2015.07.23
知れば料理が変わる! 調味料の基本「塩(天然塩)」のこと
この世で一番おいしいものは? 「それは塩です」と答えたのは、徳川家康の側室・英勝院でした。
それほどに塩は、すべての料理の基本であり、私たち人間の生命維持にとってもなくてはならないもの。でも、意外にその種類や使い分け方って、知らないことばかりです。
今回はそんな塩の基本を、塩専門店「塩屋(まーす やー)」のソルトソムリエ・片野晃さんがレクチャー(ちなみに「まーす」は、塩を意味する沖縄の方言)。
塩を知れば、毎日の料理が劇的に変わってしまうかも!?
塩(天然塩)は大きく3種類!
黒いトリュフの粒が混ざった「トリュフ塩」、美しいピンク色の「アンデスの天然岩塩 茜塩」、スモーキーな香りがする大粒の「フィオッキディサーレ スモーク」……さすが塩の専門店。<塩屋>さんのお店には色や形が異なるさまざまな塩がズラリと並びます。その種類の豊富さに驚いてしまいますが、塩は原料によって『海水塩』『岩塩』『湖塩』のたった3種類に大別できるんだとか。
① 日本産の塩はほぼすべて「海水塩(海塩)」
「海水を原料につくられる『海水塩』は、塩全体の生産量の3割。特徴はミネラルが豊富なことです。干してつくる天日塩と煮詰めてつくるせんごう塩があり、日本産の塩はこのどちらかが主となります(例外もあり)」
② 「岩塩」はもともと海水だった!
「『岩塩』は、ヒマラヤ山脈やアンデス山脈が産地として有名です。かつては海だった土地に地殻変動によって海水が閉じ込められ、濃縮されてナトリウムの層となったのが岩塩です。鉄分を含むためピンク色のものが多く、海水塩に比べしょっぱいのが特徴。塩全体の生産量の6割を占めます」
③ 「湖塩」は、海水塩と岩塩の中間
「そして最も少ないのが湖塩。生産量は全体の1割程度で、産地としてはウユニ塩湖が有名ですね。湖塩はかつて海だった土地がナトリウム層に変わる途中経過なんですよ」
大きくは上記の3種類に分けられるものの、同じ種類の塩でも育まれる環境や条件の違い、または製塩方法によって、形や色、含まれる成分はさまざまに変化します。その違いが、塩の無限の味の差につながっているのです。
カルシウムが多いと甘く、マグネシウムが多いと苦い
ナトリウム | カルシウム | カリウム | マグネシウム |
塩辛味 (しょっぱ味) |
甘味 | 酸味 | 苦味 |
塩=しょっぱいものという先入観がありますが、実は塩の味は構成成分によって複雑に異なるのだとか。
「海水からつくられる塩は、しょっぱ味を与えるナトリウムのほかにミネラル成分が豊富に含まれているんです。中でもカルシウムが多いものは甘味が、マグネシウムが多いものは苦味が、カリウムが多いものは酸味が強く感じられる傾向にあります。逆に塩化ナトリウムを凝縮してつくられた食卓塩は、味として感じるのは『しょっぱ味』がほとんどです」
産地がたった100mずれるだけで成分構成は変わり、味は違ってくるのだそうです。
ぜひ試してみたい、塩と食材の組み合わせ方
そして成分とともに注目したいのが粒の形状。粒の大きさによっても適した料理は変わるといいます。
「一概には言えませんが、粒が大きなものは、口の中に長くしょっぱ味が残るので、赤身肉や生魚と相性がいい傾向にあります。反対に粒子が細かいものは塩気がスッと溶けていくため野菜などと合わせやすいといえます」
では、まず3種類、家庭に揃えるとしたらおすすめはどんな塩なのでしょうか?
「まずは食卓塩、海水塩、岩塩からそれぞれ1種類ずつ選んで使ってみるといいと思います。さまざまな料理に合わせてみて特徴を把握したら、珍しい塩にもぜひチャレンジしてみてください」
料理だけでなく、美容にも!
塩は料理を引き立てるだけでなく、美容にも活用できるそうです。
「塩に賞味期限はありませんが、封を切ってしばらく置くと湿気を含んでしまうことがありますよね。そんなときは、ぜひ塩スクラブに活用して肌をマッサージしてみてください。塩は殺菌力が高く、また塩化ナトリウムやマグネシウムなどのミネラルは肌にいいとされています。特にマグネシウムには保湿の効果が期待できます」
塩スクラブのつくり方はいたって簡単。塩に水を適量加え、クリーム状になるまでしっかり混ぜるだけ(目安は塩4に対し、水1の割合で)。肌にのせてやさしくマッサージした後、洗い流せば、古い角質や毛穴に詰まった汚れを除去する効果が望めます。
このとき古い角質を傷つけずに除去するために、なるべく粒子の細かい塩を使うのがポイントです。
実は奥深い塩の世界。ぜひいろいろ試し、自分好みの塩を見つけて、毎日の料理に活かしてみてください!
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