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2016.01.15

美味しい海苔の基礎知識~ 高級海苔から味付け海苔まで、地味に見えてこんなにスゴイ!

おいしい海苔

カニやふぐ、ぶりなどの海の幸が旬を迎える冬、「海苔」も旬を迎えることをご存知ですか? 一年中取扱いがあり、日持ちのする「乾物」ゆえ、魚や野菜のように時期や産地に注目することがあまりないかもしれません。でも、栽培方法や産地によって、味には大きな違いがあるんです!

そこで今回は、海苔の産地、栽培方法から味わいの違いまで、海苔の基礎知識を解説。さらに、産地の違う海苔を食べ比べして、知られざる味のバラエティ、海苔の底力を探ってみました。

海苔が食卓に届くまで

【栽培】ほとんどが養殖によって作られる

海苔の原料は「アサクサノリ」や「スサビノリ」などの海藻で、そのほとんどが養殖。海藻の種を植えつけた網を海に設置して栽培します。大きく分けて「支柱柵養殖」と「浮き流し養殖」の2つの方法があり、それぞれに海苔の見た目や味に違いが生じます。

天然の環境に近いといわれる「支柱柵養殖」

海苔の栽培方法「支柱柵養殖」

海底に立てた支柱に、海苔の種が付着した網を張る方法。潮が引いた際に日光に当たるので、天然の海苔に近い環境だとされる。天然に近い赤っぽい色味に仕上がることが多く、やわらかく、口溶けが良くなる傾向があるといわれる。

水深の深い場所でも栽培できる「浮き流し養殖」

海苔の栽培方法「浮き流し養殖」

海面に浮かぶブイと、海底に打ち込んだアンカーの間に網を張る方法。水深の深い場所でも養殖が可能。網が常に海中にあり日光に当たらないので、黒々とした艶のある海苔になる傾向がある。

【加工】収穫後は加工場、海苔メーカーを経て食卓へ

収穫された海藻は加工場に運ばれて「撹拌洗浄」され、「抄(す)き」「脱水」「乾燥」を経て、私たちの知る海苔の形に。ただ、この時点ではまだ水分を含むためしっとりしています。その後、海苔メーカーで「火入れ」をします。さらに海苔の用途に合わせて「焼き」などの加工が施され、「焼き海苔」になるのです。

【サイクル】種の植え付けから収穫まで

海苔の収穫は年に1回。常に店頭に並んでいるので通年収穫しているように思われますが、農作物と同じように、一年の中で「植え」「栽培」「収穫」といったサイクルがあります。

[4月頃〜9月中旬]

・貝の中で「海苔のもと」を育てる「糸状体(しじょうたい)培養期」
この時期、海苔のもとになる海藻の胞子は、糸のような「糸状体」と呼ばれる状態。牡蠣殻で培養される。

[9月中旬〜10月上旬]

・養殖用の網に海苔の種を植える「採苗期」
糸状体が成長すると、海苔の種である「殻胞子」を放出。「殻胞子」を、養殖の網に付ける「採苗」を行う。

[10月〜2月]

・5ヵ月かけて海藻を育てる「育苗期」
採苗した網を海に設置し、「支柱柵」「浮き流し」によって育てる。

[12月〜4月]

・1シーズンに10回以上収穫「摘採期」
収穫の時期。海苔は、一度収穫しても、数日で成長し、再び収穫ができる。最初の新芽は、「一番摘み」と呼ばれ、貴重で上質な海苔に。

※上記の時期は、産地によって例外がございます。

収穫は冬に行われ、その海藻を使って作ったものが「新海苔」。新海苔が出回る時期が、海苔の「旬」です。新海苔が出回るのは12月初旬頃ですが、最近は温暖化により年明けになることもあるようです。

【産地】海苔の2大産地は「有明」「瀬戸内」

海苔の養殖地は、有明海、瀬戸内海、伊勢湾、東京湾(※)などが有名。特に有明海は、全国で生産される海苔の半分以上を作っています。

※現在、東京側の東京湾では海苔養殖を行っていません。千葉側と神奈川側のみです。

海苔の4大産地

海苔の4大産地、一般的にいわれる特徴

①歴史ある老舗の養殖地「東京湾(※)」
生産量は多くないが、古くから海苔の養殖が行われていた養殖地域。
海苔の特徴:心地よい磯の香りと歯ごたえ

②「男性的」な海苔が特徴「伊勢湾」
伊勢湾の速い潮流の中で、「支柱柵養殖」「浮き流し養殖」を行っている。
海苔の特徴:磯の香りがありパリッとした食感

③ミネラル分の多い海藻が育つ「瀬戸内海」
「浮き流し養殖」が主流の瀬戸内海。海水温が高く、ほかの地域よりも収穫の時期が少し遅め。
海苔の特徴:色が濃く、しっかりと固め

