2016.02.25
パンの魅力を知り尽くした「パンラボ」おすすめ、注目のパン屋3選
美味しいパン屋が最近とても増えた印象があります。今世間ではパンブームと言われています。家の近くにどんどん美味しいパン屋ができて、みんながパンの美味しさに目覚めはじめたことが大きな原因のひとつかもしれません。そんななかでも私が心惹かれてやまないパン屋さん、単に「美味しい」を超えて、どきどきわくわくという興奮を与えてくれるパン屋さんです。そんな3軒のお店をこれから紹介します。
こんなパン食べたことない! イノベーションのデパート。池尻大橋「TOLO PAN TOKYO」
イノベーションのデパート。「TOLO PAN TOKYO」のことを私はそう呼んでいます。誰も食べたことのない、新しい美味しさへ。「TOLO PAN TOKYO」の田中真司さんはいつもなにかを探しています。寝るのも忘れて実験し、美味しいものができると、「今回こんなん作ったんですよ!」とすごく楽しそうに新しいパンのことを語ってくれるのです。
私をどきどきさせてくれるパンたち。たとえば、輪っかの形をしたアップルパイン。輪切りのパイナップルに、クロワッサンの層、キャラメリゼされたりんごの層と、3つの輪が重ねられたおもしろい形。噛めば、果汁とともに、カルダモンやカルバドスの香りが噴き出し、不思議な美味しさを醸しだします。
パンオショコラの場合。クロワッサン生地を噛み破ると、乾いた音を激しく立てて層が崩壊していきます。それをたとえるなら、ボテトチップスを10枚くらいまとめて食べた感じといえばいいでしょうか。加えて、ヴァローナのチョコレートのフルーティなこと、口溶け滑らかなこと。それが豊かなバターと混じり合って極上のマリアージュを繰り広げます。
新進気鋭の若手シェフが作る国産小麦パン。那須「カネルブレッド」
栃木県那須にあるカネルブレッド。シェフの平山翔さんはまだ28歳という若さ。いま若い世代に素材を大事にするパン職人が増えていますが、国産小麦の使い手である彼はまさに旗手といえるでしょう。
たとえばピーナッツとチーズのビアリー。むにゅう、としっとりと水分を含んだ生地が歯と歯茎に与えた快感の信号が全身を駆け巡るといった感じ。ピーナッツの香ばしさ、チーズのコク、やがておいかけてくる小麦のフレーバーが見事にマリアージュして、素材の美味しさを讃えるのです。やさしくて官能的な食感は、カネルブレッドを特徴づけるもの。
クリームパンでいえば、ぷるん。中が空洞になっていて、ぱふっとミルキーな香りがしたかと思うと、ちゅるっとクリームがパン生地といっしょに溶けてきて、まるで桃みたいな不思議なフルーティさが滲みだします。平山さんはクリームにバニラを入れません。奄美諸島産の素焚糖(すだきとう)と、パン生地の中の焦がしバターがハーモニーを奏で、国産材料のすばらしさを歌いあげるのです。
まるでパンの森! 300種ものパンが並ぶ、松戸「ZOPF」
最後に、どきどきわくわくの巨匠を挙げましょう。松戸のZOPF(ツオップ)は、駅から遠い住宅街という立地をものともせず、毎日行列ができるパン屋です。山小屋風の小さな店舗の中に1日300種のパンが並ぶ様は圧巻。美味しそうなパンの森に迷いこんで、「あれ食べたい、これ食べたい」のパン欲が異常増幅し、気がつくとトレイの上はパンでてんこ盛りになっているのです。
たとえば、思わず手にとらずにいられないマンゴーカスタード。やわらかでぷりっとして卵もミルクも濃厚なブリオッシュでできたカップの中には、こってりと甘いカスタードがたっぷり盛られていて、その上にマンゴー。ぴちぴちと果汁が弾け、さわやかな酸味が甘いカスタードの上にふりかかって、すばらしいマリアージュとなります。
いちじくとチョコのミルフィーユはその名の通り、いちじくとチョコとライ麦生地のパンを折り重ねたパン。それらの間に完全な相性があることに驚きます。いちじくのただれた甘さはチョコのカカオ感と酸味へ飛び移り、またいつの間にかいちじくの果汁が顔を出すという調子にぐるぐると廻って、めくるめく世界が広がります。
池田浩明
パンラボ主宰、ブレッドギーク(パンおたく)。パンラボblog(panlabo.jugem.jp/)、twitter(@ikedahiloaki)でパン情報発信。2月19日に新刊『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)発売。もっと美味しく安全な小麦を日本に広げるプロジェクト「新麦コレクション」代表。
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記事でご紹介している各ショップは、2016年2月24日(水)
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