2015.06.13
世界をつなげる「ハラール食」は、おいしく、安全、そして身近でした
近年日本で暮らすムスリムと呼ばれるイスラム教徒が増えています。2008年に行われた調査によれば、およそ20万人が暮らしており、現在では40万人に達しているとも。加えて、日本を旅行で訪れるムスリムは年間50万人ほど。イスラム教徒が中心の親日国も多く、その存在はどんどん身近になっています。
しかしながら、イスラム教の戒律に則り生活するムスリムにとって、日本での滞在はすべてがスムーズというわけにはいきません。中でも気を使うのが食事。なぜなら彼らは「ハラール」と呼ばれるイスラム法で合法なものを口にする必要があるから。いったい「ハラール食」とはなのでしょうか? 実は多くの日本人がイメージするほど制限があるわけではなく、その食文化は健康的かつ多様性に満ちているのです。ハラール対応のメニューが豊富な、浅草『セカイカフェ』の店長・佐藤亜美さんに聞きました。
重要なのは「豚」「アルコール」が禁忌
世界中から観光客の集まる浅草で、ムスリムの方だけでなく、ベジタリアンやアレルギーの方も安心して食事を楽しめる、セカイカフェ。佐藤さんによると、ハラール食の決まりとして重要なことは「豚とアルコールを口にしないこと」。
豚と言っても肉だけではなく、豚由来の成分が含まれているゼラチンやマーガリンなどもNG。アルコールは嗜好品としてのお酒だけでなく料理酒もダメ。
「ほかにも、成分にアルコールが含まれている味噌やみりん、お酢などもダメですね。醤油は、国や個人によって判断が異なりますが、日本では自然発酵アルコール成分であれば、ハラールとして認められているのが現状です。精製過程に豚由来の活性炭を使うのは塩や白砂糖。よって塩は岩塩か天然塩ならOK。砂糖はてんさい糖、きび砂糖などであればOKです」
なんだか決まりがうるさいように感じるかもしれませんが、逆にこれ以外のものなら基本的になにを口にしてもいいわけです。たとえば、肉に関して。豚以外ならイスラム教で定められた方法で屠殺されていれば、ステーキでも焼き鳥でも口にできます。
ムスリムの人たちは、けっこう肉食!
「実はムスリムの人たちは肉をお好きな方が多いんですよ。なかでもブラジル産とオーストラリア産の肉は、そのほとんどがハラール認証と呼ばれるマークがついたハラール仕様になっています」
実際の認証マークつきのお肉と、お料理を見せて説明をしてくれる佐藤さん。上の写真はブラジル産の肉を使ったラムステーキです。セカイカフェの人気メニューのひとつで、ムスリムの方の注文が絶えないそう。
また口にできない調味料は、別の食材で代用できるものがほとんどなので、大抵の料理を作ることができます。 「たとえば、お酢の代わりにレモン汁を使ってマリネを作ったり、みりんの代わりにハチミツを使ったり。ちょっとした工夫で普段の食事も、おいしいハラール食になりますよ」
安全で、おいしく、多様な「ハラール食」をもっと身近に
このように「食べられるもの」が決まっているのではなく、「食べられないもの」が決まっていて、そのルールが原材料にも及ぶので、ムスリムの人たちは料理や食品にどんな材料が使われているのかを常に気遣い、チェックします。
「これが結果としてハラール食の安心・安全につながっているんです」
佐藤さんが言うには一般的なベジタリアンの方と比べても、その基準は厳しくはなく、ムスリム以外の人たちもそのヘルシーさや多様さに魅力を感じて食生活に取り入れることもあるとか。
「わかりやすいのはパッケージについたハラール認証マークですが、あくまでもひとつの目安にすぎません。たとえマークがなくてもムスリムが食べられるハラールのものは山ほどありますし、ぜひよく食材を調べてみてください。これを習慣づけることで、豊かでおいしいハラール食を食べられますし、なにより、カラダがより良いものを欲するようになりますので、自然と健康になりますよ」
実は今、セカイカフェ以外にもハラール食対応のレストランや、気軽にハラールの食材を購入できる場所は想像以上に増えています。たとえば三越伊勢丹のオンラインストアでは『ハラールフードセレクション(伊勢丹オンラインストア /三越オンラインストア)』に、ずらりとおいしそうな食材がならんでいます。世界で16億人とも言われるムスリムの方が、安心して日本で食事ができること。そのハードルは思ったより高くないようです。食卓をともに囲み、食のボーダレスが進むことで、お互いに新しいおいしさを知ることができるかもしれません。
セカイカフェ
国際的な観光地・浅草にある、宗教、ビーガン(菜食主義)やアレルギーなど、食の制限を越えて楽しめるメニューがそろうカフェ。英語対応可能なスタッフもいるなど、その名の通り世界中からの来客をおもてなしします。
住所:東京都台東区浅草1-18-8大番ビル 営業:9時〜21時
電話:03-6802-7300 定休日:無
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