2016.09.15
国産小麦が日本のパンを変える!? パンラボ池田浩明が語る国産小麦の魅力
お米は国産というイメージがありますが、小麦はといえば、これまでカナダやアメリカなど外国産が多い印象でした。しかし、近年は品種改良が進み、安心・安全や美味しさにこだわった国産小麦もたくさん作られており、注目も高まっているようです。
そこで今回は、パンをこよなく愛し、その年に収穫した国産小麦を採れたてで味わう取り組み「新麦コレクション」の理事長を務めるパンラボの池田浩明さんに、国産小麦の魅力について聞きました。
国産小麦が可能にした日本的な発想のパン
これまで欧米に追いつけ、追い越せで発展してきた日本のパン文化。実は、小麦は古来より日本でも作られていましたが、うどんやそうめん用に発達したため、あまりパン作りには向いていなかったのだとか。しかし、近年は品種改良が進み、国産小麦でも美味しいパンが作られるようになってきました。
栽培される小麦の品種はさまざまですが、なかでも特にユニークなのが「桑名もち小麦」。三重県桑名市で作られているこの小麦は、名前の通り、おもちのような食感が特徴だそう。
「お米でいうもち米のように、パンにしたときにおもちのようなもちもち感が楽しめます。だから、和食にすごく合うんですよね。卵サンドにしたり、あんこをはさんだりするのもいいと思います」
そしてこの国産小麦の登場は、日本独自のパンが生まれるきっかけになると池田さんはいいます。
「このもちもちした小麦粉を、どうやったら美味しいパンにできるだろう? と工夫することは、これまでの海外の伝統的なパンをどう再現するかというところで頑張っていた職人さんたちにとっても新しい発想の仕方。ここへ来てようやく、日本の風土に合った、日本的な発想のパンが生まれる土壌が整ってきたんです」
全国で作られる国産小麦を「新麦」で味わおう!
同じ品種であっても、育つ土地の気候や環境の影響を受けるので、地域ごとに風味の特徴があるという国産小麦。
「代表的な産地は北海道ですが、三重や滋賀、鳥取、福岡、熊本など全国で作られています。意外なところでは、湘南ですね。東京から電車で1時間も行けば小麦畑が見られるなんて、僕も驚きました。味も地域によってかなり特徴的です。たとえば北海道産の小麦は、ふわっとしていてもっちり感のあるパンになりますが、九州で作られる小麦はパンにしたときの歯切れがいいのが特徴。外国産の小麦みたいにサクッとした食感に仕上がるんです」
通常、小麦は長期保管されてから製粉されますが、全国各地の採れたての小麦を、みんなで味わおうというプロジェクトが「新麦プロジェクト」。「新そばや新米と同様に、新麦もみんなに認知してもらえるとうれしい」と池田さんは話します。
「パン職人さん曰く、新麦の粉袋を開けたときの香りはやっぱり普段と違うそうです。僕も先日、製粉工場に見学に行ったのですが、ひきたての小麦の香りがお茶みたいで! そんなイメージがなかったから、新鮮な感動がありましたね。新麦の香りや手触りからインスピレーションを受けて職人さんが作ったパン。それを通して、僕たちも新麦のよさが楽しめるんです」
農家からパン職人まで チームで引き出す小麦の魅力
美味しい小麦作りは、チームで成り立つもの。農家から製粉工場、そしてパン職人を経て、消費者である私たちの元へ届く……というふうに、私たちの口に入るまでにバトンが受け継がれているのです。
「農家さんが安心・安全にこだわった作り方をして、製粉会社さんがその個性を引き出すひき方をして、最終走者であるパン屋さんが、その小麦の個性を知った上でパンにする。そうして初めて、僕たちに魅力あふれるパンが届く。本当に小さな一歩ですが、『新麦コレクション』を通じて、作り手を意識して食べたり、選んで購入したりすることにつながれば、成熟した日本独自のパン文化のきっかけになると思います」
今年の初夏に収穫された小麦は、8月10日から全国で順次解禁されています。国産小麦を積極的に使う、才能ある若手の職人もどんどん増えているという日本のパン事情。和食といえば米、だけではなく、これからパンの世界でも、日本的な独自の文化がどんどん開花するに違いありません。
池田浩明
「新麦コレクション」の理事長。パンを食べる研究を専門に行う「パンラボ」主宰、ブレッドギーク(パンオタク)。日々パンを食べ、パンを考え、パンと遊んでいる。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』などがある。
催物のご案内/商品の取扱いについて
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Ranking
人気記事ランキング