2015.04.23
DIY食材のトレンドは農から猟? 食への意識が変わる「狩猟」という方法
野生の動物の肉を使うジビエ料理の人気が高まり、また一方で「プチ帰農」として、自分の食べる物を自作することが食への意識の高い人たちの間に浸透するなか、カモやシカといった野生動物を自ら狩り、解体して食すという直接的な食へのアプローチを試みる人が少しずつ増えつつあります。食べるという行為に一石を投じるこのブーム、現場ではなにが起きているのでしょう。狩猟を含む、アウトドアスタイルを提案する雑誌『HUNT(ハント)』編集部に伺いました。
意外と身近な「狩りガール」たち
「狩猟漫画『山賊ダイアリー』(岡本健太郎/講談社)のヒット、大日本猟友会が女性向けのウェブサイト『目指せ! 狩りガール』を開設したこと、さらに近年のシカの増加での農作物の被害やハンターの減少、高齢化が報道されたことも、狩猟に興味を持つ人が増えた要因かもしれません」とはアウトドア雑誌『HUNT(ハント)』(ネコパブリッシング)編集長の陰山惣一さん。狩猟免許の所持者数はこの数十年、減少傾向にあったのが、東京都の発表によると2014年の受験者数は前年の約2倍で、女性は約4倍に増えています。女優の杏さんが狩猟免許取得を発表したのも昨年の秋。
「東日本大震災もひとつの契機と考えられます。それまではスーパーで何でも買えたのに、物流が止まったらアウト。女性ってそういうところに敏感で、『野菜はどうする? 肉はどうする?』と突き詰めていって狩猟にたどり着いた人もいるようです。ある猟師さんは、撃った動物の処理においては女性のほうが強いと言ってましたね」
自らの腕で手に入れる味、狩猟の醍醐味とは
『HUNT』にて好評を博し、シリーズ化している狩猟特集は、題して「とって食べる」。
「世界中の食材がクリックで何でも買えるこの時代、自分で釣った魚や撃った動物はその手間の分だけ、この上なくオーガニック(本質的)で安心な食べ物だとも考えられます。実際に美味しいですし、この愉しみは人生の糧になるんじゃないかと思うんです」と陰山さん。『HUNT』Vol.7に登場している銃砲店の店主によれば、「ニワトリは現在、獲って食べられる鳥のなかで12番目においしい」とのこと。ニワトリよりおいしいとされる上位には、カモ、キジ、ウズラなどがランクイン。お金を出しても入手しづらい野生の鳥を、新鮮で安全な状態でいただくことができる、というのは大きな動機となりそうです。
最後には、命の大切さを痛烈に感じるという声も
とはいえ、狩猟は尊い生命を断つ行為。物理的にも精神的にもそう簡単にはいきません。
写真家で猟師にもなった幡野広志さんは「命の大切さを強烈に感じられるようになった」と言います。生き物を殺すことは悪いことだ、という考えの一方で、一部の地方ではシカやトドなどが人間の営みに悪影響を及ぼす害獣として駆除されている。普段自分たちが口にしている食べ物がどこから来ているのか、たとえ小動物でも命の重さがどれほど大きいものなのかを身をもって感じることで、現代生活で見えにくくなっているものがくっきりと見えてくるようです。
編集部の鈴木さんは去年8月に狩猟免許を取ったところ。そして今は銃の所持免許を取っている途中なのだそう。
「罠猟や縄猟は狩猟免許さえあればできるんですけど、猟銃のほうは銃の所持免許も必要で、システム的に時間がかかるんです。座学を受けて試験に合格して、その後射撃場で実技の試験を受け、警察に行って身辺調査されて、とまだまだハードルがあります。しかも猟期は11月15日〜2月15日までなので、もし猟に出られるのは早くて今年の11月15日からになります。もし今、銃を使った猟をしたいと思ったら、準備に大体半年以上〜1年近くみておいた方がいいですね」
慎重な手続きの末に、くぐることのできる狭き門。それでも、狩猟に魅せられる人が増えているというのです。
実際に狩猟をやるかやらないかはさておき、命をいただくその行為自体に関心を持って見直すことは、感謝の気持ちを新たにして、新たな食の世界を開いてくれるのかもしれません。
『HUNT』
大人のための暮らし&ファッション提案マガジン。往年のアウトドアスタイルをキーワードに、目の肥えた大人達の遊び心に火をつける道具やライフスタイルを紹介している。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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