスキーの本場スコットランドで、いまウイスキー愛好家たちから注目を集める蒸溜所のひとつです。20周年を迎え、その気運はますます高まるばかり。
そこで、ウイスキーに熱い方々の中でも特に熱いおふたり、伊勢丹新宿店のシニアスタイリスト、眞新(まにい)惠子さんとアランモルト輸入元(株)ウィスク・イーのイベントディレクター 元木陽一さんに、注目の「アラン」の魅力について語っていただきました。
「まずは飲まないとね」と、開始早々アランを飲み始めるふたり……。実は元木さんは、2002年から2005年までアラン蒸溜所でウイスキー技師として働いていた経歴の持ち主。一方の眞新さんは、2012年にアラン蒸溜所からアンバサダーに任命されています。まさにアランウイスキーを知り尽くしたふたりの、熱い対談をご堪能ください。
160年ぶりに復活した、アラン島唯一の蒸溜所
眞新惠子さん(以下、眞新):私は2010年に洋酒コーナーに配属されてからアランのおいしさを知ったんです。それをお客さまに伝えていたら、いつの間にかウイスキーの売上げ上位のブランドが「アラン」で塗り替えられていました。いまアランのウイスキーは10種類置いているのですが、これだけ並んでいるところはなかなかないと思います
元木陽一さん(以下、元木):僕もよくここのコーナーに販売兼カウンタースタッフとして来ていて、眞新さんと一緒にアランのクオリティの高さをお客さまに訴えかけながら販売していたら、全国の百貨店のなかでも伊勢丹新宿店のお客さまに、飛び抜けてアランをお買い求めいただけるようになったんですよね。
眞新:そうしたら2012年にアンバサダーに任命されて、初めてアラン島に行ったんです。すごくきれいなところで、野生の動物もたくさんいて驚きました!
元木:アラン島はグラスゴー(※)のすぐ近くにあるソラマメのような形をした島なのですが、まだまだ自然が多く残っているんです。島の南側は田園風景が広がって羊や牛の牧場もあります。対して北側は荒涼とした山と谷が入り組んでいて、南と北で風景がまったく違う。その様子はスコットランドの地形をぎゅっとまとめたようだというので、英国では『スコットランドのミニチュア』とも言われています。アラン蒸溜所があるのはその北側。山を越えたところにポツンとあるんです。 ※スコットランド南西部に位置する、スコットランド最大の都市
眞新:アラン島にある唯一の蒸溜所なんですよね。
元木:約200年前には100軒程あったそうなのですが、一度すべて無くなって、1995年に160年ぶりに復活したのが、アラン蒸溜所。水質を調査して、いちばん柔らかくて納得できる水が見つかったから、そこに建てることにしたそうです。
麦芽の甘みが豊か、すっぴんで勝負するウイスキー
眞新:とても柔らかい水を使っているから、すごくシンプルで「すっぴん」で勝負しているようなウイスキーができるんですね。アイラ島のようなスモーキーさでも、シェリー樽熟成の濃厚な味わいでもなく、麦芽の甘みや旨みがとても感じられる。うまく蒸溜しないとそれは出せないのだろうなというピュアな魅力が、アランモルトにはありますね。
元木:おっしゃる通り、アラン蒸溜所では、雑味が多いヘッド(蒸溜する際の出始め)とテイル(蒸溜の出終わり)を大胆にカットして、ミドルカットといういちばん磨かれた液体の部分だけを使います。もっともピュアな部分しか使わないので、1日数樽しか造れません。でもそのおかげで、麦芽の旨みだけが残るんです。また、背の高いポットスチルでゆっくり蒸溜するため、ポットスチルの銅と接する時間が長くなり、アルコール蒸気がエレガントで上品なスピリッツができます。
眞新:何年も何十年もそこで眠るわけですから、アラン島のきれいな空気も味には関係していますよね。
元木:熟成庫で眠っている間に潮風を吸っているので、華やかな甘さの中に潮の香りがあって、すごくフルーティーに感じられます。あの田舎の空気がこの液体に含まれているんですね。
今飲んでほしい! 旨みがのったアランの『10年』
眞新:アランモルトを初めて飲む方におすすめしたいのは、『10年』ですね。モルトウイスキー自体が初めての方にも、モルトウイスキーの特徴をストレートに感じてもらえると思います。飲み飽きなくて、ずっと飲んでいてもまだ飲みたいと思えるんです。
