2017.01.22
軽っ!フルーティ! 新世代の日本酒がナナメ上な美味しさ!
空前の日本酒ブームと言われていますが、「難しそうでなかなか手がのびない」「普段はワインなど別のお酒」という人が多いのではないでしょうか? そんな人にこそおすすめしたいのが若い蔵人が現代人の好みやライフスタイルに合わせて造る新しいタイプの日本酒です。
今回そんな「新しい日本酒」を教えてくれるのは、寛文2年(1662年)創業の老舗蔵<宮坂醸造>の宮坂勝彦さんです。
「頑固でまじめイメージが強い日本酒ですが、僕は昔の人はもっとラフに日本酒を楽しんでいたと思うんですよ。たとえばお祭りとか、今でいうフェスやクラブシーンで飲んだりね」
宮坂さんが手がけるのは、ワインのようにカジュアルな「低アルコール」日本酒や、「大吟醸」なのにしっとり落ち着いたタイプ、甘くない辛口スパークリングなど、日本酒の「常識外れ」ばかり。
「日本酒って、もっと自由でいいんです」という宮坂さんの自慢の4本を、飲み比べてみました!
本日宮坂さんが持ってきてくれたのはこちらの4本。瓶の形といいラベルといい、従来の日本酒のイメージとはずいぶん異なります。
「日本酒にはさまざまなタイプがありますが、伊勢丹のような百貨店のお客さまは好奇心のある方が多いので、『真澄』らしいトラッドなものをおさえつつも、新しく挑戦したものをお持ちしました。ライトなタイプから順番に飲んでみましょう」
蔵元さんの解説とともにいただく贅沢な『真澄』試飲会、早速スタートです。
[1本目]スルッと軽い! 度数12度の普段着タイプ
まずは2015年にリリースした「YAWARAKA TYPE-1」。一般的な日本酒はアルコール度数15〜16度ですが、これはワインと同じ12度。1本1,000円程度とリーズナブルな日常酒です。
「洋服にたとえるなら、気軽だけどずっと着ていたいスタンダードなTシャツです。カジュアルに野菜料理などと楽しむシーンをイメージして造りました」
香りはフルーティで、飲み口は驚くほどライト。お酒の重さがまったくなく、スルスルと喉を通り過ぎていきます。その反面後味は意外にもしっかりしており、じわじわと日本酒のうまさが広がります。
「軽やかだけど芯があるのがポイントです。昔ながらの日本酒好きにも好評なんですよ。さらにおすすめはお燗。温まることで繊細な味が広がり、ちょうど良いボディ感になるんです」
ラベルデザインもおしゃれで、これなら家の冷蔵庫にあっても「日本酒!」という感じがしません。デイリーに飲めるけど、上質。飾らない「センス」が感じられるお酒です。
[2本目]季節限定! 搾りたてのフレッシュ日本酒
つづいては「あらばしり」というお酒。もともとは発酵した醪(もろみ)を搾って最初のほうに出てくる部分をそう呼ぶそうですが、いまでは一般的に冬の搾りたてのお酒を「あらばしり」と呼んでいます。搾りたては秋の終わり頃から1、2月くらいまでしか飲めない限定品。日本酒にも季節があるんですね。
「果物ジュースでいうと、搾りたてのフレッシュジュースと長時間経った紙パックは全然違いますよね。日本酒はワイン以上に品質管理が難しいもの。冷蔵技術が発達した現代だから飲めるようになったできたての味です」
香りはフルーツのなかでもメロンやバナナといった、甘くてやさしい白い果物。口に含めばフレッシュな甘みが広がります。パンチはありつつも飲みづらさはなく、日本酒を飲んでいるという感じがしません。これが「できたての日本酒」の美味しさなのですね。
「料理に負けない、芳醇な味わいはあえて『肉』と一緒に。豚肉と大根の煮物などと合わせると最高ですよ!」
[3本目]特別なシーンの「ドレス」のような純米大吟醸
