2018.05.11
汁椀の選び方とおすすめ。種類や材質をプロが解説~選ぶなら木製のものを
いつかは上手になりたい器選び。選び方のセンスってどう磨くの? という疑問に器のプロがこたえるこの企画。以前の記事では、その入門編として「豆皿」の選び方と使い方を解説。さらに、器選びの基本となるご飯「茶碗」の選び方についても紹介しました。3回目の今回のテーマは「お椀」です。ご飯茶碗と同様、基本の器のひとつなんだそう。
今回取り上げるお椀は「漆器」。値段もそれなりにしますし、ルールや決まりがあって選ぶのが難しそうなイメージです。その反面、編集部内で「挑戦したい」という声が多かったアイテムでもありました。
初心者でも扱いやすく、きちんと作られていて、長く使えるお椀。一体どうやって選べばいいんでしょうか?
▼【2022】最新の漆器はこちらの記事をチェック!
初心者におすすめの漆器5選と選び方はこちら>>
どんな種類があるの? 正式なスタイルって?
教えていただくのは、各メディアで器の愉しみ方を提案する、器キュレーターのはるやまひろたかさん。まず、漆器の初心者からよく聞くのが「正式なスタイルはあるの?」という疑問です。
「汁物を入れるお椀は『汁椀』と呼びます。さまざまな種類がありますが、その中でも漆器の汁椀はスタンダードと言えるもの。さらに、漆器の汁椀にもさまざまなタイプがありますが、特に『正式』と決まった正解はありません。あらたまった席では蓋付きが使われることが多いですが、ふだん使いという前提で言わせてもらえば、『これでなければいけない』ということはないんです」
形でいうと、1、2のようなボウルタイプや、3のような丸みを帯びた形、4のように縁が反ったものや5の蓋付き、6のような足が高く大きいタイプなどがあります。
「例えば6は『合鹿椀(ごうろくわん)』と呼ばれるもので、もともと石川県能登の合鹿地方で作られていたローカルなお椀の形状。床に置いた状態で食事がしやすいよう、高台(脚の部分)が高くなっています。そういう背景から見えてくるのは、地方ごとに育まれた形状や塗り方などがあるということ。面白い点ですよね。それだけバリエーションがあるのだから、今の時代、少なくともふだん使いでは、『正式』かどうかを気にする必要はないんじゃないでしょうか」
色も、漆器というと「朱色」や「黒」のイメージがありますが、木目が見えるものや、(写真にはありませんが)緑やベージュのものなど、広いバリエーションがあるんだそう。
プロが教える、長く使える「汁椀」選びのコツ4つ
では、長く使える漆器の汁椀はどうやって選んだらいいのでしょうか? 選び方のコツを4つ教えていただきました。
【コツ1】装飾が少なく、落ち着いた色のものを選ぶ
【コツ2】味噌汁以外の用途も考える
【コツ3】選ぶなら「木製」のものを
【コツ4】迷ったら、最初は「拭き漆」がおすすめ
実際に例を見ながら、詳しく解説していただきました。
【コツ1】装飾が少なく、落ち着いた色のものを選ぶ
「漆器というとハレのイメージも強くありますが、ふだん使いをするなら、できるだけ蒔絵などの装飾が少ないものが食卓になじみやすく、扱いやすいです。蓋付きのものが欲しいという場合も、(上の写真中央にあるような)落ち着いたテイストのものを選ぶといいでしょう」
「また、漆器の汁椀は朱色が派手だから……と敬遠される方もいますが、朱色といっても色のトーンはさまざまです。発色のいい朱色(上記写真左)ではなく、落ち着いた朱色(写真右)を選べば食卓になじみやすいので、ぜひ怖がらずに挑戦してみてほしいですね」
【コツ2】味噌汁以外の用途も考える
2つ目は、意外にも「和食以外の用途」を想定するというコツ。
「漆器の汁椀だからといって味噌汁やお吸い物しか入れられない、というわけではありません。ふだんの食卓では和食以外のスープを食べることも多くありますから、それらを入れて使うことも想定すると、毎日使いやすいものが選べます。漆器は手に持っても熱くなく、軽くて使いやすい器。いろいろな用途で活用できるんです」
