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2015.07.17

大嶺酒造の日本酒「Ohmine」の物語~常識を飛び越えて世界に羽ばたく

山口県の老舗、大嶺酒造のスタイリッシュなボトルが特徴の日本酒『Ohmine』の画像

モノトーンのグラフィックがモダンで印象的な『Ohmine』は、江戸時代より続く老舗、山口県美祢(みね)市の大嶺酒造がまったく新しい発想で作った日本酒。2010年の発売以来、国内はもとより海外からもラブコールが絶えず、瞬く間に世界7ヵ国で展開、より一層注目を集めています。いったい、このお酒の何が人々の心を捉えて離さないのでしょうか。大嶺酒造を引き継いだ『Ohmine』の立役者、秋山剛志さんにお話を伺いました。

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アルコール14度という、日本酒のタブー領域

『Ohmine』が持つ魅力のひとつは「まるで白桃のよう」と評されるほどのフルーティなみずみずしさ。日本酒好きでなくともハマる人が続出している芳醇な味は、どのように作られているのでしょうか。

「このお酒はアルコール度数をわざと通常より低めの14度に設定しています。日本酒は優れた発酵技術を持ち、ビールなら5度、ワインなら12度程度しか出せないところを、16〜17度まで上げることができます。つまり、度数が高いことは日本酒にとってひとつの存在意義のようなもの。だから14度で発酵を止めてしまう酒というのはかなり異端なのです(笑)。それでもこの度数にこだわっているのは、うまみのバランスが上品だから。お米のまろやかさが前面に出て、食事とのマリアージュを楽しむことができる繊細な味に仕上がります」

さらに、秋山さんがこだわるのは地元の契約農家とともに作った最高級酒米「山田錦」と、神様の水として知られる「秋吉台・弁天の湧水」のコンビネーション。特に境内から湧き出る「弁天の湧水」の青く透き通る水は、日本酒に合う軟水でありながらなぜかカルシウムの数値だけが高いという特殊なもの。このカルシウムが酵母の働きをサポートしてくれるため、低温でも発酵がスムーズに進むのだとか。「水を別のものに変えてしまうと、同じ製法であっても『Ohmine』の味は絶対に再現できません」

大嶺酒造「Ohmine」を生み出す、秋吉台・弁天の湧水の画像

秋吉台・弁天の湧水の青く澄んだ水、この水でしかOhmineの味にはならない

世界視点で見た「日本の魅力」をデザインに

「日本酒の既成概念にとらわれない、『Ohmine』独自の世界観を作り上げたかった」と話す秋山さん。その想いはパッケージにも込められています。真っ白なボトルにアブストラクトな墨色のシルエットが施されたデザインは、一度見たら忘れられないインパクトを持っているのではないでしょうか。

「日本酒のラベルは和紙×漢字の組み合わせが圧倒的に多いため、どれも似ていて記憶に残らない。『Ohmine』は、もっとソリッドな、視覚的にアプローチできるデザインを求めていました。結果、スウェーデンのストックホルム・デザイン・ラボにお願いすることになったんです。理由はストックホルム美術館で、景観に溶け込む彼らのデザインに衝撃を受けたこと、そして彼らは日本の仕事もしているから、この国のことがよく見えている。あえて外国人のフィルターを通したほうが日本の良い部分が抽出されるのでは、という期待もありました。

漢字を使わない表現の方向性や、日本酒の製法や歴史などについて1年近くディスカッションを重ねて、結果シンプルにお米のフォルムを配置したデザインになりました。純米大吟醸は1粒、純米吟醸は2粒、純米酒は3粒と、精米具合によって3種のデザインに仕上がっています。日本酒らしさを出しつつ、海外の人にも日本の人にもアプローチできるものになったと思いますね。『Ohmine』という名前でなくても『あのお米のやつでしょ?』みたいに覚えてもらえればいいのかなって(笑)」

国境やジャンルといった垣根は気にしない

ファッションブランドとのコラボレーションなども展開する、大嶺酒造「Ohmine」の画像

飲みやすいまろやかな味とスタイリッシュなパッケージは、世界中で瞬く間に受け入れられていきます。3つ星レストランやアパレルブランドのパーティなどで評判に。さらにはスイスで開かれた「ダボス会議2013」の折に、日本政府主催の晩さん会にて各国首脳に振る舞われるなど、知名度を上げていったのです。ストリート系・ハイエンド系ファッションブランドとのコラボレーションなども展開しながら、現在ではアジアを中心にアメリカやスウェーデンなど7ヵ国で販売されるようになりました。保守的な面も持つ日本酒というジャンルでは異例のことです。

「決して、世界に日本酒を広めよう! みたいに気負っているわけではないんです。香港、タイ、NYは大阪や東京と並列にあるマーケットと考えています。我々は日本酒業界では新参者なので(笑)、独自にお客さまを開拓していく必要があるというだけ。ただ『Ohmine』の世界観に共鳴してくれる人に対してアプローチしていきたいというのはありまして、文化的なアンテナの高い世界で飲まれることを目指しています。日本酒のプレミアムブランドとして、ボーダレスに展開していきたいですね」

『Ohmine』の使命は「まちづくり」

そんなグローバルな視点を持つ秋山さんですが、そもそもなぜ『Ohmine』を立ち上げるに至ったのでしょうか。

Ohmineの水が生まれる秋吉台の風景画像

Ohmineの水が生まれる秋吉台の風景。真っ白なボトルを連想する特異な光景

「20代はほぼNYで過ごしていたのですが、日本食や日本酒のブームを目の当たりにして、市場に可能性を感じていました。また、ファーマーズマーケットが定期的に開かれていたり、オーガニックスーパーも当たり前にある。ローカルを大事にする、食について考えさせられる環境だったんですね。

また僕は大学で『シビックプライド』を学んでいました。いかに自分の街に対して愛着やプライドを持って暮らすかという、ソフト面からの都市デザインです。故郷の山口県美祢市は豊かな自然があるものの、働き口としては農業、建設業、公務員くらいしかない。次世代につながる産業を見出すために、農業とリンクさせた何かを手がけたいとずっと思っていました。そこに酒造を引き継ぐ話がハマったんです。農業でも、ただお米を栽培して卸して終了ではなくて、自分の作ったお米が地元の名前を冠したお酒になって、東京や海外で飲まれているってなると、やっぱり作りがいも違ってきます。すると自分の住んでいる場所に対するプライドも生まれてきます。『Ohmine』を通して最もやりたいことは、そうした意識改革も含めた場所の活性化、まちづくりなんです」

デビューから5年かけて、地元の人たちからも愛されるようになった『Ohmine』は、来年にかけて新商品の予定もあるそうです。まだまだ壮大なシナリオの序章、今後の展開からも目が離せません。

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大嶺酒造ファウンダー、秋山剛志さんの画像

秋山剛志/大嶺酒造ファウンダー

2004年、ニューヨークのデザイン会社に勤務。帰国後の2010年に50年以上休止状態だった大嶺酒造を復活させ日本酒ブランド「Ohmine」を発表。白桃の様な芳醇な香りと甘さが特徴的なOhmineは海外セレブを中心に人気爆発、現在世界7カ国で展開中。その他にも多数のブランディングプロジェクトを手がけ、大学・専門学校の講師、雑誌記事やコラムの執筆をおこなうなど多岐にわたる分野で活動中。

文: AYANA

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品、『純米大吟醸 720ml』 5,130円(税込)(※一粒デザインのもの)は、伊勢丹新宿店本館地下1階=粋の座/和酒にてお取り扱いがございます。

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