2015.08.28
ライフスタイルに根ざした、神戸の新たな食文化を推進!「EAT LOCAL KOBE」
約150年前の開港より国際貿易の要として発展した神戸は、異国情緒に溢れ世界的にみても豊かな食文化を持つ港街。その神戸市、実は総面積の1/3が農村地帯であり、兵庫県最大の果樹園もあることはあまり知られていません。そんな神戸の食の魅力を再発見し、新たな文化の創出を目指したプロジェクト、「EAT LOCAL KOBE」が今年からスタートしました。
神戸市産業振興局の安原潤さん、山田隆さん、そしてクリエイティブディレクションを手がけるAKINDの岩野翼さんに話をうかがいました。
暮らしに根ざす、都市と農村をつなぐ地産地消のマーケット
今年6月、神戸市内の公園にフードトラックが並ぶ、新たなファーマーズマーケットが出現しました。そこには、地元で採れたたくさんの野菜や水産物の直売をはじめ、飲食店とのコラボによって、神戸食材をふんだんに使ったおいしそうなデリがずらり。2日間のイベントには市内からたくさんの人が集まりました。
「集客を目指した商業イベントではなく、市民の暮らしの一部になるようなマーケットにしたかったんです。たとえば、開催時間も午前中から午後2時までと、お客さんには土日のブランチを楽しんでもらいながら、農家さんにも負担をかけないような工夫をしています」
安原さんによると、神戸市が始動したプロジェクト「EAT LOCAL KOBE」の一環として開催されたこのマーケットは、「ローカルを食べる」という名の通り、食を通した新たなプラットホームを市内につくる取り組み。そこには、地産地消を推進するとともに、新たな神戸ブランドを立ち上げようとする狙いがありました。
「国内外に向けて、神戸から新たな食ブランドを提案する『食都神戸2020』の構想が昨年より始動したのをきっかけに、さまざまな試みをしています。商品を売り込むだけの食品イベントではなく、ライフスタイルとして地産地消が定着し、なおかつ感度の高い層へ神戸ブランドを発信する仕掛けを考えました」
構想を練るにあたって、海外の先行事例などを参考にしていったという安原さんや岩野さんたち。たとえばサンフランシスコの「フェリー・ビルディング・マーケットプレイス」は、フェリーの発着所の跡地を改装した大型フードコート。
「フェリー・ビルディングには100軒ほどの生産者や飲食店が集結し、地元の農産物を活用した加工品ブランドなども多数出品されています。地元のお客さんはもちろん、観光客も数多く訪れていて、ベイエリアの活性化に一役買っている。それは、今後、神戸が観光都市としてさらなる発展を目指す際のモデルになるとも考えられます。どのお店もデザイン性に優れていたのが印象的でした」
また、「おいしさの価値を伝えるためには、農家さんが直売に来るだけではなく、飲食店とのコラボレーションが不可欠」と安原さんらは語ります。出展フードには、9組の農家トラックごとに特製のデリを用意。それに、地元野菜をふんだんに使ったスープや天然酵母のパン、窯焼きのピザなど、ここでしか味わえない料理はすぐに大人気に。飲食店とのコラボ農家、飲食店、そして市民の人々がフラットに出会える場所が生まれていたそうです。
「マーケットで食べるだけでなく、帰ってからもおいしさを発見できるように、ウェブサイトでは地元食材を使ったレシピを公開しています。これが神戸市民の生活にとけ込んでいってくれたら嬉しいですね。これは農家にとって、新たな流通ルートをつくり、本当にいいものを適正価格で販売できるようになる可能性も秘めています。食を文化として高めていくには、農家と消費者、そして飲食店が一緒になって、マーケットを作っていくことが何より重要です」
市街地からわずか1時間で農村へ、山から眺める神戸の新たなイメージ
このマーケットのもうひとつの狙いは、「農村都市・神戸」のイメージを打ち出すこと。これまで、神戸市内に暮らす人々にとっても、「神戸産」の野菜や果物に出会うことがあまりなかったそう。けれど、実は市街地から1時間ほど車を走らせれば、すぐに広大な農地が見えてくるのです。
「港町という印象が強い神戸ですが、六甲山の裏側には神戸の人も知らないような農地が広がっています。そこで、『EAT LOCAL KOBE』のポスターでは、よくある港側から眺める神戸像ではなく、神戸市の北区、西区から海を見下ろすようなビジュアルを展開しました。このポスターは、はじめて知る神戸のイメージとあってか非常に好評で、入手方法についての問合せもたくさんいただきました」
最近では、こうした地の利を活かし、ファームビジットのイベントも展開されています。いわゆる観光用の農園ではなく、実際の生産現場を訪れ、収穫物を調理して食べることまでを取り入れたプログラム。市内を出発して、午前中の間に体験できてしまうことが利点だと安原さんは語ります。
もともと、交易港として栄えた神戸市には、洋食に代表されるように、世界各国のさまざまな食文化が存在します。今後は地元で生産されていた食材だけでなく海外展開も視野に入れており、すでに香港の大きなフードイベントに出展するなど、新たな神戸ブランドの発信に注力していくそうです。
いま始まったばかりの神戸ローカルフードカルチャー、今後の展開にも期待がふくらみます。ぜひ神戸を訪れた際には、新たな「神戸産」を探しに行ってはいかがでしょう?
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