2021.08.18
【銀座シェフ直伝】お祝いの食卓に! ローストビーフ&秘伝のたれの作り方。しっとりジューシーにする火入れに注目
どんなハレの席でも食卓にパッと華を添えることができるごちそう、ローストビーフ。巷にはお手軽な時短レシピがあふれていますが、しっとりとした絶妙な火入れ加減に仕上げるのはなかなか難しいもの。切り分けてみたら中心が生の状態だった、加熱しすぎてパサついてしまった…など失敗の経験を持つ人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、プロの火入れのテクニックを学ぶべく、日本料理店<銀座 六雁(むつかり)>の秋山能久シェフに本格的なローストビーフの作り方を教えていただきました。オーブンは使わずフライパンで作れます!
ポイントは湯せんでの低温調理。<銀座 六雁>では低温調理器を駆使していますが、実はザルや温度計、ファスナー付き保存袋を使えば、家庭でも再現できるのだそう。
感覚に頼らず、温度と時間で計るプロの方法を見習えば、「中までちゃんと火が通ったかな?」と心配せずとも大丈夫。おせちにも活躍するローストビーフのレシピは、一度覚えれば一生ものです。
さらに<銀座 六雁>で人気の、ローストビーフに添えるオリジナルソース(たれ)のレシピも大公開するので、最後までお見逃しなく!
【ローストビーフのポイント】香ばしく、ジューシーに仕上げるには、「温度管理」と「焼きつけのタイミング」がカギ!
<銀座 六雁>が目指すのは、「外は香ばしく、中はしっとりジューシー」なローストビーフ。そのためには、「火入れの温度管理」と「焼きつけのタイミング」が最も重要です。それぞれ押さえておきたいポイントについて、詳しく見ていきましょう。
ポイント① 湯せんで55℃、3時間キープ(牛肉300gの場合)で絶妙な火入れ具合に
ローストビーフの加熱方法は、ご家庭にある鍋、ザル、調理用の温度計を使った湯せんで低温調理を行います。
湯せんの温度は55℃。その温度をキープしたまま、肉の大きさに合わせた時間(今回は牛肉約300g/3時間)を設定し、加熱することで、中心まで火が入りつつもしっとりジューシーな仕上がりに。
これは肉全体が過熱されるギリギリの温度設定。加熱時間内に±2~3℃程度の振れ幅が出るのは問題ありませんが、温度が低すぎても高すぎても、加熱時間が短すぎても長すぎてもNGです。中心まで火が入っていなかったり、逆に火が入り過ぎて肉が固くなったりしてしまうので、細心の注意を払いましょう。
なお、<銀座 六雁>ではこの火入れは低温調理器を使って管理しています。ご家庭でも低温調理器があれば、より簡単に温度管理ができるので便利です。または、55℃に温度調整ができて300gの塊肉が入る、大きめサイズのヨーグルトメーカーでもいいでしょう。
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ポイント② 湯せんで加熱したあとに、表面を焼きつけて仕上げることで香ばしさをプラス!
肉を湯せんで火入れしたあとに、表面をさっと焼きつける手順で作ることで、中はしっとり、外は香ばしいローストビーフに仕上がります。ちなみに逆の手順で、肉の表面を焼きかためて肉汁を閉じ込めたあとに、湯せんで火入れを行う、というレシピを見かけることがありますが、肉の中から水分が出ようとして肉質がぐちゃっとなってしまい、せっかく焼きつけた香ばしさが台無しになってしまうので、おすすめしません。
ポイント③ 火入れは短時間にしたいから、家庭で作るなら肉量は300gがおすすめ!
