2015.10.26
自社の里山で素材から作る『叶 匠壽庵』。和菓子への想いとこだわりとは
贈答品として、老若男女を問わず愛されている和菓子。
季節感のある見た目、好みの味、値段など、贈る相手やシチュエーション、使う器でもそのチョイスは変わるもの。しかし、和菓子好きなら着目すべきは「素材」です。
「近江を代表する和菓子」を作りたい、という想い
「『お客さまのお口に叶いますように』との想いから名付けられた『叶 匠壽庵』は、昭和33年に滋賀県で誕生しました。滋賀県大津市の観光課に勤務していた創業者の芝田清次が、『滋賀県の銘菓をつくるのだ』と一念発起して退職し、菓子作りの世界に飛び込んだのが創業のきっかけです」と語るのは、自社の里山を持ち、素材から一貫した和菓子作りを手掛ける叶 匠壽庵 伊勢丹新宿店の信太麻衣子店長。
和菓子で普通に勝負しては勝てない……そう感じた芝田氏は、「素材」にこだわる菓子作りに傾倒していくことになります。
「里山×和菓子」農工ひとつの菓子作りを目指して
「和菓子作りは、自然の中から学び感性を磨くこと。季節感を表現するためにお菓子の素材から作りたいと、昭和60年に63,000坪という広大な里山を拓き、自然とともに菓子作りを始めました」と信太店長。
この里山は、訪れる人に活力を汲み上げてもらいたいという思いから、「水引き」と同じ意味を持つ『寿長生の郷(すないのさと)』と名付けられた土地。自然の中にお茶室や食事処が併設され、和菓子教室や季節に応じた催しが開かれるなどし、全国からお客さまが訪れるようになったのだそう。
野の花径や梅林などを11名で管理している里山は、「自然のままで大きく手は入れず、使うものだけをいただいています」と信太店長。その言葉通り、里山では自然の谷川を利用し、山林部分はそのままに散歩道が設けられ、1年を通して約300種類にものぼる野の花が咲き誇ります。一番の見どころは、滋賀県内でも最大級といわれる梅林。約1,000本もの梅が満開になる3月には、「梅まつり」を開いています。そして、実際にお客さまが見たこの梅が、菓子作りにも使われているのです。
1粒を存分に味わう贅沢は、丁寧な梅仕事から
創業者が和菓子に合う梅を求めて全国を探し歩き、たどり着いたのが里山に植えられている『城州白梅』。梅というと紀州産の南高梅が有名ですが、城州白梅は大粒で果肉も厚く香り高いのが特徴です。この梅を、収穫してから自社の梅蔵でじっくりと寝かせます。
「梅から抽出された梅エキスをゼリー状にした『標野』は、ほのかな梅の香りと、手を加えていない自然の甘酸っぱさが口に広がるさわやかなお菓子。のどごしがよく、味もしつこくないので、食後の口直しにもピッタリです」
また、粒選りの大きな梅の実を丸ごとシロップ漬けにした『木貴子(もくきし)』は、ぷっくりとふくらんだ実にシロップが浸透し、スプーンでも崩せるほどの柔らかさ。
「通常、梅の実をシロップ漬けにするとシワが寄ってしまいますが、1粒1粒に手作業で細かい穴をあけ、シロップを浸透させます。そうすることで、ふんだんにシロップを含んだシワのない梅の実が完成するのです」
「素材にこだわったお菓子作り」を謳うショップは数あれど、里山を拓いて素材から作る和菓子店はなかなかありません。和菓子の原点「素材」を育み、自然の営みを守る。その心意気は、日本人が昔から大切にしていた美意識につながるような気がします。
里山の風景に思いを馳せながら、素材に真摯に向き合った梅のお菓子を、ぜひ食べてみてください。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=甘の味/叶 匠壽庵にてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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