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2016.11.11

今、燗酒が面白い! バイヤーが見つけた「お燗に向く日本酒」5選

熱燗イメージ

日本酒シーズンの到来です。近年はワイングラスで楽しむような冷酒向きの日本酒が話題を集めていますが、伊勢丹新宿店の和酒バイヤー・山本慎吾さんは「これからは燗酒が面白いですよ!」と、お燗推しです。

お燗向きのお酒は赤ワインみたい?

「すっきり飲むフルーティなタイプはよく『白ワインみたい』と感じる人が多いですよね。対してお燗に向くお酒はしっかりボディがあって米本来の味を強く感じられるものが多く、ワインで言うならば『赤』。このようなタイプのお酒はお燗にすることでよりまろやかで美味しくなるんです」

燗酒というと昔ながらのお酒といったイメージがありますが、最近は20〜30代の若い杜氏や蔵人が増え、現代的なライフスタイルに合わせた挑戦的な燗酒が次々と登場しているそうです。今回は山本さんが惚れた「お燗向きの日本酒」を教えてもらいました。

①田んぼから日本酒を育てる「いづみ橋」

いづみ橋「恵」海老名耕地 純米酒

<泉橋酒造>いづみ橋「恵」海老名耕地 純米酒(720ml)1,404円(税込)■粋の座

神奈川県にある老舗蔵<泉橋酒造>の1本。稲と田んぼに集まるトンボのラベルが印象的です。

「<泉橋酒造>は『土からお酒を作る』ことを信条にしており、この商品は自社の田んぼで育てた酒米から作っています。ワインの『ドメーヌ(※1)』と同じ考えです」

お米の味を最大限に生かすため、精米歩合(※2)は米をほとんど磨かない80%。香りは控えめで米の個性が主張する辛口タイプです。蔵元もお燗を推奨している正真正銘の「燗酒」といえます。

「温めることで辛口のカドが取れ、口当たりがやわらかく変化します。じんわり広がる米のうまみを堪能してください」

<おすすめ燗付温度:45℃>

※1 ワインの世界において、原料の栽培、醸造、熟成、瓶詰までを自分たちで行う生産者を指す。

※2 日本酒の原料となる米の外側をどれだけ削るかを表す数値。削るほど透明感ある酒質になる傾向があり、精米歩合50%以下のお酒を「大吟醸」「純米大吟醸」という。 

②  日本酒界のイケメン杜氏が醸す辛ウマ酒「澤の花」

澤の花 ひまり 辛口純米

<伴野酒造>澤の花 ひまり 辛口純米(720ml)1,296円(税込)■粋の座

続いては長野県にある<伴野酒造>。若手杜氏の伴野貴之さんは日本酒界きってのイケメンで知られています。有名ブランドの「澤の花」のなかでも、「ひまり」は2種類の酵母で醸したお酒をブレンドした挑戦的な1本。ボリュームとキレを併せ持つハイブリッドな商品です。

「『いづみ橋』よりもさらにシャープで、冷蔵や常温で飲むとキレのよさが際立ちますね。これをお燗にするとうまみや甘みなどが膨らみ、バランスが非常によくなります。辛さがいいアクセントになり、スイスイ飲み進めたくなりますよ」

<おすすめ燗付温度:40℃>

③  伝統的な「生(き)もと」で醸す上品な酒「白隠正宗」

白隠正宗 純米酒生酛誉富士

<髙嶋酒造>白隠正宗 純米酒生酛誉富士(720ml)1,468円(税込)■粋の座

3本目は静岡県の<髙嶋酒造>から、県内産の米「誉富士」と地元の「静岡酵母」を使った「白隠正宗(はくいんまさむね)」を紹介。江戸時代に生まれた昔ながらの手法「生(き)もと」(※3)で醸した1本です。

「生(き)もとは本当に手間も時間もかかる大変な工程ですが、これを丁寧に行った『白隠正宗』は、きれいで繊細な酸が魅力になっています。このお酒も燗を付ける事によってバランスが変化するタイプ。甘みやうまみなど、日本酒が持つさまざまな味と一緒になり、より心地いい酸を楽しめます」

<おすすめ燗付温度:40℃>

※3 現在は乳酸を人工的に添加する「速醸」が主流ななか、「生(き)もと」は日本酒のもととなる「酒母」を作る工程で自然界の乳酸菌を取り込んで発酵を促す方法。 

④  酵母無添加! 自然界が産んだパワフルな「花巴」

花巴 酵母無添加 山廃純米吟醸

<美吉野醸造>花巴 酵母無添加 山廃純米吟醸(720ml)1,458円(税込)■粋の座

続いては奈良県の有名蔵<美吉野醸造>の「花巴(はなともえ)」。「白隠正宗」と同じ「酸」タイプですが、印象は大きく異なるそうです。

「口に含んだ瞬間に『すっぱい!』と驚きますよ! <美吉野醸造>は酵母を添加せずに自然の力だけで醸すことをモットーとしており、この1本は乳酸を添加しない製法『山廃』(※4)を採用。自然界の力で醸しているので、非常にパワフルなお酒になっていますね」

精米歩合56%まで磨いたやや甘めの香りと、口の中で主張するドライ感は、多くの日本酒ツウを虜にしています。お燗にすると隠れていたうまみや甘みがふくらみ、よりボディが感じられます。

<おすすめ燗付温度:40℃>

※4 日本酒のもととなる「酒母」を作る工程で、自然界の乳酸菌を取り込んで発酵を促す方法の1つ。生(き)もとを改良して明治時代に確立した。

⑤  炊きたてご飯のような「伊予賀儀屋」

伊予賀儀屋「赤ラベル」無濾過純米酒

<成龍酒造>伊予賀儀屋「赤ラベル」無濾過純米酒(720ml)1,404円(税込)■粋の座

ラストは四国・愛媛から「料理の脇役」になる食中酒を目指す<成龍酒造>の1本。この商品の特徴は原料を通常の酒米ではなく県内産の食用米を使っているところ。

「日本酒では珍しい食用米を使うことで、ふっくらした香りが生まれます。味わいも『米』というより『ごはん』のような甘さがありますね。常温でもバランスのよさを感じられるお酒です」

独特の「ごはん感」は、燗付にするとさらにパワーアップ。炊きたてごはんのようなふくよかさを楽しめます。

<おすすめ燗付温度:40℃>

日本酒の劇的な変化に感動!

最後に、山本さんから「お燗のアドバイス」をいただきました。

「まずは冷蔵や常温でひと口、それからお燗にして飲み比べてみてください。味わいの変化にきっと感動するはずですよ。お燗にする道具がなければ最初はレンジでもOK(『冬はレンジで熱燗! 日本酒のプロが教える「レンチン燗」のススメ』)。フルーティさとは別の、もう1つの日本酒の美味しさを体験してください!」

今年の冬はほっこり、じっくり、燗酒を楽しみましょう。

文: 大久保敬太

写真:菅井淳子
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
※未成年の飲酒は、法律で禁止されています。

バイヤー・スタイリスト / 山本慎吾
日本酒に携わって12年というベテランスタイリスト。お燗の魅力を「好きな人の意外な一面を見たときの喜びに似ている」と熱弁する、大の日本酒党。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=粋の座/和酒にてお取扱いがございます。
伊勢丹オンラインストア「和酒」はこちら。

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