2019.05.31
6月16日は「和菓子の日」! 甘党の偉人たちに思いを馳せよう
6月16日が「和菓子の日」と呼ばれることを知っていますか? 西暦848年のこの日、仁明天皇が健康招福を願って「16」の数にちなんだお菓子やお餅を神前に供え、「嘉祥(かじょう)」に改元したことがその由来といわれています。
以降、室町時代からは6月16日に、朝廷で主上(しゅじょう)に「かづう」と呼ばれるお菓子を献上するのがめでたいしきたりとされるようになり、かの豊臣秀吉も恒例として行っていたことが記録に残っています。
この「嘉祥の日」を現代に復活させたのが「和菓子の日」。今回は、そんな歴史ある日にちなんで、偉人たちの愛した和菓子をエピソードとともにご紹介します。
参考:全国和菓子協会公式ホームページ
羊羹を芸術品と評した文豪・夏目漱石<とらや>
『草枕』の中で、主人公に「余は凡(すべ)ての菓子のうちで尤(もっと)も羊羹が好きだ」と語らせている明治時代の文豪・夏目漱石。
「あの肌合が滑らかに、緻密に、しかも半透明に光線を受ける具合は、どう見ても一個の美術品だ」とその見た目を絶賛。色合いを「玉と蝋石の雑種のよう」と芸術的に表現し、「思わず手を出して撫でて見たくなる」とまで語っています。
漱石を魅了した羊羹を彷彿とさせるのが、室町時代後期創業の<とらや>で作られる竹皮包羊羹。風味豊かで色艶のよい北海道十勝産「エリモショウズ」を使い、長時間じっくり煉りあげ、できあがりまでに三日を要する代表銘菓です。
「おもかげ」は黒砂糖の風味の懐かしさから、「夜の梅」は切り口の小豆が夜の闇の中に咲く梅を思わせることからその名がつけられたそう。もし漱石がこれらの羊羹を口にしていたら、どのような詩的表現をしてくれるのか、想像に耽りながら味わうのも楽しいことでしょう。
参考:虎屋文庫『和菓子を愛した人たち』、とらや公式ホームページ
※取扱い:伊勢丹新宿店、伊勢丹オンラインストアで商品をみる>>
「越乃雪」で雪見をした高杉晋作<越乃雪本舗 大和屋>
幕末、庶民が参加した軍隊「奇兵隊」を創設した高杉晋作。奇兵隊の一員である三浦梧楼が、亡くなる少し前の晋作を見舞いに訪れた際のこと。
病床の傍らに置かれた松の盆栽に白い粉がたくさん振りかけられているのを見た梧楼が「これは何ですか」と尋ねると、晋作は「俺はもう今年の雪見はできないから、見舞いにもらった『越乃雪』を松に振りかけて、雪見の名残をやっているんだ」と応えたというエピソードが残っています。
<越乃雪本舗 大和屋>の「越乃雪」は、阿波の和三盆糖と長岡産もち米の寒ざらしを合わせた押しもの干菓子。表面にふりかけられた氷砂糖の輝きが、越路の山々に降る雪を表現しています。
口の中に入れると雪のように儚く解け、和三盆の甘みがじわりと広がる「越乃雪」。晋作が最期に楽しんだこの和菓子は、日本三大銘菓のひとつにも数えられています。
参考:虎屋文庫『和菓子を愛した人たち』、とらや公式ホームページ
越乃雪本舗大和屋公式ホームページ
※取扱い:伊勢丹新宿店
カステラは、龍馬とお龍の新婚旅行の思い出の味<福砂屋>
幕末の志士・坂本龍馬は、日本で初めて新婚旅行をした人物としても知られています。龍馬が旅行の最中、妻のお龍と一緒に霧島山(鹿児島県)を訪れたときに持参していたのが、長崎名物であるカステラ。龍馬はこの翌年、海援隊を結成しますが、その雑記帳「雄魂姓名録」にもカステラのレシピが記載されています。
寛永元年(1624年)の創業以来、長崎カステラの製法を家伝継承し続けている<福砂屋>のカステラは、ひとりの職人が最後まで責任を持って仕上げます。
卵は手で割り、白身と黄身を分けたのち、丹念に白身を泡立てる。季節や天候に合わせて微妙な調整を加えながら焼き上げたカステラを、さらに一昼夜熟成させることで、甘みとコクを引き出していきます。
手作りならではの素朴で繊細な味わい。しっとりと優しい甘みは、龍馬とお龍の円満な夫婦仲を思い起こさせるようです。
参考:虎屋文庫『和菓子を愛した人たち』
※取扱い:伊勢丹新宿店、伊勢丹オンラインストアで商品をみる>>
奥深い甘みの向こうに、偉人との物語を潜める和菓子の数々。6月16日の和菓子の日には、老舗の和菓子を楽しみながら、彼らの生きた時代に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=甘の味/福砂屋、茶の道/とらや、茶席菓子にてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Ranking
人気記事ランキング