2015.03.30
ローカルフード新紀行 第一回:静岡県 丸子のとろろ、焼津のカツオのへそ
その土地の人たちだけが知っている、地域の「ごちそう」。町おこし用の特産品が意識される前から、その土地で愛されてきた、歴史と風土を引き受けた味を紹介して行きます。第一回は、切り絵作家の福井利佐さんが、故郷・静岡のごちそうを教えてくれました。
家康も愛した滋味あふれる味『とろろかけご飯』
静岡市では丸子(まりこ)という地域の「丁字屋」さんが有名です。とろろ汁を麦飯にかけて食べるのが一般的。私にとっては外食するよりも、幼い頃からよく家の食卓にのったメニューです。おそらく母が好きなのでしょう、今でもよく作ってくれます。
とろろは長芋といっても自然薯を出汁で溶いて使うので、ちょっと茶色っぽくて繊維も多く残っています。溶きたてのとろろは温かく「ぽてっ」としていて、とてもおいしいのです。健康オタクだった徳川家康も、滋養強壮のためによく食したそう。
とろろ汁のつけあわせは、だいたいお新香やお味噌汁で、とろろ汁で結構お腹いっぱいになるので、副菜は特にいりません。そして庶民的な料理でありながら、外で食べるとわりと安くないお料理です。
漁業の街、焼津のファストフード『カツオのへそ』
静岡の焼津ではカツオの「へそ」といわれる部位を使う料理も昔から親しまれています。「へそ」といっても心臓のことで、食感はレバーに似ています。静岡でも西の方には一般的ではない食材らしく、漁業の盛んな焼津を中心に広がっている物のようです。我が家では、臓物系が得意ではない父のおかげで、あまり食卓にはあがることはありませんが、どこかしらで食べた記憶があります。また年末はいつも焼津のお魚センターに行くので、中にあるカツオ屋さんで売られているものとして馴染みがあります。いろいろな料理の仕方があるようですが、私にはしぐれ煮のように煮てある物の印象が強くあります。「へそ」というネーミングで子どもも興味をそそられる珍味です。
福井利佐(ふくい りさ)
静岡県静岡市出身、切り絵アーティスト。繊細かつ躍動感あふれるグラフィカルな構図と色彩で独自の「切り画」を生み出す。国内外での個展のほか書籍の装丁や映像制作など多方面で活動中。
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