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2016.12.23

どうして大きく差があるの? 老舗に聞く「かまぼこの値段」のワケ

鈴廣を代表するかまぼこのイメージ

おせち料理に欠かせない紅白のかまぼこ。同じ大きさでも1本数百円のものから何千円もするものまで、値段の幅の広さにびっくりしたことはありませんか。

「もしかして正月用に値上げしているのでは?」といぶかるなかれ。実は、値段の違いには大いなる美味しいヒミツが隠されていたんです。小田原かまぼこの老舗<鈴廣>の鈴木結美子さんに教えてもらいました。

値段の違い①【原材料】 上質な魚ほど値段が高い

かまぼこの原料となるグチ。オキギスの漁は鈴廣の専用船を出す

左写真、かまぼこの原料となる「グチ」

値段を左右する要因、その1つめは「原材料」。

「かまぼこの基本の材料は、白身魚と調味料のみ。これを板付けし蒸して作っています。上質な魚の場合は、それだけでかまぼこ特有のむっちり感やうまみが生まれますが、そうでない場合はでん粉や調味料などを加えて補うこともあります」と鈴木さん。

つまり「原材料」に「上質な魚(=高級)」を使うほど値段が高くなるというわけ。

高級魚の位置づけはメーカーによって異なり、ちなみに<鈴廣>では「グチ」と「オキギス」の絶妙なブレンドを最高級と位置づけています。オオギスは希少魚のため、なんと<鈴廣>専用の船を出して漁をしているそう。そのこだわりぶりには驚きです!

値段の違い②【製法】 職人の手か機械、どちらで作るか

職人がかまぼこを作っている手元のイメージ

そして、もうひとつ値段を左右するのは「製法」の違い。職人が手作業で作るか、オートメーションの機械で作るかで大きく異なるといいます。

「魚は生き物ですから、その日によって魚の質が変わるのは当然のこと。かまぼこ作りには毎日状態を見極めながら微調整できる技術が必要なんです」

その技術こそが、職人の力。ちなみに<鈴廣>には国家技能士の最高峰、1級技能士が13人もいます。彼らはかまぼこの白さを作り出すために、魚の身の状態を見極めながら水で洗ってさらし、また弾力を作り出すために、すり身の状態を見ながら1本1本かまぼこ板に手作業で重ねていくのです。

一級の技術を持つ職人がかまぼこを作っている様子

「板づけは簡単そうに見えるんですが、実は一般の方が体験すると腕が筋肉痛になるくらいの力仕事。美しい形にしつつ3層に分けて重ねることで、機械では出せないしなやかな弾力が生まれます」

 

かまぼこの板づけをする様子のGIFアニメ動画

つまり、かまぼこの値段の違いは「原材料」と「製法」によって変わるということ。「最高級の原材料(=魚)を使って、一級技能士の技術を持つ職人が手作業で作る」のが最上級という仕組みなのです。

 

最高級のかまぼこの味は、初体験のジューシィさ!

鈴廣の値段の違ういろいろなかまぼこ

右写真、左から慶応元年より技を伝承する「超特選蒲鉾 古今(ここん)」3,888円、「特上蒲鉾」1,728円、「謹上蒲鉾」1,188円、「上板蒲鉾」1,026円(すべて税込)

では値段の差でどれだけ味に違いが出るのでしょうか? <鈴廣>最上級のかまぼこ「古今(ここん)」(左写真)を食べてみました。

ひと口食べて「んんっ」と目を見開いたのが、しなやかでいてぷりっと跳ね返る力強い「弾力」。そして意外や意外、口中にジュワッと広がる魚本来のジューシィなうまみ。なめらかな舌触りと鼻に抜ける良い香り。いつも食べていたかまぼことの違いは瞭然……!

