2015.04.19
絶滅の危機から救え! 伊勢丹新宿店に「伝統野菜」コーナーができるまで
伊勢丹新宿店のフレッシュマーケット(生鮮食品)の一角に、伝統野菜コーナーがあるのをご存じですか? それどころか、「そもそも、伝統野菜って何?」という方も多いかもしれません。
伝統野菜を守るための活動をしているwarmerwarmerの高橋一也さん(写真左)と伊勢丹新宿店の生鮮担当の右原洋平アシスタントバイヤー(写真右)は、そのコーナーを仕掛けたおふたり。伝統野菜とは、どんなものか? また、そのコーナーが、なぜ伊勢丹に必要だったのか? をアツく語ってもらいました。
昔ながらの「力強く濃い味わい」を持つ野菜たち
絶滅の危機にある、伝統野菜のいま
「『伝統野菜』とは、日本の各土地に昔から根づき、種採りを行い、受け継がれてきた『在来種野菜』のこと。自然淘汰に耐え、環境の変化に順応し、生き延びてきた強い種なのです」
まず、高橋さんは、そんなふうに教えてくれました。こうした伝統野菜はいま、小売りや流通に不向きという理由で、ほとんど見かけなくなってしまったそうです。
そんな「伝統野菜」だけを扱うファーマーズマーケット「種市」を主催していた高橋さんが、右原アシスタントバイヤーと出会ったのは、2013年6月のこと。会った途端に、両者の想いは盛り上がり、わずか3カ月で、伊勢丹新宿店フレッシュマーケット内に伝統野菜コーナーを立ち上げたのだとか。その立役者となった、右原アシスタントバイヤー。
「それまでも、有機栽培や自然栽培など、農法にこだわった野菜は取り扱っていましたが、高橋さんに出会って、伝統野菜のパワーや可能性を感じました。生命力のある滋味深い味わいのこの野菜たちを、途絶えさせてはいけないと思ったのです」
上司に掛け合い、電光石火でコーナーを開設。少しでも伝統野菜の認知度を高め、未来へ残していけるよう動きました。この早業に、当初高橋さんも驚いたそう。
「百貨店で伝統野菜を扱うなんて、僕も生産者もビックリでした。この機会に、伝統野菜の存在を知り、考え、食べて、味わってもらえれば、お客さまにも絶対に喜んでいただけるし、生産者や地域創生としても持続可能な活動になると思いましたね」
年配の方には懐かしく、若い方には新しい
「伝統野菜自体に個性があっておいしいので、お目当てを探しに来る方も増えてきましたし、お客さま同士の口コミでいらっしゃる方もいます」と、右原さん。
今では珍しくなってしまった伝統野菜ですが、年配の方には懐かしく、感度の高い若いお客さまには新鮮に映ると分析しています。また、高橋さんは、故郷のお節料理の味を求めて買いに来られたお客さまには、感謝されたことも。
「人の心と舌の記憶をよみがえらせ、販売員との会話も生まれる。野菜ひとつで人の心が動かせるんだな、と感動さえ覚えます」
素材の味が強いから、炒めたり、蒸して塩だけでOK
一方、高橋さんは、伝統野菜だからといって、調理法は凝らなくていいと教えてくれます。
「もともとの味が個性的なので、炒めたり、蒸して塩だけ、がオススメ。複雑な調理は必要なく、むしろ忙しくて野菜不足なんて方に、簡単なので試してもらいたいですね」
たとえば、去年の秋にすごい反響で、生産者に追加発注をかけた「肴豆(さかなまめ)」という新潟産の枝豆の一種は、茹でるだけで香り高くうまみたっぷり。豆の持つ力強い味わいに魅了される人が続出したとか。
「とはいえ、1年中同じラインナップが揃わないのが当たり前。本当の旬の時期だけに味わえるのも、伝統野菜ならでは。次に食べられるのは、来年。こうして、次の旬まで待ち遠しく思うお野菜のファンができ始めているのを実感しています」と、右原さん。
伝統野菜から始まるコミュニケーション
このコーナーで出会った野菜をきっかけに、伝統野菜に興味を持つ人が増えるといい。そして、生産者と消費者の間に、会話やコミュニケーションが生まれる場をこれからもデザインしていきたいと、アツく語るおふたり。
「このような活動で、生産者や生産地に還元されて、失っていた元気を取り戻し、日本の宝である伝統野菜を未来につないでいけたら」とふたりは明るい未来を見つけていました。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=フレッシュマーケットにてお取り扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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