【コツ3】選ぶなら「木製」のものを
漆器は木などの「器体」と呼ばれる土台に漆を塗って仕上げた器。器体は木製だけかと思いきや、プラスチックや木の粉をかためた「木乾」など、さまざまな種類があるといいます。
「長く愛用したいなら、器体が木製のものを選びましょう。漆が木目の間にしっかりと染み込んでいるうえ、(上記写真のように)何度も漆を塗り重ねて仕上げられているので、かなり丈夫。一般的な食器とほぼ同じように使え、漆が剥げてきたら修理もできるので長く使えます。対して、プラスチックなどに漆を塗っているものは、漆が器体の内部にまで浸透せず表面に吸着しているだけなので、ちょっと傷がついたりすると割れ目から水が入り、漆がベロっと剥がれてしまうことも」
器体の種類は明記されていないこともあるので、不明な場合はお店の方に聞くといいそうです。
【コツ4】迷ったら、最初は「拭き漆」が使いやすい
漆器を買うのが初めてで、どれを選べばいいか想像がつかない……という場合は、「拭き漆」がおすすめ、とはるやまさん。
「拭き漆は、木製の器体に漆を塗って布で拭き取る作業を繰り返し、木目を生かして仕上げた漆器のこと。朱色や黒などで塗り重ねたタイプ(器体の木目が見えないもの)と同様、丈夫さや修理がきくといった漆器の特性を持っています。木の素材感がそのまま生かされていますし、塗り重ねたものに比べると制作工程が少ない分、価格も比較的手頃。初めて漆器を使う方にもハードルが低いのではないでしょうか」
初めての汁椀、買って使ってみました!
はるやまさんに教えてもらったコツを生かして、「いつかは欲しい」と思っていた漆器の汁椀を思い切って買ってみました! 選んだ色は黒に近い朱色。形は浅めで高台が高めのタイプ。会津地方に古くからある形のようです。
手に持ったときのやさしい感触、穏やかな光沢は漆器ならでは。1つあるだけで食卓がぐっと整って、格上げされた印象です。普段の手入れも「食洗機と電子レンジはNG」の約束を守るだけ。長く水に浸したりしない限りは変色したり傷んだりすることもなさそうです。
予想外で驚いたのは、使ううちに見た目が変化してきたこと。数週間使っただけでも、手の油がなじんだせいか光沢が増し、買ったときよりも赤みが強く見えるようになりました。漆が薄くなってきたら修理もして、長く使い続けていきたいお気に入りです。
こんな汁椀もおすすめ!
この記事を読んで、漆器の汁椀の購入をお考えになった方のために、日本橋三越本店にてはるやまさんにおすすめの汁椀を3点、セレクトしてもらいました。いずれも素材の質感があるややカジュアルな印象のもので、漆器が初めてという方でも使いやすいはず。ぜひ参考にしてみてください。
<PRODUCT PROJECT>汁椀 振り袖型 天然木(国産欅)摺漆 4,320円(税込)
記事内でも紹介した「拭き漆」タイプ。木目が出た素材のナチュラルな質感が食卓になじみやすい。
取扱い:日本橋三越本店
越前塗 赤溜木地呂 欅一文字大椀 10,800円(税込)
フチの部分にアクセントがあり、うっすらと木目も見えるのでカジュアルにも使えそうなやや大きめのタイプ。
取扱い:日本橋三越本店
越前塗 汁椀 刷毛根来 天然木 うるし 山岸厚夫作 7,560円(税込)
鮮やかめの朱色ですが、刷毛の質感があるのでややカジュアルな印象で使いやすいはず。
▼【2022】最新の漆器はこちらの記事をチェック!
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取扱い:日本橋三越本店
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品の一部は、日本橋三越本店本館5階=和食器にてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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