「高級なかまぼこは12ミリの厚めに切って、まずは何もつけずに食べてみてください。お値段が手頃なかまぼこは加熱しても縮みにくいので、料理して使いたいときにはおすすめです」

小田原の恵みと職人の技を守り抜く、<鈴廣>のかまぼこ作り

「鈴廣 かまぼこの里」外観。「かまぼこ博物館」では職人の様子が見学できる

写真左から、今回取材した小田原にある「鈴廣 かまぼこの里」。併設の体験型「かまぼこ博物館」は2016年10月にリニューアルし、さらに楽しく学べるように

<鈴廣>が目指しているのは、自分が食べたいもの、自分の大切な家族に安心して食べてもらえるかまぼこだといいます。たしかに、いろいろなメーカーのかまぼこの成分表示を見比べてみると、<鈴廣>では人工的に合成された調味料や、保存料、品質改良剤のような人工添加物は一切使っていないことに驚きます。

「小田原がかまぼこ作りで発展した背景には、豊かな漁場を抱えていたことだけでなく、かまぼこ作りに最適な『箱根百年水』といわれる丹沢山系の地下水が豊富だった点も見逃せません。江戸時代にはすでに、その名声が広まっていたそうです」

そう鈴木さんが語るように、小田原の土地が育む鮮度の良い魚、水、職人の技が集結された<鈴廣>のかまぼこ作りには、長く受け継がれてきた誇りと自信が込められている――。

小田原に足を運び、目で見て食べてみて、改めて実感した取材でした。

かまぼこの里にある「かまぼこバー」。食べ比べができる3種類のかまぼこ

「かまぼこの里」にある「かまぼこバー」では、かまぼこソムリエと話しながら、魚種や製法の異なるかまぼこ3種の食べ比べができる

取材協力/鈴廣かまぼこ 鈴木結美子さん

鈴木結美子さんと弟の智博さん

150年以上続くかまぼこの老舗<鈴廣 かまぼこ>10代目の次女。型染めデザイナーとしてパッケージデザインにも関わっている。左は次期社長となる弟の智博さん。「本物のかまぼこの美味しさと技術を受け継ぎ、広く伝えていきたいです」。老舗蔵元や生産者の跡取りたちによるユニット『HANDRED』のメンバーでもある。

HANDREDに関する記事はこちら。
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文: 嶺月香里

写真:ミヤジシンゴ
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催物のご案内/店舗のご案内

【催物のご案内】

日本橋三越本店 大歳の市
■開催期間:2016年12月26日(月)~31日(土)
※12月30日(金)は午前10時~午後7時30分、12月31日(土)は午前10時~午後6時
■開催場所:日本橋三越本店 本館地下1階=自遊庵
小田原の<鈴廣 かまぼこ>(※「上板蒲鉾」の取扱いはございません)のほかに、東京の<神茂><佃權>をはじめ、大阪の<大寅>、京都の<茨木屋>など各地のかまぼこが一堂に集まります。

伊勢丹新宿店 大歳の市
■開催期間:2016年12月26日(月)~31日(土) 
※最終日12月31日(土)は午前10時~午後6時
■開催場所:伊勢丹新宿店 本館6階=催事場
かまぼこをはじめとする年末年始にかかせない味と<新潟/菊水酒造>の樽詰め替え日本酒が期間限定出品。その他ビールを飲みながら和牛の赤身肉ステーキが楽しめるバルや、讃岐うどんの人気店が提供する、会場内で打ちたての年越しうどんを楽しめるイートインコーナーもご紹介しております

ISETAN×HANDRED ~つなげていきたい日本の食卓~
■開催期間:2017年1月25日(水)~31日(火)
■開催場所:伊勢丹新宿店本館地下1階=フードコレクション
「100年先まで、日本の食文化を伝えていきたい」。そんな思いで、老舗の蔵元や<鈴廣>をはじめとする伝統食材の生産者たちが立ち上げた「HANDRED」。改めて日本の食の底力を実感してください。

【店舗のご案内】
小田原 鈴廣かまぼこ 神奈川県小田原市風祭245

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