④質・量ともに全国トップ! 「有明海」
生産量一位二位の佐賀と福岡の面し、広大な干潟のある有明海。海苔はやわらかで「女性的」と言われる。
海苔の特徴:やわらかで、うまみが強い

 
吉田商店 産地味くらべ海苔Study

産地による違いを味わってみたい方は、「有明海産」「伊勢湾産」の海苔の食べ比べできるアイテムもおすすめ。

■<吉田商店>産地 味くらべ海苔Study のりすたでぃ
※現在はお取扱いいたしておりません。

 

うまみ・食感がこんなに違う!? 3つの海苔を食べ比べ

栽培方法や産地によって、味にはどんな違いがあるのでしょうか。伊勢丹新宿店で乾物などを担当する北條理紗さんに、味の違いがわかりやすい3つの海苔を教えてもらい、食べ比べてみました。違いを知るポイントは「味」「食感」「口溶け」の3つ。

この味を知ったら、後戻りできない!
①<三國屋>焼寿司海苔 超特選

うまみ

とても強い

磯の香り

ひかえめ

食感

パリッと感がある

口溶け

噛みごたえはあるが、良い

*オススメの食べ方*

うまみがとても強いので、お酒のあてなどで、そのまま食べるのが◎

有明で特に上質な素材のみを厳選して作り上げた、1枚およそ200円の高級海苔。
口に入れた瞬間、味付け海苔!? と間違いそうになるほどの濃厚なうまみが特徴です。食感はやわらかですが、重厚な噛みごたえも。それでいて口溶けもいいのが驚きです。

一般的な海苔と高級な海苔の比較

左がスーパーで売っている一般的な海苔、右が「焼寿司海苔 超特撰」。

比較すると色の違いにびっくり。手で切る際にも、一般的な海苔は「ちぎる」感じなのに対し、「焼寿司海苔 超特撰」は「割く」感じに近い。

 

 口溶け最高のオールマイティ
②<成清海苔店> 有明一番摘み皿垣漁協産焼のり

うまみ

上品で、ほど良い

磯の香り

うまみとバランスが良い

食感

やわらかでやさしい、「女性的」な印象

口溶け

とても良い、口の中でフワッと溶ける

*オススメの食べ方*

パリッとし過ぎず、口溶けがいいので、巻き寿司や手巻き寿司に

有明産の一番摘みの海藻のみで作った逸品。うまみと磯の香りがちょうどいいバランスで両立し、 そのまま食べても、ご飯のお供としてもマッチするオールマイティな海苔です。

 

ごはんのお供にぴったりの「男性的」な海苔
③<吉田商店>焼のり名匠

うまみ

強いうまみ

磯の香り

強い

食感

焼海苔らしいパリっと感

口溶け

しっかりした食感で「男性的」な印象

*オススメの食べ方*

磯の香りと塩気があるので、特にご飯との相性が良い。おにぎりにぴったり

伊勢湾および三河湾産の海藻を使った海苔。しっかりとしていて滋味深い味わいが特徴で、実際にお寿司屋さんでも使用されているそう。

 

進化系海苔にも注目!

「朝食」の定番である味付け海苔ですが、ちょっとおしゃれなものも登場しています。「うみべのしおのり」は、オリーブオイルとフランスの塩で仕上げた、ちょっと上品な味付け海苔。そのままではもちろん、サラダにかけても相性が抜群。素材の味を生かした塩味なので、味付け海苔が苦手という方にもおすすめです。

1枚で食べても特徴がわかりにくいという方も、食べ比べれば違いは一食瞭然! うまみの深さや食感のバリエーション、口溶け具合など、それぞれの海苔の特徴がはっきりとわかります。知るほどに海苔の美味しさに目覚め、どんどんはまってしまいそう。自分好みの1枚を探してみてはいかがでしょうか。

文: 田山康一郎

写真:八田政玄
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

バイヤー・スタイリスト / 北條理紗
伊勢丹新宿店本館地下1階シェフズセレクション勤務後、2017年4月よりプラド エピスリーに勤務。会話の中からお客さまの求めるものを探し当てられるように、日々精進しているそう。コーヒーインストラクター2級、フードコーディネーターの資格を持つ。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=シェフズセレクションにてお取扱いがございます。 

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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