2016.12.16
欲しい味を迷わず買える!外さない日本酒の選び方ルール
日本酒を飲むのは大好きだけど、難しい専門用語は苦手。お店に行っても大量のお酒から好みの1本を選べない……そんな迷える日本酒ファンのために、日本酒のプロである「大塚 はなおか」の店主・花岡賢さんが、簡単な日本酒の選び方を伝授。飲食のプロならではの「料理との合わせ方」も参考になりますよ。
押さえるべきは「風味」と「濃度」のたった2つ
「『日本酒は難しい』と思っている人が多くいますが、それは間違い。『風味』と『濃度』という2つのポイントを店員さんに伝えるだけで、欲しい味にたどり着けるんです。無理に自分で選ぶのではなくて、プロである店員さんに欲しい味を正確に伝えることが大切です」
[風味]フルーティか、穀物か
「フルーティな香りがする果実系か、お米のうまみが強い穀物系か。ざっくりいうと、日本酒の風味はこの2タイプしかありません」(花岡さん)
[濃度]すっきりか、濃厚か
「すっきり、中間、濃厚の三段階でいいでしょう。風味と濃度を組み合わせれば、だいたい思い通りのお酒を教えてくれるはずです」
2つの軸をベースにして、タイプの違いがわかりやすい3本を花岡さんに選んでもらいました。
① フルーティ☓中間=ワインのような透明感
選び方:フルーティ☓中間
まずは愛知県の<萬乗醸造>が醸す「醸し人九平次」の純米大吟醸。驚くほどさわやかな口当たりと程よい酸味はまるで高級ワインのよう。フランスの三ツ星レストランでも採用されているという、近年の日本酒ブームを牽引する人気銘柄です。
「フルーティ系日本酒の代表格です。意外にも芯がはっきりしているため、オリーブオイルや香草を使用した料理など、フレンチとイタリアンと相性がいいです。果実系の含み香があるため、和食の焼き魚や煮魚の香りとは喧嘩してしまいます。和食なら野菜料理とは好相性ですよ」(花岡さん)
最初の1杯は大吟醸でちょっとリッチに、食事の前半に楽しみたいですね。
<合わせる料理>カルパッチョ、アクアパッツア、サラダなど
② 穀物系☓すっきり=冷も燗も美味しい万能型
選び方:穀物系☓すっきり
2本目は<石本酒造>の「越乃寒梅」をセレクト。「淡麗辛口」で知られる新潟の地酒の代表格で、60年代に大ブームを巻き起こした超有名ブランドです。
「今回『越乃寒梅』を選んだのは、知名度の高い銘柄は否定したがる人が多いから。50年前、世に『地酒』を知らしめたお酒ですが、今もずっと美味しい。多くの名店で愛され続けている銘酒です」
1本目に選んだ「醸し人九平次」との違いは穀物系で、和食に合わせやすいところ。数ある「越乃寒梅」の中でも特に安価な「白ラベル 普通酒」はキレが抜群です。
「後味はキレよく、冷やしても常温でも、お燗しても美味しく飲める、まさにオールラウンダー。和食なら前菜からメインまでこれで通すこともできますね」
最初は冷たくキリッと、飽きてきたらお燗でほっこりと、同じ1本でも気分に合わせて柔軟に変化する実力派。普段使いの1本にぴったりです。
<合わせる料理>和食全般
③穀物系☓濃厚=どっしり濃厚な米のうまみ
選び方:穀物系☓濃厚
ラストは1本目の「醸し人九平次」、2本目の「越乃寒梅」とは反対に「濃いタイプ」としてセレクトした<車多酒造>の「天狗舞 山廃仕込 純米酒」。「山廃」とは、自然界の乳酸菌を取り込んで日本酒を醸す手法の1つでどっしりパンチのある酒質が特徴。濃厚なお米のうまみが広がり、余韻が後を引きます。昔ながらの「THE 日本酒」といった、飲兵衛にはたまらない味わいです。
「穀物系の日本酒はだいたいどの和食にも合うのですが、濃度が高くなると前菜では負けてしまいます。日本酒と料理を合わせるコツは『濃さ』を揃えること。この『天狗舞』には、豚の味噌漬焼きやぶり大根など、味の染みた和惣菜を合わせましょう」(花岡さん)
<合わせる料理>煮魚、鍋、きんぴら、佃煮、肉の粕漬・味噌漬焼きなど
今回花岡さんが教えてくれたお酒選びのルール。料理との組み合わせは下記のような一覧で把握しておくと便利です。
(料理との相性例)
フルーティ(洋風の料理全般と好相性)
×さっぱり→カルパッチョなど前菜。(野菜ならば和食でもOK)
×中間→オリーブオイルやハーブなど洋食材を使ったメイン料理など
×濃い→該当酒はなし(一部貴醸酒などあり)
穀物系 (和食全般と好相性)
×さっぱり→お刺身
×中間→焼き魚など
×濃い→鍋、煮物など
日本酒選びは思っている以上にシンプルなもの。花岡流のルールを駆使して、もっと気軽にさまざまな日本酒を探してみましょう。
東京・大塚の居酒屋「大塚 はなおか」店主。「飲食店日本酒提供者協会」理事。実店舗の経営のほか、日本酒提供者の基礎検定「SAKEアドバイザー」や、「日本酒提供者マイスター」の資格認定などを行う。
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