2017.01.21
正月のお屠蘇(とそ)は「本物のみりん」で作るって知ってた? お酒のように美味しく飲める、本みりんの見分け方
正月のお屠蘇(とそ)は本当のみりんで作るって知っていますか? 煮物や照り焼きに使われている調味料のみりん、実は江戸時代から「美味しい滋養強壮のお酒」として飲まれていて、現在は正月のお屠蘇として飲まれているのです。
ただし「お酒として美味しく飲めるみりんと、そうでないみりんがある」というから注意が必要!
そこで、美味しく飲めるみりんについて、江戸時代に岐阜県で創業し、伝統製法を守り続けている<白扇酒造>の加藤祐基さんに教えてもらいました。どうやら美味しく飲めるのは、「昔ながらの正しい製法で造られている本物のみりん」なんだそうで…。
【歴史】江戸時代から今でも、本当のみりんは甘くて美味しい滋養強壮ドリンクとして愛されてきた
「みりんがお酒のように飲めると聞くとみなさん驚かれますが、そもそもみりんは米麹・もち米・米焼酎から造られる甘いお酒の一種で、古くは『蜜醂酒(みりんしゅ)』と呼ばれていました。江戸時代には夏バテ予防の栄養ドリンクとして、また寒い夜には寝酒として飲まれていたんです」
それがどんな経緯で「飲んで美味しいみりん」から「飲めない料理用の調味料」へと変わっていったのでしょうか?
「みりんが誕生したのは戦国時代ですが、江戸時代中期に料理人が隠し味に使うようになってから、徐々に調味料としてのイメージが定着。昭和に入り戦後の高度成長期をむかえると、アルコール分を使わず塩を加えた酒税のかからない『みりん風調味料』が出回り始めました」
大量生産された安価な「みりんに似た商品」の台頭によって、昔ながらの製法で造られた「本物のみりん」は「本みりん」と名乗るようになり、お酒として飲まれていたことは忘れられていったのです。
【原料】美味しく飲める「本物のみりん」は、3つの原材料のみで造られる
では商品に「本みりん」と書いてあれば、飲むことができるのでしょうか?
「あまり知られていないのですが、実は『本みりん』といってもさらに飲める・飲めないの2種類に分かれるんです。その違いは原材料名を見るとわかります」
加藤さんによると、飲むことができる本みりん(=本物のみりん)は「①米麹」と蒸した「②もち米」「③米焼酎」の3つだけを合わせて発酵させ、数年間熟成させたもの。
一方、飲めない本みりんは「飲める本みりん」を約4倍に薄め、「醸造アルコール」や「糖分」で味をととのえて製造されています。あくまで調味料向きの商品であり、お酒として楽しむには抵抗を感じる味なのです。
現在、そんな飲むことができる「本物のみりん」を造っているのは、国内で全体のわずか2~3%に過ぎないというから驚きです。
【種類】本みりんは「熟成」により色・味わい・成分が変化していく
「本物のみりんは時間と人の手をかけて大切に造られます。熟成期間が長くなるにつれ、色と味が変化していくのがみりんのおもしろいところ。寝かせるほどに旨み、甘み、深みが増して、まろやかになっていきます。10年熟成(写真右)はまるでチョコレートやバニラのような甘い香りで、アイスクリームにかけて洋酒のように楽しめるんです」
また、熟成させることで米のタンパク質や糖分が、アミノ酸やビタミンなど身体にうれしい成分に変化していきます。
ちなみに「みりん風調味料」はあまり日持ちしませんが、「本物のみりん」は開封後も何年ももつので、自宅で使いながらゆっくり熟成させることもできるそうです。
【おすすめの飲み方】本当のみりんはまろやかな甘みと深みがあり、「極上リキュール」のよう
加藤さんの地元の岐阜県加茂郡では、今でも気軽にみりんを飲む文化が残っているそうです。
「私のイチオシは炭酸で割ってレモンなどの柑橘フルーツを絞ったサワー。冬はお湯割りにしてゆずを加えてもいいし、お酒好きならみりんのロックに焼酎を加えて飲むのもいいですね」
いざ試しに飲んでみると……。みりんの香ばしさや深みのある甘みは、どこか梅酒に似ているような懐かしさがあるけれど、甘めのブランデーのようでもある、新感覚の美味しさです!
正月のお屠蘇とは、本物のみりんに薬草をブレンドした屠蘇散(とそさん)を漬けこんだもの
実はお正月に飲む「お屠蘇」にも、本物のみりんが一役かっています。
「みりんに薬草のブレンドである屠蘇散(とそさん)を一晩漬けこみ、屠蘇として邪気を払い家族の健康を祈って飲む風習は、平安時代には関西から全国に広まったんです」
お屠蘇は清酒だけで作る地方もあるようですが、加藤さんによると薬草の香りが主張しすぎるので、みりんで作るほうがおすすめなのだとか。
知れば知るほど、奥深いみりんの世界。みなさんも、ぜひ一度「本物のみりん」を飲んで、その美味しさを味わってみてはいかがでしょうか。
取材協力/白扇酒造 加藤祐基さん
江戸時代、岐阜県に創業したみりん蔵<白扇酒造>の5代目となる副社長。原材料の麹と米焼酎から自家製し、伝統の製法を守っている。「江戸時代には清酒よりも高級だったみりんを、ぜひ飲んで料理に使って楽しんでください」。老舗蔵元や生産者の跡取りたちによるユニット『HANDRED』のメンバーでもある。
HANDREDに関する記事はこちら。
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