2015.06.09
犬山紙子の「伊勢丹新宿店食品フロア探検隊!」第1回・知られざるワインの洞窟へ
人気エッセイストの犬山紙子さんが、伊勢丹新宿店の地下、美食のジャングル食品フロアの秘密をレポートする連載がスタート! 第1回は、知る人ぞ知る、いや、伊勢丹通にもほぼ知られていない? ワインコーナー奥に潜む秘密の洞窟へ。グランド カーヴの中でもさらにスペシャルなワインたちが待つ「ヴィンテージ・セラー」を訪れます。
密やかなガラス扉の奥に続く、廊下をくぐると
本館地下1階のワインコーナーのさらに奥、「ヴィンテージ・セラー」と書かれた扉を開けた先に現れる、小さな静かな部屋。1900年(!!)から現在まで100年以上のワインアーカイブがずらりと並ぶ特別なスペースもあるこの空間を、専任ソムリエの小林結さんがご案内してくれました。
犬山紙子さん(以下、犬山)「わ! こんなところに扉が! レジのこんなに近くなのに全然知りませんでした。この中はちょっと肌寒いくらいですね」
小林結さん(以下、小林)「熱と光、振動に弱いワインのために、温度・湿度・光量をコントロールしたスペシャルルームです。スタッフは年中防寒着を着ているので、お客さまに驚かれることもよくあります(笑)。振動をなるべく抑えるために木製棚を採用しているんですよ」
犬山「なるほど~。ちなみにここは何度なんですか?」
小林「年間を通して16度に設定しています。さらに奥のセラーは14度。熱や振動というのは、結局ワインを変化させるエネルギーとなるのですが、余計なエネルギーを加えずに自らの力で育っていけるよう、ワインが長い年月を過ごすのに適切な環境を整えているのです。ところで犬山さんはどんなワインがお好きですか?」
犬山「ピノ・ノワールが好きです。おすすめ教えてください!」
小林「アメリカ・オレゴン州で5ツ星を取っている生産者、『ケン・ライト・セラーズ』なんてどうでしょう?」
犬山「ラベルも素敵ですね。私はワインに詳しくないので、気に入ったラベルのものを選ぶことも多いんですが、ワインのジャケ買いってプロ視点から見ると……やっぱり邪道なんですか?」
小林「そんなことないです! ワインの造り手のセンスや愛情は、ラベルにもたっぷり注がれていますし、そのワインの世界観を表現する重要な側面ですから。アートラベルといえば、フランスに『シャトームートンロートシルト』という大シャトーがあります。ここのラベルがもう、錚々(そうそう)たるという言葉では足りないくらいすごいラインナップなんですよ。たとえばこれ、実は英国のチャールズ皇太子が描いたものです」
犬山「ええ! 超セレブじゃないですか! 絵もうまい!」
小林「フランスとイギリスの協商締結100周年を記念して造られた、チャールズ皇太子の水彩画ラベルです。このシャトーでは1900年代初頭から毎年違うアートラベルを造っていて、ピカソやジャン・コクトー、マリー・ローランサン、シャガールなども描いています。ちなみにピカソラベルの1973年は、このシャトーが2級から1級へ、最高格付けに昇格した記念すべき年だったりもします」
犬山「飲み終えたら花を挿したりして、ずっと飾っておきたくなりますね」
小林「ワインは一晩で無くなる宝石。その芸術性をもっともっと高めてくれるのがアートラベルなんです」
鉄格子の向こうに鎮座するのは、100年のワインアーカイブ
まさに、お宝ワイン! これらはどこに置かれているのでしょうか?
部屋の奥へ進んで、鉄格子の扉の鍵をガチャリと開けていただきます。この中には1900年~2005年頃までのお宝ワインのアーカイブがずらり。このスペースは温度と光量をさらに抑えているので、手元を照らす専用ライトを貸してもらい、棚をのぞいてみましょう。
犬山「すごい! ヴィンテージワインがこんなに! あ、私の生まれ年もありました……ということは、私もヴィンテージ……大人になったんですね(笑)」
小林「いえいえ、実はワイン用語では『ヴィンテージ=同じ年に収穫されたブドウだけで造られたもの』、という意味なんです。だから1900年でも2014年でもヴィンテージ。デニムや音響機材を指して言うときのような『古い』という意味合いはありません」
犬山「おお、なんだか勇気が出てきました(笑)。でもここに来れば生まれ年のワインに出会えるんですね。いつか奮発して買える日がくるといいな」
試飲カウンターで体験する40年ものの古酒
小林「生まれ年というとやはりかなりの年数が経っているものですから、まずはご自分が古いワインがお好きかどうかを試していただくのがよいと思います。そんなときに活用していただきたいのが有料テイスティングカウンター。常時8種類ほど、その時々でさまざまな銘柄をご用意していますので、お買物の参考に試飲をしてみてください。古いワイン、今なら1974年のスペイン・テンプラニーリョが開いているのでぜひお試しを。グラスは揺らさずそのまま飲んでください」
犬山「ワインといえば、てっきり最初に回すものかと思っていました」
小林「最初は揺らさずにそのまま、香りが上ってこなければ少し回してみてください。おじさん、というかそろそろおじいさんになるワインなので、果実味は抜け落ちて骨格が際立ったスープのような旨みを感じていただけるでしょうか。同じ赤でも、焼きっぱなしのお肉よりは煮込んだものなど複雑味のある料理に合わせていただきたい1本です」
犬山「でも実際に高いワインを買うのってとても勇気がいるし、失敗したくないですよね。お買物の際のコツがあったら教えてください」
小林「氏より育ちと言いますか、一番大切なのはワインの置かれた環境ですね。そしてぜひ、セレクトはソムリエにご相談ください。重要なのはどんなシチュエーションで飲まれるのか。たとえばお料理が肉料理ならどんな肉を使うのか? ソースは? 何の記念日なのか? どんな人と一緒に飲むのか? などなど、ディテールは細かければ細かいほどいいですね。ひと口に肉じゃがといっても豚なのか牛なのか、ショウガを入れるのかなどでおすすめするワインは変わりますから」
ワインとは、大切な人との時間を楽しく過ごすためのツールのひとつ。場面に応じて選び分け、飲み分けができればおいしく幸せな時間はどんどん増えていくはず。好みのワインに出会う一番の近道は、「自分の好みをわかってくれる、気の合うソムリエさんを見つけること」と小林さん。1回、2回、できれば同じソムリエさんに3回は相談をしてみて、理解を深めてワインを選んでもらうのがおすすめです。
エッセイスト。2011年、美人なのになぜか恋愛で失敗する女たちの、悲惨で笑えるエピソードをイラストと共にまとめたエッセイ『負け美女』(マガジンハウス)でデビュー。テレビ、雑誌、ラジオなど各種メディアで活躍中。『SNS盛』(学研マーケティング)、『地雷手帖 嫌われ女子50の秘密』(文春文庫)など著書多数。
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商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=グランド カーヴ(ワインコーナー)にてお取扱いがございます。また、お電話注文(伊勢丹新宿店 電話03-3352-1111大代表)でもお買い求めいただけます。
伊勢丹のワイン・洋酒サイト「グランド カーヴ オンラインストア」はこちら
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