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2022.12.29

お酒

【プロが解説】白く濁った「どぶろく」と「にごり酒」の違い。飲みやすいおすすめ3選!

どぶろく集合

白く濁った色をした「どぶろく」や「にごり酒」が、日本酒を飲み慣れない人から「お米のまろやかな味わいが感じられて飲みやすい!」と注目が集まっています。

甘酒のような白い見た目から「どろっとした甘いお酒?」とイメージするかもしれませんが、実はさらっとした口当たりですっきり辛口なものや、ヨーグルトのようなまろやかな酸味のもの、アルコール度数が低いものなど、さまざまな味わいがあるのです。

そこで今回は、伊勢丹新宿店の和酒担当 吉澤拓也さんに、そもそも「どぶろく」と「にごり酒」の違いや特徴など、基本を教えてもらいました。さらに吉澤さんが「実は、冬のグルメと抜群に相性がいいんです!」と熱く語る、初心者や女性にもおすすすめ銘柄を教えてもらったので、最後までお見逃しなく。

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どぶろくとにごり酒の違いは製造工程にあり! 醪の澱を残して濾すと「にごり酒」、醪を濾さないと「どぶろく」に

にごり酒イメージ

「どぶろく」と「にごり酒」はどちらも同じく白く濁った色をしています。その違いは、製造方法の「濾す(こす)」工程があるかないかです。

そもそも日本酒の原材料は、蒸し米、麹、酵母(酒母とも)、水(仕込み水とも)の4つ。製造方法は、この4つの原材料を合わせて発酵させた「醪(もろみ)」と呼ばれるものを、布などでしぼって濾す(上槽とも)ことで液体と固形成分に分けます。その液体が日本酒、固形成分が酒粕です。

ただし、醪を濾したあとの液体には、「澱(おり)」と呼ばれる濾しきれなかった微細な固形成分が残っています。この澱を残したままにしたものが「にごり酒」、澱をしっかり除いたものが「清酒」。そして、そもそも濾す工程をしないものが「どぶろく」と分類されます。

▼「濾す」工程の違い

どぶろく 醪(もろみ)を濾さない。原材料がそのまま残っているため、白い濁りが濃く、米粒感がありとろりとした口当たり。なめらかな口当たりにするため、ミキサーにかける商品もある。
にごり酒 醪(もろみ)を濾す。濾しきれない澱(おり)は残したままにするので、白く濁る。澱をどのくらい残すかで、白い濁り具合や口当たりに差が出る。
一般的な清酒 醪(もろみ)を濾す。濾しきれない澱(おり)も取り除く。一般的に日本酒とイメージされる透明な色のもの。

「どぶろくは原材料そのままの醪を濾していない分、にごり酒や清酒よりもトロリとした口当たりで、お米の甘みや旨みが強く感じられる味わいです。にごり酒は澱が残された分、清酒に比べて口あたりがクリーミー。澱を多く残した順に『あらごし』>『うすにごり』>『おりがらみ』と呼び方が異なり、白い濁り具合はもちろん、お米らしい香りや味わいに個性が出てきます」(吉澤さん)

ちなみに「もろみ」と聞くと、生のきゅうりにつけて食べる「もろみ味噌」をイメージするかもしれませんが、あちらはしょうゆやみそなど調味料のもろみ(諸味)のことを指すので、日本酒づくりの「醪(もろみ)」とは別物と考えてください。

実はどぶろくは「日本酒」ではないが「にごり酒」の一種ではある!?

どぶろくを注ぐ様子

「実は、日本酒は酒税法で『醪を濾したもの』と定義づけられているので、にごり酒は法律上『清酒(日本酒)』に属するのですが、どぶろくは醪を濾さないので『その他の醸造酒』に分類されます。このため、両者は製造のために必要な免許が異なるんです」(吉澤さん)

どぶろくが法律上は日本酒には当たらないなんて、驚きました!

「酒税法としては澱を残して白く濁った清酒(日本酒)とどぶろくは区別されていますが、一般的に「にごり酒」というのは『白濁したお酒(おもに日本酒)』のことをいいます。つまり、お酒の白濁の強弱はさまざまですが、『にごり酒』はどぶろくやマッコリも含め、白濁しているお酒すべてを指すといえるでしょう」(吉澤さん)

ちなみに、どぶろくと同じく白く濁っている「甘酒」と「マッコリ」の違いは、原材料とお酒であるか否かにあります。「甘酒」は原材料が米と麹だけ。これを発酵させてつくりますが、アルコールを生み出す酵母が入っていないため、ノンアルコールの甘味飲料に含まれます(ただし、酒粕をお湯で溶き砂糖を加えて作った甘酒は、アルコールを含む)。

「マッコリ」は、どぶろくと同じような原材料と工程を経てつくるお酒ですが、原材料には米以外にも麦、小麦粉、じゃが芋、さつま芋、とうもろこしなどを使っているのが特徴です。