元木:強烈な個性があるわけではないのですが、意外とウイスキー通が飲んでも「なるほど」と思える。旨みに到達するのが早くて、すぐに丸みのある麦芽香があがってくるんです。
眞新:何年か前に飲んでいたアラン10年より、最近、すごく旨みがのってきている感じがあります。アランの10年はいま飲むのが特にいいと思いますね。
元木:ちょうど10年くらい前に僕が造っていたときのものが出てきましたから!(笑)
眞新:だからおいしくなってる(笑)。
元木:僕がアラン蒸溜所にいたとき、製造工程に携わっていたのは、当時の所長、ゴードン・ミッチェルと僕のふたりしかいなくて、ほとんどの工程を任されていたんです。僕は通常よりもゆっくりと絞っていたので、味も香りもより洗練されていると思います。
眞新:アランモルトは、色は淡いけれど、味はしっかりしている。樽の香りではなく、麦芽の旨みや丸みで飲むものですね。ハイボールにしてもさわやかだし、1対1で水を加えて香りを開かせたり、いろんな飲み方にマッチします。すごくフルーティーなので、オレンジピールなどフルーツを使った柑橘系のデザートも合うと思いますね。
元木:チョコレートコーティングされたオレンジなんかもいいですよ。
眞新:10年の次に試すなら、マクリー・ムーア ピーテッドをおすすめしたいですね。アイラのウイスキーほど強烈ではないのですが、ほどよいピート感がアクセントになっていておいしいです。
元木:アランは基本的に麦芽そのものの味で飲ませるシングルモルトが中心なのですが、年間に少しだけピートを焚いたものを造っているんです(※)。ほかのピーティーなウイスキーに比べて、エレガントなスモーク感ですよね。
眞新:常温のまま、1~2滴加水して飲むのがいいと思います。それだけで香りがすごく広がるんですよ。
※ピートとは泥状の炭「泥炭」のこと。可燃性で、麦芽を乾燥させる際に燃やして使用し、ウイスキーに独特の煙のような香りをつける
初めて18年ものが登場し、今後さらに期待が高まる!
元木:僕がおすすめしたいのは18年ですね。創業から20年経って、ようやく18年ものが出せるようになりました。
眞新:私が洋酒コーナーに来た2010年には、アランは12年までしか出ていなくて、いろんなカスクシリーズで広げていましたね(※)。
元木:アラン蒸溜所はまだ若い蒸溜所なので、年数に対する縦のバリエーションが造れなかったんですね。樽のバリエーションで横に広げるしかなかった。
眞新:なかでも、有名なイタリアワインのサッシカイアの樽で熟成させた伊勢丹限定のアラン・サッシカイア・ワイン・カスクは伝説ですよ。
元木:ほかにもワインのシャトーマルゴーやシャンパーニュで有名なアンリ・ジローの樽など、アランのカスクは面白いものが多いんです。でも、ウイスキー愛好家たちからしたら、「原酒で勝負できているの?」と思うところがあったと思うんですよ。それがようやく10年、14年と縦に広げられるようになってきて、ついに18年ものが出てきた。それが出せるというのは、定番である10年がすごく安定している証でもあるんです。だから、この先がますます楽しみです。
※カスクとは、ウイスキーを熟成させる樽のこと。樽が持つ特徴によって味わいが大きく変わる
「アランの味を体験してみたい!」という方には、伊勢丹新宿店で行っているテイスティングがおすすめ。伊勢丹新宿店グランド カーヴ洋酒コーナーのカウンターでは午後2時~7時まで、気になるウイスキーの味を試すことができます(162円〜)。「モルトウイスキーを飲んだことのない人でも、違いがわかるはず」と、おふたりがお墨付きの「アラン」の味わいに、ぜひ触れてみてはいかがでしょうか。
元木陽一(もとき よういち)
株式会社ウィスク・イーのイベントディレクター。銀座のバーで働いた後、英国スコットランドのアラン島へ渡り、アラン蒸溜所でウイスキー技師として勤務。帰国後、ウイスキーやクラフトビールの講師として活躍。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=グランド カーヴにてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Ranking
人気記事ランキング