2016.05.22
まるでお刺身! 一度食べたら忘れられない衝撃のローカルこんにゃく
色はうすいピンク、食感はとろけるようなやわらかさ。ほんのりと甘みがあって、わさび醤油をつけて食べるとハマチのお刺身のような味……。実はこれ、南信州の泰阜村(やすおかむら)をはじめ、長野県の一部地域で食べられているこんにゃくなんです。通称「山のお刺身」というんだそう。かつては広く流通していた、貴重なこんにゃくを調査しました。
今では流通がほとんどない、貴重な在来種
こんにゃくといえば、灰色に黒の斑点があり、プルプルしていて独特の香りがするもの。そんなイメージを抱くことがほとんどです。しかしそれは、在来種(もともと日本に自生していた品種)に生育の早いインドネシア産のこんにゃく芋を掛け合わせた品種で作られたもの。泰阜村で生産されているこんにゃくは、収穫までに5年を要する在来種のこんにゃく芋のみを使用した貴重な食品で、今では自家消費用にしか作っていない生産者がほとんどです。商品として販売されているこんにゃくもありますが、購入できるのは一部の直売所のみです。
苦労してでも食べ続けたい魅惑の味
実は、泰阜村は1975年までこんにゃくの一大産地でした。冷涼な気候と傾斜のある畑はこんにゃく芋の生育に最適。「泰阜といえばこんにゃく」と言われるほど、そこここの畑でこんにゃく芋の栽培が盛んに行われていました。しかしある年、流通のトラブルによりこんにゃくの価格が暴落。ほとんどの村民がこんにゃくの生産・販売をやめてしまいます。
それでも一部の村民は自家消費用とわずかな販売用に手間暇かけてこんにゃくを作り続け、その伝統を守り続けていました。今回取材に応じてくれた宮入良夫さんはこんにゃくを作り続けている理由について「自分たちが伝えていかなければ日本古来の在来種が途絶えてしまうというのが一つ。もう一つは単純にとても美味しいからです。このこんにゃくの味を知ってしまったら最後、何度でも食べたくなってしまうんです」と話します。
在来種のこんにゃく芋は5年間植えっぱなしで育つわけではありません。凍結を防ぐため毎年11月には一度地面から掘り起こし、室(むろ)に保管して翌年5月に再び植えるという作業を繰り返して育てています。そんな莫大な労力をかけてでも「食べたい!」と思えるほど、人を虜にしてしまう在来種のこんにゃく。まるで嗜好品です。
作り方はいたってシンプル。けれど力仕事です
人を惹きつけてやまないこんにゃくは、どのようにして作るのでしょう。今も在来種のこんにゃくを作り続けている宮入さん一家にこんにゃくの作り方を教えてもらいました。
①皮をむき、カットしたこんにゃく芋を4〜5倍の水と合わせてミキサーにかける
②液状になったこんにゃく芋を1時間ほどおいてなじませた後、30分煮る。粘りがあるので焦げつかないように根気よく混ぜる。よく混ぜるほどやわらかくなめらかに仕上がるが、だんだんと粘りが強くなるため、なかなかの力仕事となる。
③しっかり粘り気が出てきたら、水に溶かした炭酸ナトリウムを加え、一気にかき混ぜる。すると色がやや黄色味をおび、固まる。
④固まったらさらに水を加えてゆで、切り分ける。このとき、薄いピンクの色を帯びるのがこのこんにゃくの特徴のひとつ。しっかり凝固するまでゆでたら完成!
できあがったこんにゃくは薄く切ってお造りにしても、みりんとしょうゆで甘辛く煮付けても絶品。まさに山のお刺身です。天ぷらやカツレツにしていただくこともあるそうで、山の食の奥深さを思い知ります。
知る人ぞ知るグルメとして浸透中!
今ではすっかり貴重になってしまった在来種のこんにゃくですが、知る人ぞ知る山のグルメとして着実にファンは増え続けているそうです。
「一度食べたら忘れられない味だから、東京や名古屋の友人に頼まれて送っています。販売したいという直売所も増えてきました」
特産品としてイベントなどで供される機会も、泰阜村のこんにゃくを広めるきっかけとなっているようです。
一度食べたらいつでも何度でも食べたくなってしまう魅惑のこんにゃく。美味しいもの好きなら一度は出合ってみてほしい逸品です。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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