2017.11.18
ロシア人唎酒師が語る、日本人が知らない日本酒の魅力
今や世界から注目を集める日本酒シーン。日本人はもちろん、多くの海外ゲストに新しい日本酒の価値を発信している話題の人物が、世界唎酒師コンクール3位の入賞経験を持つロシア人唎酒師のドミトリー・ブーラフさんです。ロシア人の彼が異国のお酒・日本酒に魅了されたわけとは? 日本人が知らない日本酒の「すごさ」を聞きました。
衝撃的だった「米のワイン」
東京・西麻布にある日本酒バー「twelv.(トゥエルブ)」。従来の地酒専門店とは一線を画すモダンな空間では、ディレクターを務めるドミトリーさんが厳選した自然派の日本酒と斬新な料理とのペアリングを体験できます。訪れる人は海外からのゲストも多く、「日本酒の新しい魅力」を世界に発信する新スポットとして注目を集めています。
唎酒師のドミトリーさんが日本酒に出会ったのは、日本で会社勤めをしながら料理専門学校に通っていた10年ほど前のこと。行きつけだったワインバーで偶然「いいお酒がある」とすすめられた日本酒を飲んで衝撃を受けたそうです。
「こんなにも華やかでフルーティなお酒があるんだと驚きました。私はずっとワインの勉強をしていたのですが、これはまるでお米のワイン。それをきっかけに日本酒を勉強するようになりました」ドミトリーさんはその後、唎酒師の資格を取って日本酒の道へ。
「当時感じたことは、日本酒は造り手と飲み手が同じ国の近い距離にいるにもかかわらず、その価値が伝えきれていないのではないかということです。日本人でも一度苦手な味の日本酒を飲んだきり、日本酒がダメだという人は多いですよね。でも日本酒は本当にすばらしいものも多い。それを伝えるには、これまでとは違う切り口で訴えなければいけないと思ったのです」
ワインの世界から日本酒の世界に移ったドミトリーさんだからこそわかる、日本酒の魅力を聞きました。
【日本酒の魅力1】微生物を操る造り手のテクニック
「たとえば、同じ醸造酒であるワインはブドウをそのままアルコール発酵させるため、原料の質が味に直結します。対して日本酒の原料はお米であり発酵させるためにはさまざまな微生物の働きが必要です。日本酒は、この微生物を操る『技』の部分がすごい。醸造家のスタイルがお酒に与える影響がワインよりも大きいのです」
【日本酒の魅力2】米から生み出される多様なスタイル
「原料は同じ水とお米にもかかわらず、これほどさまざまなスタイルのお酒ができるのは面白いですね。さらに5度から55度までという幅広い温度で味わえるお酒はそうそうありません」
1,000以上の日本酒蔵が多種多様なスタイルのお酒を造る中、ドミトリーさんが選ぶ日本酒は次の4つのテーマを軸としています。
「ビオ」「スパークリング」「プレミアム」「クラフト」
「これらは僕が日本酒に対して価値を感じていることです。特に『ビオ』は、ナチュラルワインのように世界中で大きな流れが生まれていますよね。こうした日本酒の価値を広げ、高める手助けをしたいです」
【日本酒の魅力3】最強の食中酒
「ワインの場合は極端にタンニンや果実味の強いものは、料理の組み合わせによってはネガティブに転ぶ場合があります。しかし日本酒の原料は『お米』、ご飯ってどんな料理にもよく合いますよね。さらに日本酒は『うまみ』が特徴であるため、料理とペアリングできる可能性が非常に広いのです」
「twelv.」では、いわゆる和食ではない意外な料理と日本酒のペアリングを提案しています。
「料理は自然栽培の野菜と熟成チーズに力を入れています。ナチュラルな日本酒は『酸』を感じやすいため、特にチーズなどの発酵食品と相性がいい。また、インドのスパイスなどとの組み合わせも提案しています。日本酒=SUSHIレストランだと思っている海外のお客様に『日本酒のイメージが変わった』と言っていただけると非常にうれしいですね」
日本酒の新しい価値を造りたい
「私は日本酒の『ブランド価値』をもっと高めていきたいと考えています。やはりワインとの比較になるのですが、フランスでは1850年代から国が主導して海外へブランディングを続けています。その結果、今世界中どこでも『ボルドー』『ブルゴーニュ』で通じますよね。しかし日本酒はまだまだその価値を海外に発信できていないのが現状です」
日本酒の価値を高めたいというドミトリーさんが出したひとつの答えが、千葉県「木戸泉酒造」とコラボレーションした「twelv.」のオリジナル日本酒です。
「木戸泉酒造さんは農薬を使わないお米や添加物を使用しないビオ日本酒にこだわり、自然の乳酸菌を使う伝統的な製法を守り続けています。蔵元の方とお話するうちに私と同じ価値観を持っていることがわかり、さらに同じ思いの農家さんとの出会いもあって実現しました。これはビオ、クラフト、スパークリング、そしてプレミアムのすべての要素が入った新しいお酒です」
シャンパーニュのようなシルキーな泡に、イチゴのようなフルーティな香り。すっきりとした飲みやすさの中に、複雑なニュアンスを持つこの日本酒。ナイトシーンやバーに置いても高級酒に引けを取らない、日本酒の新機軸。「twelv.」で提供しているほか、伊勢丹新宿店<ジャパンセンスィズ>でも限定販売されます。
最後に、本当の日本酒を知らない日本人に向けてメッセージを。
「まず、固定観念を捨ててください。白紙で日本酒と向き合い、フィーリングで味わってほしいです」
身近な存在すぎてつい見落としていた日本のお酒、日本酒。ドミトリーさんの導きで改めて飲んでみると、これまで気づかなかった新しい魅力に出会うことができそうです。
店舗のご案内/商品の取扱いについて
【店舗のご案内】
twelv. 東京都 港区 西麻布4-2-4 THE WALL西麻布 B2F
【商品の取扱い】
記事で紹介している商品は、伊勢丹オンラインストアにてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Ranking
人気記事ランキング