海外からも注目! ハイクオリティーなどぶろくが生まれる「どぶろく特区」も

そんなどぶろくとにごり酒は、今改めて注目されているお酒だそうです。

「お米の味わいをダイレクトに感じられるのがにごり酒のおもしろさです。とくに岩手県遠野市は2003年に『どぶろく特区(※注釈)』を全国で初めて創設したことでも話題になり、伊勢丹新宿店では岩手県遠野市の<民宿とおの>が造る『とおのどぶろく』を限定販売しております(※不定期入荷)。同社では田んぼ作りから徹底的にこだわり、高品質な自社栽培米を全量どぶろくに使用しています。ほかでは真似することのできない田んぼ作り(=米栽培の哲学)を行なっているため、酒業界内でも注目を浴び、研究のため見学に訪れる蔵元生産者も多いです。原料米の質がとても重要になることがわかる一例ですね」(吉澤さん)

海外のレストランでも扱われ、東京ではどぶろく専門店もできるなど、今後の盛り上がりにもぜひ期待したいですね。どぶろくとにごり酒について、詳しく教えてくれた吉澤さん。話を聞けば聞くほど、試してみたくなりました。

※どぶろく特区…構造改革特別区域法に基づき、農家民宿、農園レストランなどを営む特定農業者が、自ら生産した米または果実酒を原料としたにごり酒(いわゆる「どぶろく」)を製造することができる地域(参考:国税庁ホームページ)

日本酒のプロがおすすめ! 初心者でも飲みやすい、どぶろく&にごり酒3選

それではお待ちかね、吉澤さんがビギナーや女性におすすめする、飲みやすいどぶろく&にごり酒を、3銘柄をご紹介します!

「どぶろくやにごり酒は、一般的な透き通った日本酒(清酒)よりも『濃い』イメージがありますが、お米の味わいがしっかり感じられる分、清酒に負けないほど和食にぴったり。とくにお正月の料理や鍋料理など、冬のグルメに幅広く合わせることができるんです」(吉澤さん)

【どぶろく】低アルコールで飲みやすい! ヨーグルトのような甘酸っぱさ<仙醸>

<仙醸>黒松仙醸 どぶろく

<仙醸>黒松仙醸 どぶろく(600ml) 1,430円(税込) ※販売期間:通年

<仙醸(せんじょう)>は長野県南部、南アルプスと中央アルプスに囲まれた伊那谷の地酒蔵で、山からの雪解け水を酒造りに利用した、やわらかい口当たりのお酒が特徴です。どぶろくも人気が高く、フルーツを使用したどぶろくシリーズも手掛けています。

アルコール度数6%と、低アルコールな点も魅力のどぶろく。香りからはほんのりとお米らしさを感じますが、味わいは甘酸っぱく、フルーツジュースやヨーグルトのような親しみやすさがあります。低アルコールかつクリーミーな口あたりで、思わずごくごく飲み進めてしまいそう。

「どぶろくの入門としておすすめしたい一本。飲まれる際はぜひ冷やしてください。トマトを使用したイタリアンや冷製サラダなどの洋食と相性が良いですし、食前酒や食後のデザート酒としてもお楽しみいただけます」(吉澤さん)

<株式会社 仙醸>黒松仙醸 どぶろく

※取扱い:伊勢丹新宿店 本館地下1階 粋の座・和酒

 

【にごり酒(あらごし)】ほっくりとしたお米の甘みで濃厚な飲み口<南部酒造場>

<南部酒造場>花垣 純米にごり酒

<南部酒造場>花垣 純米にごり(720ml) 1,375円(税込) ※販売期間:通年

福井県東部に位置する、江戸時代創業の<南部酒造場>。旨みやコクがしっかりとした酒造りを得意とする蔵による、ほっくりとしたお米の甘みが感じられるにごり酒。濃厚な飲み口ながら、きれいな酸味がのっているので、あと味はすっきりとクリアです。

「澱を多く残したあらごしなので、にごり酒の醍醐味である濃厚さを感じていただけると思います。温度帯は常温からぬる燗がおすすめ。魚の煮つけなど、濃い味の食事と合わせるとおいしいですよ」(吉澤さん)

<南部酒造場>花垣 純米にごり

※取扱い:伊勢丹新宿店 本館地下1階 粋の座・和酒

 

【にごり酒(うすにごり)】お米本来の風味、旨みとキレのバランスが◎ <旭日酒造>

<島根/旭日酒造>十旭日 純米吟醸 改良雄町60 にごり

<旭日酒造>十旭日 純米吟醸 改良雄町60 にごり(720ml) 1,650円(税込) ※販売期間:通年

少量生産で手造りにこだわる、島根県の酒蔵<旭日酒造>の造るお酒は、円熟味があり、ほっと落ち着く味わいが特徴的で、コアなファンを集めています。甘口が多いにごり酒のなかでも辛口のタイプで、ほどよい旨みとのバランスが絶妙です。 

「ほどよい旨みとキレがあり、炊き立てのご飯のような風味も堪能していただけます。常温から熱燗までおいしくいただけますが、イチオシはぬる燗。刺身など、和食全般と相性の良いお酒です」(吉澤さん)

<旭日酒造>十旭日 純米吟醸 改良雄町60 にごり

※取扱い:伊勢丹新宿店 本館地下1階 粋の座・和酒

 

透明の日本酒とはひと味違った魅力が楽しめるどぶろく&にごり酒。お燗にしておいしい銘柄も多いので、冬の味覚とぜひ合わせてみてください!

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写真:柿崎真子(画像2枚目以外)
文:木村咲貴

※20歳未満の方の飲酒は法律で禁止されています。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店 本館地下1階 粋の座・和酒にてお取り扱いがございます。

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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