今回のレシピでは、家庭で作っても火の通りに失敗が少ない肉量、やや小ぶりな約300gでご紹介します。肉量を増やす場合は、その分湯せん時間を長く設定が必要です(500~600gの場合は4時間が目安)。ただし、低温調理器がご家庭にない場合は、加熱時間が長くなればなるほど温度管理が難しくなるため、まずは扱いやすい肉量の約300gで作ってみるとよいでしょう。
低温調理は難しいイメージがありますが、温度と時間、肉の分量をしっかり守れば、工程自体はシンプルなんですね! あらかじめ火入れが完了していれば、あとは表面に焼き色をつけるだけなので、仕上げの段階で火の通りに神経質にならずにすむのもうれしいポイントです。
それでは、実際にレシピを見ていきましょう。
<銀座 六雁>料理長が伝授! ローストビーフの作り方
<材料>(作りやすい分量)
- 国産牛もも肉(塊)…約300g
※イチボ、ランプ、ラムシンなど脂身の少ない赤身肉がおすすめ - 塩…1.5g(小さじ1/4)
- オリーブオイル…適量
<作り方>
1. 牛肉に塩をふる
「牛肉の重量に対して0.5%の分量の塩で下味をつけます。高い位置からふり塩をし、両面だけでなく側面にもまんべんなくふりましょう。塩を手ですり込む必要はありません。塩はあらかじめフライパンで炒ると、水分が飛んでサラサラになり、上手くふることができます。このように薄くふり塩した状態を、料理人は『淡くはかない初雪のように』と表現します」
2. 牛肉を保存袋に入れて真空状態にし、冷蔵庫に一晩おく
チャック付き保存袋に牛肉を入れて、端にストローをさす。空気を抜いて口を閉じ、ストローから空気を吸って保存袋の中を真空状態に近づけたら、ストローを抜いて、素早くチャックをしっかり閉じる(※)。そのまま冷蔵庫に入れて一晩おく。
※このほか空気を抜く方法は、保存袋の口を1cmほど残してチャックを閉め、深めのボウルや鍋に水をはり、保存袋に入った肉をゆっくり沈めると、水圧で空気が抜ける。最後にチャックを完全に閉めるとよい(編集部調べ)。
「塩でマリネした状態で冷蔵庫で寝かせることで、牛肉にしっかり味が入ります」
真空パック機を使うと、よりしっかり真空状態に
<銀座 六雁>では真空パック機を使って、しっかりとした真空状態にしています。ご家庭に真空パック機があれば、今回のような肉や魚などを低温調理するときに活躍するのはもちろん、野菜や果物などの生鮮の保存にも使えるので、手元にひとつあると便利です。
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3. 湯せんを用意し、55℃に設定する
2の牛肉を冷蔵庫から出し、30分ほどおいて室温に戻しておく。牛肉を入れて全体が水にかぶる大きさの鍋に水をたっぷり入れ、ザルを重ねる。温度計をレードル(お玉)に輪ゴムで固定したものを入れる。火にかけ55℃になるまで温める。
「鍋にザルを重ねることで、牛肉を入れた保存袋が直接鍋底に当たるのを防ぎます。また温度計はそのまま鍋に入れると浮いてしまうので、レードル(お玉)に固定します。そのとき、温度計の先端がレードルに触れるとお湯の温度が正確に計れないので、レードルから離して固定するようにしましょう」
4. 室温に戻しておいた牛肉を3時間湯せんにかける
室温に戻した牛肉を保存袋のまま、55℃に温めた湯に入れ、温度計を固定したレードル(お玉)をのせて重石代わりにする。火加減を調整しながら55℃をキープして3時間湯せんにかける。
「ここで大事なのは55℃という温度をキープすること。こまめに温度計をチェックし、温度が上がり過ぎていたら水を足したり、火を一定時間消したりして調整するようにしましょう。
また、同じ300gの肉でも、肉質や厚みの違い、国産か外国産の違いによって火の入り方が異なります。厚みの薄い肉を使う場合、2時間くらい経ったら、途中で何度か肉の様子を確認し、指で押してハリ(弾力)があれば、湯せんからおろすといいでしょう」
低温調理器を使えば、温度管理も簡単!
