2019.08.16
夏こそ燗酒を楽しむべき理由とは?【バイヤーのイチオシ】
夏に恋しくなるアルコールといえば、ビールにハイボール、レモンサワー……など、キンキンに冷えたものが定番。そんな中、伊勢丹新宿店和酒担当バイヤー岡島史明さんは、「あえての燗酒がおすすめ!」と熱く語ります。専門店が続々開店するなど数年前からブームになっている燗酒は、夏にこそおいしい理由があるのだそう。
「米の旨みをしっかりと味わえる燗酒は、和食だけでなくエスニック料理など味の強いものとも相性がいいんです。またお燗にすることでアルコールがやや穏やかになるので、日本酒初心者の方にも楽しんでいただきやすいと思います」
プライベートでも燗酒専門店に通い詰めるほどの燗酒ファンであるという岡島さんに、夏のお燗の魅力とおすすめの銘柄を教えてもらいました。
夏にお燗を楽しむ理由とは?
①体を冷やさず、アルコールの吸収が穏やかに
暑さで食欲が減退したり、冷房や冷たい食べ物・飲み物で冷えがちな夏。燗酒はそんな弱った体や内臓をやさしく温めるお酒です。岡島さんが燗酒の魅力にハマったのも、冷房と冷たいビールで体が凍えてしまったのがきっかけだったそう。
「温めることで日本酒のアルコール分がやや飛んだ状態になります。温かいお酒を平盃でゆっくりと飲むことで、アルコールの吸収が緩やかになるというメリットも。内臓を酷使しがちな夏こそ温かいお燗を飲んでじんわりと体を休めて欲しいですね」
②夏においしいパンチのある料理に合う
燗酒のアテといえばおでんなどの和食をイメージしがちですが、じつはエスニック料理やスタミナ料理など夏に食べる機会が増えるメニューとも相性抜群。
「繊細な香りを楽しむ冷酒に比べ、お燗向きの酒は香りをあまり際立たせず、味もしっかりめ。そのため白いごはんを合わせたくなるような強い味の料理にも負けません。個人的なおすすめは濃いめに味付けしたラムチョップ。
ほかにもにんにくが効いたトマト系のパスタやラーメン、スパイシーなカレーもよく合います。また、<鯉川酒造>の『鯉川』や<泉橋酒造>の『いづみ橋 恵』といったじんわり余韻を楽しむような日本酒のお燗なら、意外に白玉ぜんざいなどスイーツなどとも合うんです」
夏の燗酒に合うお酒って?
一般的に吟醸、大吟醸などの精米歩合が高くクリアな味わいのものよりも、精米歩合が低く、旨みを感じる純米酒の方が燗酒向きといわれます。特に夏の料理に合わせるならさらに「キレのよさ」が味わえるものがベストだと岡島さんは言います。
「酸が立っている、キレのある日本酒が夏のお燗に向いています。純米酒の中でも米の旨みがしっかり感じられる精米歩合70%ほどの低精米のお酒なら、エスニック系の料理にもよく合うはずです」
【夏のお燗を楽しむお酒を選ぶポイント】
・酸が立ち、キレのある味わいのもの
・米の旨みが強い、低精米の純米酒など
バイヤー激推し! 絶対に試してほしい“夏燗”向き銘柄「十旭日」
岡島さんが特に「夏の燗酒におすすめしたい」というのが、<旭日酒造>の「十旭日」という銘柄。<旭日酒造>は島根県出雲市に蔵を構える老舗酒造。現在、女性の副杜氏が手がけるこだわりのお酒が日本酒通の間で話題を呼んでいるそうです。
「<旭日酒造>は女性の副杜氏が中心となって酒造りを行っている酒蔵で、約7割がお燗向けのお酒というほど、燗酒に力を入れているのが特徴です。
この副杜氏はこだわりが強く独自の世界観を持っていることで有名で、燗酒ファンから熱狂的ともいえる高い支持を集めています。伊勢丹新宿店でも何度も交渉させていただき、昨年やっと取扱いを始めることができたというイチオシのブランドです」
そんな<旭日酒造>の「十旭日」が夏のお燗に合うのは、キレのよさと飲み疲れない飲み口にあると岡島さん。
「50℃前後にしっかりとつけた熱燗にするとキリリとした味わいになり、夏の料理によく合います」
<旭日酒造>シャープなキレは燗酒初心者にもおすすめ「十旭日 純米原酒 改良雄町70」
岡島さんのイチオシは、「十旭日」の中でも定番人気の「十旭日 純米原酒 改良雄町70」。扱いが難しいといわれる改良雄町を仕込み、しっかりとした旨みが格別な味わいに仕上げています。
「こちらは『十旭日』の王道の味で、燗酒初心者の方にも挑戦しやすいお酒です。原酒なのでアルコール度数としては高めですが、燗につけて飲んでみるとそこまで強さを感じません。キレはありつつも、とげとげしさはほとんどないのでとても飲みやすいですよ」
※取扱い:伊勢丹新宿店
<旭日酒造>酸が立つパンチのある味わい「十旭日 生酛純米 改良雄町70」
「生酛(きもと)」とは現在主流の人工的に乳酸菌を添加する「速醸」に対して、自然界の乳酸菌を取り込みながら発酵する昔ながらの造り方。速醸に比べ野性味のある味わいが楽しめます。
「『十旭日』らしい飲みやすさはそのままに、こちらは『純米原酒』よりも酸が立つパンチのある味わいで飲みごたえがあります。『純米原酒』を飲んでみてもうひと声! という方におすすめしたいですね」
※取扱い:伊勢丹新宿店
失敗しないお燗のつけ方
温度管理など自宅でお燗をつけるのはちょっとハードルが高そうなイメージですが、もっと気軽に楽しんで欲しいと岡島さん。岡島さん自身も、自宅でつける際は小鍋でさっと湯煎するだけ、と言います。
「蓋のついた小鍋と、蓋をしたときに小鍋に収まる高さの耐熱容器を用意します。鍋に耐熱容器の高さの半分ほどのお湯を張って火にかけ、50度〜60度になったらお酒を入れた耐熱容器を置いて蓋をし、弱火にかけたまま、沸騰させずに40秒くらい湯煎するという方法なら特別な器具も使わないので簡単です。
あまり神経質にならずに楽しめるのも燗酒のよいところなので、好みの温度帯を探しながらぜひいろいろと試してみてください。酒器は平盃を選ぶとフワッと香りが広がり、舌で味を感じやすいのでおすすめですよ」
飲みながら適温を探していくのも燗酒の楽しみ方のひとつ。また、来るべき秋のひやおろしに備えて、夏のうちから好みの酒造や銘柄を探してみるのもいいですね。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=粋の座にてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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