2017.03.22
銘菓に宿る、手作業のぬくもり。中部中編【にっぽん、いとお菓子。#6】
「にっぽん、いとお菓子。」は、全国の銘菓を年間1,500種類以上食べ尽くしている三越伊勢丹和菓子担当バイヤー・田中美穂さんが、特に食べてほしい! というアイテムを47都道府県ごとにセレクト。北から順に日本銘菓の味わい深さを紹介する連載企画です。
前回の中部前編(富山、石川、福井、新潟)に続き、今回は「中部中編」として、静岡、山梨、長野、3県の銘菓をご紹介します。
地道な手作業の工程を守り抜く。静岡・山梨・長野の銘菓
① 【静岡県】<やまだいち>手作り安倍川もち(200g) 781円(税込)
② 【山梨県】<桔梗屋>桔梗信玄餅(6個入り) 988円(税込)
③ 【長野県】<春月>おたふく豆(1箱 / 250g) 734円(税込)
④ 【長野県】<飯島商店>みすず飴(1袋) 454円(税込)
「今回注目してほしいのは、手作業ならではのぬくもりです。最近のお菓子は、やはり機械を使った生産が主流。ですが、こんなところまで!? と驚くような工程も地道に手作業で作られているお菓子が、まだまだ存在するんです」(田中さん)
【静岡県】つきたてのような食感は手作業だからこそ「手作り安倍川もち」
田中さん「江戸時代から東海道の名物として有名だった『安倍川もち』は、静岡土産の定番。いろいろなメーカーから販売されていますが、なかでも<やまだいち>さんはつきたてのお餅のような食感にこだわり、契約栽培の佐賀県産のもち米を使って、毎朝手作業で仕込んでいるそう」
──では、ひと口いただきます。お餅はもちもちとしていて、かなりコシがありますね。あんこもきな粉も甘すぎず、お餅の味わいを引き立てているよう。
田中さん「あんこは滑らかな口当たりで、甘さは控えめですが小豆の風味がしっかりしたタイプ。きな粉は国産大豆を使っています。豆の煎り方や挽き方も工夫しているだけあって、きめ細やかで香りがいいのが特徴です。ひと口サイズで、旅のお供にピッタリ。東海道で旅人に愛されたこともうなずけますね」
【山梨県】ビニールで包む工程は手作業! 「桔梗信玄餅」
田中さん「『桔梗信玄餅』は、1日10万個も生産しているという全国でも大人気の山梨銘菓。山梨では昔からお盆の時期に、黒蜜ときな粉を餅にかけて食べる風習があり、そこからヒントを得て生まれました。ほとんどの製造工程は機械で行われていますが、商品をビニールの風呂敷で包む工程は、なんと手作業で行っているんです!」
──大量生産だからてっきり、機械でやっているのかと思っていました! 10万個ひとつひとつを手作業でやっていると思うと、ありがたみが湧いてきます。
田中さん「このビニールの包装って、大事ですよね。包装を開けて、黒蜜をかけて、食べる。自分で仕上げる楽しみが、桔梗信玄餅を食べる前のワクワク感をすごく高めている気がするんです」
──手間がかかってもこの包装を続ける理由は、そんなところにあるのかもしれませんね。「桔梗信玄餅」の食べ方は人によって結構変わりますが、田中さんはどんなスタイルで食べていますか。
田中さん「私は、黒蜜ときな粉をペースト状になるまで、よ〜く練り合わせていただくのが好きです。ちょっとやってみましょうか」
──きな粉も黒蜜も全く残らない! これはマニアの食べ方ですね。
田中さん「黒蜜は一気に加えず、少量ずつ入れるのがポイントです。お餅を食べた後に、黒蜜を加えてきな粉としっかり練り合わせれば、最後のひと口まで美味しくいただけます」
【長野県】毎日変わらぬ味を支える職人技「おたふく豆」
田中さん「<春月>はかつて老舗の料理店で、その技術を活かして作ったのがこの『おたふく豆』。熟練した職人さんが、毎日手作業で炊き上げています。その日の天候によって豆の状態が変わるので、一定のクオリティを保つのが難しいそうです」
──どの粒を見ても、黒々としていて綺麗ですね。皮はやわらかく、中までふっくら。甘みの後に、そら豆特有の風味がフワッと香ります。
田中さん「そら豆を砂糖、食塩で煮ています。日本アルプスの大地が育んだ、美味しい水と空気がこの味わいを生み出すには不可欠なのだとか。あと、この袋に封をせずたっぷり入っている感じもいいでしょう?」
──ほんとだ、職人さんが出来たての豆を袋に入れている姿が目に浮かびますね。偽り無く作っている正直さがすごく伝わってきます。
【長野県】オブラートの包装まで! 全行程が手作業「みすず飴」
田中さん「『みすず飴』は国産フルーツの果汁と寒天を使って、無香料、無着色で仕上げたフルーツゼリー。今も昔と変わらず、果物の皮を剥いて果汁を絞るところから、飴を練って、固めてカットし、オブラートで包むところまで、すべて地道に手作業で作っています」
──薄いオブラートで包む工程も手作業だったとは……。職人技を見に、工場を覗きたくなりますね。味は、どれも果物の風味がジャムのように濃厚。普通のゼリーほどやわらかすぎず、弾力を抑えたグミのような絶妙な食感がクセになります。
田中さん「りんごやもも、ぶどうなどは、もちろん長野県産です。この触感が生まれるのは、オブラートを巻いたゼリーを丸二日間かけて乾燥させているから。オブラートが舌の上で溶けて、フルーツの風味が口いっぱいに広がる至福のひと時が私は大好きです」
機械化が主流になりつつある現代でもなお、こだわりをもって受け継がれる手作業の工程。見た目や味わいにどことなく感じる素朴さやぬくもりは、作り手の想いが細部に宿るからなのかもしれません。
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