食品フロアスタッフが本気で勧める、あの店の「コレおいしい！」#6

日頃、三越伊勢丹の食品フロアで、実際に店頭に立っているスタッフたち。美食の戦場、美味の密林とでもいうべき空間で、お互いに最上の味をお客さまに届けるべく、切磋琢磨を続けています。そんな彼らが、「あえて」他店の商品からオススメしたい「コレおいしい！」を紹介する、この連載。強者は強者を知るように、本当においしいものを知っているのは、彼らなのです。

第6回：ワールドミートバル ニッシン 長谷川英子さん

生ハムの原木がずらりと並び、ショーケースにはソーセージやハムがぎっしり！　今回の紹介者は、活気ある声が飛び交う「フレッシュマーケット（生鮮食品）」の玄関口に位置する＜ワールド ミート バル ニッシン＞の長谷川英子さんです。この道20年以上という彼女の接客は、想像力を刺激するグルメの『ショー』といったところ。

「香りがふわっふわっ！っと……」「お肉の旨みがギュギュッ……」「脂の甘みが口の中でジュワ〜……」、とろけそうな長谷川さんの表情を見るだけで、お腹が減ってきそう。手振り身振りを交え、全身を使って商品の魅力を伝えてくれます。本連載の第5回で仙太郎 伊勢丹新宿本店の佐藤さんが「前を通るたびにおいしそうで、ついつい買ってしまいます」と＜ワールド ミート バル ニッシン＞の「ビーフ パストラミ」を紹介してくれたのも納得です。

おいしいものが大好きで、食品フロアを歩くだけでワクワクするという長谷川さん。今回はそんな彼女を虜にした3品を、自分のお店の商品のように熱心に紹介してもらいました。隠れたテーマは「おいしい匂い」。どれもとてもおいしそうなので、夜中に読む方はご注意を。

長谷川さんのおすすめ①：
香ばしい匂いがジュワ〜と…「伊藤和四五郎商店　鶏三和『香草美水鶏　朝挽き』（こうそうめいすいどり）」

1品目はフレッシュマーケット内の＜伊藤和四五郎商店 鶏三和＞から、2015年より新たに取り扱いをはじめた、新商品です。

「鶏三和のスタイリストさんから、『朝挽きのお肉は全然違うから、ぜひ食べてみて』と教えていただいたんです。弾力があって、お肉自体の味もしっかりしています。特別なブランド鶏ではないのですが、ワンランク上のおいしさに感動しました」

おいしいものに詳しいスタイリスト間の情報交換、なんとも気になります。

「鶏三和のスタイリストさん曰く、本当においしいお肉はシンプルな調理法がベストなんですって。味つけは軽く塩胡椒だけ。フライパンに先に油を敷いて、火を着けてゆっくり焼いて、色が変わってきたらひっくり返す。あ、あまり触らないでくださいね。すると、お肉の焼ける香ばしい匂いがジューっと昇ってきて……これが本当にいい香り！　簡単なのにすごくおいしいんです」

目を閉じれば、脳裏に香ばしい焼き音と匂いが浮かび……よだれが出てきそうです。

長谷川さんのおすすめ②：
芳醇な夏の香りが最高！「長野県富士見町『赤いルバーブ』」

続いては＜ワールド ミート バル ニッシン＞のお隣にある野菜コーナーで見つけた「赤いルバーブ」。普段あまり馴染みのない方が少なくないかもしれませんが、茎をジャムなどにして食べる野菜の一種です。

「もともとは緑色をした普通のルバーブが好きで、軽井沢で見つけるたびに買ってジャムにしていました。そんな中、昨年の夏にお隣のコーナーで見つけたのがこの真っ赤なルバーブ。ずっと気になってしまって、チラチラ見ては『あ〜売れて減ってきている！』と思っていました（笑）」

勤務後、急いでルバーブを購入した長谷川さんは、早速ジャムにしたといいます。

「作り方はとっても簡単なんですよ。1cmの長さに切ったルバーブを砂糖と一緒にお鍋でグツグツするだけなのですが、この『赤いルバーブ』は煮詰める時の匂いが最高なんです。爽やかな酸味と芳醇な匂いがふわぁって……他のルバーブとはまるで別物。赤色できれいだし、味もおいしい、すっかり気に入りました。実は今年もすでにジャムをひと瓶作りましたよ」

トーストに塗ったり、ヨーグルトに加えたり、使い方は自由自在。毎日を豊かにする夏の風物詩です。

長谷川さんのおすすめ③：
甘い香りが幸せを呼ぶ「ノワ・ドゥ・ブール『カヌレ』」

3品目は、焼きたて菓子で人気の＜ノワ・ドゥ・ブール＞の「カヌレ」です。なんとこの商品は、接客中にお客さまから教えてもらったものだそうです。

「＜ノワ・ドゥ・ブール＞といえば焼きたての『フィナンシェ』が定番ですよね。だけどある日、お店にいらっしゃったお客さまから『カヌレ』も絶品だと教えていただいたんです。少し恥ずかしいのですが、おいしいものの情報や口コミは、スタイリストだけでなくお客さまからもよく聞くんですよ。＜ノワ・ドゥ・ブール＞はお店の前を通るだけで焼き菓子の匂いに包まれるのに、『カヌレ』はそこにキャラメルのような甘い匂いも加わって……いうならば『幸せな匂い』でしょうか。心から『買ってよかった』と思えました」

長谷川さんが『カヌレ』を食べるのは、忙しい仕事の後の自分へのご褒美として。「夜だけど……買っちゃおう！」とお店に走るのだとか。

「何度食べても、やっぱりおいしいですよね！　お酒が効いていて、ちょっと食べて『おいしいな〜』、ちょっと食べて『おいしいな〜』って（笑）。ひと口食べるたび、リッチな気分になれます」

幸せなひと時は、明日への活力。お酒との相性もよさそうです。

個性豊かな匂いで長谷川さんを魅了するこれらの3品。知識や見た目ももちろんですが、自分の嗅覚を信じて食品フロアを歩いてみると、「あ、これおいしそう！」という、新しい出会いがあるかもしれません。

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