ローストビーフの火入れは温度管理が要。こまめに温度を確認するのは手間、という人は、低温調理器を使用するといいでしょう。鍋などにセットすれば自動で温度管理をしてくれるので、放ったらかしでも大丈夫。湯せんの温度を確実にキープし、失敗することなく肉料理を仕上げることができます。
5. 湯せんから取り出して状態を確認し、30分ほど休ませる
3時間経ったら湯せんから取り出し、牛肉を指で押してみてハリ(弾力)があるか確認する。
「肉に火が入ったかどうかの判断は、色味と弾力が目安になります。全体が赤茶色になり、指で肉を押したときにグニャッとした生っぽい感触がなく、しっかりハリ(弾力)があれば、火が通っている証拠です」
火が通っているようなら、ペーパータオルに包み、30分ほど室温に置く。すぐに食べない場合は、チャック付き保存袋に入れて真空状態にし(または真空パックし)、冷蔵庫で保存する。
6. 食べる直前に、フライパンにオリーブオイルを強めの中火で熱し、牛肉を入れて全面を焼く
フライパンにオリーブオイルを強めの中火にかけ、しっかり熱し(鉄製フライパンなら煙が立つ直前まで)、牛肉を入れてトングで押さえながら一面1〜2分ずつ焼いて、全体に焼き色をつける。
「5の段階で、すでに牛肉の中まで火が通っています。ここでは表面に香ばしく焼き色をつけることが目的なので、強めの中火の火加減で行います。牛肉の側面を焼くときは、フライパンの端に寄せて鍋肌に押し当てて、焼き色をつけるといいでしょう。牛肉の表面が写真のような焼き色になればOKです」
7. 取り出して余分な油を拭き取る
全体にきれいな焼き色がついたら牛肉を取り出し、ペーパータオルで表面の余分な油をふき取る。
「焼きつけは、食べる直前に行うと香ばしい状態でいただけます。油をふき取ったらすぐにカットしてOKです」
【ローストビーフの保存方法】
でき上がったローストビーフをすぐに食べない場合は、塊の状態でラップにぴったりとくるみ、冷蔵庫で3日間ほど保存可能。
さらに日持ちさせたい場合は、作り方5の火入れが終わったあと、真空状態のまま冷蔵庫に入れれば、1週間程度保存できます。食べるときに焼きつけ、香ばしく仕上げるとよいでしょう。
8. 食べる直前に、好みの厚さに切り分ける
「厚さは好みでよいですが、2~3mm程度に切ると食べやすいでしょう。肉はよく研いだ包丁で切るようにしましょう。刺身を切る要領と同じように、包丁の刃元を牛肉に当て、手前にすーっと引いて1切れを1回で切り終えます。包丁を前後に動かしながら切ると断面が凸凹になってしまいます」
今回は花びらのように重ねて盛り付けることを想定し、薄めにカット。中心までムラのない美しいロゼ色の仕上がりに! ローストビーフと相性抜群の<銀座 六雁>オリジナルソース(たれ)をかけて完成です。ソースのレシピは記事の最後にご紹介します。
【実食】甘いしょうゆソースが合う! 完璧な火入れのローストビーフはしっとり、ジューシー
断面が美しいロゼ色のローストビーフ。ひと口食べると、そのやわらかさにびっくり! ローストビーフの端切れまで一切パサつくことなく、どこを食べてもしっとりとジューシーです。これがプロの技術なんだと感服します。
そして<銀座 六雁>オリジナルの手作りソースをかけてみると、牛肉がフルーティで甘いしょうゆのコクに包まれて、肉のうまみを抜群に引き立ててくれます!
これならクリスマスやお正月などハレの日の食卓にぴったりですね。おもてなし料理としても、自信を持ってふるまえそう! プロの技術が光るローストビーフ。ぜひ、試してみてください。
香味野菜とフルーツたっぷり! ローストビーフの<銀座 六雁>オリジナルソース(たれ)レシピ
<銀座 六雁>のお店でも提供されている、香味野菜とフルーツをふんだんに使ったしょうゆベースのソース(たれ)です。ポイントはりんごとにんじんを皮ごとすりおろすこと! 野菜やフルーツの皮は栄養豊富で旨みが強く、皮ごとすりおろせば、余すことなく活用できます。
ローストビーフなど肉料理以外に、魚料理のソース、麺料理のたれ、サラダのドレッシングとしても使える万能ソースです。だしを加えていないので日持ちもします。ぜひ多めに作ってストックするのがおすすめ!
「お店でお客様にローストビーフを提供するときは、このソースにすだち、わさびを添えることもあります。甘めのソースなので、酸味や辛みがほどよいアクセントになりますよ」
<材料>(作りやすい分量・約900ml)
- りんご…1/2個
- にんじん…1/2本
- 玉ねぎ…1/2個
- にんにく…1/2かけ
- 濃口しょうゆ…325ml
- 薄口しょうゆ…25ml
- みりん…350ml
- 酒…350ml
- 上白糖…35g(大さじ4弱)
※上記は長期保存を想定した多めの分量です。ローストビーフ用だけに作るなら、上記の半量で作ってもいいでしょう
<作り方>
1. りんご、にんじんは皮ごと、玉ねぎ、にんにくは皮をむき、すべてすりおろす。
2. 鍋にすべての材料を入れ、中火にかける。煮立ったらアクをすくい、ときどき混ぜながら20〜30分煮る。
全体の量が2割ほど減って、写真のようにとろみが出るまで煮詰めたらソースの完成。
【オリジナルソースの保存方法】
煮沸消毒した保存容器に入れ、冷蔵庫で2〜3か月保存可能。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、三越伊勢丹オンラインストアにてお取扱いがございます。
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