3杯目は「純米大吟醸」です。大吟醸というと、香りと味わいがあり、華やかな高級酒のイメージがありますが、『真澄』のそれはひと味違います。その秘密はラベルに書かれ、商品名でもある「七號(ななごう)」。これは、お米と水を発酵させて酒を生み出す「酵母」の名前。<宮坂醸造>は歴史ある「七号酵母」の発祥蔵としても知られています。
「先ほど話したバナナのような香りが七号酵母の特徴です。七号酵母はほかの酵母よりも少し大人しくてやわらかな風味があるんです」
お米を半分以上削った中心部だけを贅沢に使った「大吟醸」を、蔵のアイデンティティである七号酵母を使い、古典的な「山廃」という手法で醸す。ひと口飲めば、驚くほどの透明感とはっきりした甘みを感じ、次の瞬間すっと後味が切れます。「上質」というにふさわしい味わいです。
「大吟醸は初心者が飲みやすい印象がありますが、うちの大吟醸はお酒飲みの玄人の方が好む味になったかな。特別なシーンにぜひ味わってください」
[4本目]メインと合わせたい辛口熟成スパークリング
ラストは、シュワシュワの泡が心地いいスパークリング日本酒。あれ? スパークリングって、一番始めに飲むお酒ではないんですか?
「実は、僕も最初は乾杯用だと思っていたんです。でも実際に有名料理店のシェフたちに飲んでもらったところ、『旨味を含む味の要素が強いので、コースの後半でメインディッシュと合わせたい』と言っていて。実際に様々な組み合わせを試してみるとその通りでした。軽やかな味わいの料理が多い前菜よりは、濃厚な味わいの料理に相性が良いです。フランスのシャンパーニュ地方では前菜からメインまですべて異なるシャンパンで合わせるお店もあるくらいですからね、『泡』といってもいろんな味わいがあるんです」
シュワシュワと涼しげな見た目はまさにスパークリングワイン。フルートグラスで飲むと……すごくドライ! これは確かに、前菜よりもどっしり強い味と合わせたいかも。
「瓶内の酵母を使って二次発酵させる『スパークリング清酒』は通常1ヵ月程度で出荷されますが、『真澄スパークリング』は18ヵ月熟成。しっかり辛口な味わいは、お寿司ならば穴子、お肉なら豚のローストなど、食べごたえのあるメインと一緒に味わってください」
日本酒の楽しみを「トータル」で提案したい
今回教えてくれた<宮坂醸造>の宮坂勝彦さん。老舗の蔵元や生産者の跡取りたちによるユニット『HANDRED』のメンバーとしても活躍している、新世代の蔵元です。
「これからは日本酒の楽しさをトータルで追求する時代になると考えています。たとえばファッションが好きな人なら、一枚のジャケットだけを買うのではなく、靴やシャツにもこだわりたいですよね。日本酒もそれと同じで、合う料理や酒器、飲用シーンも考えることが大切。お酒としてだけではなく、夜の過ごし方として提案していきたいです」
取材協力/宮坂醸造 宮坂勝彦さん
寛文2年(1662年)創業、七号酵母発祥蔵として知られる<宮坂醸造>の若き後継ぎ。「真澄」をはじめ、自身のオリジナルブランド「MIYASAKA」も手がける。「日本酒をもっと自由に楽しんでほしい」をモットーに、地元の野外フェスに日本酒ブースを出店するなど積極的に活動をしている。
HANDREDに関する記事はこちら。
京都の老舗<飯尾醸造>が伝授! お酢の正しい選び方、使い方
どうして大きく差があるの? 老舗に聞く「かまぼこの値段」のワケ
「本物のみりん」は美味しく飲めるって知っていましたか?
庶民の味と侮るなかれ。昭和天皇も好まれたほうじ茶「献上加賀棒茶」とは
醤油は味噌から生まれた!? 意外に知らないルーツと300年続く伝統製法とは…
催物のご案内/商品の取扱いについて/店舗のご案内
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Ranking
人気記事ランキング