2019.02.27
和のスーパーフード「納豆」を食べ比べ。おいしさを見分けるコツとは?
納豆、ついつい値段だけ見て選んでいませんか? 一見地味な納豆ですが、実は産地や製法によって味わいが異なり、とても奥深い食品なのです。今回は、納豆の情報サイト「納豆wiki」を運営する石井泰二さんが、伊勢丹で人気のプレミアムな納豆4種類を食べ比べ。
これまで3,500種類以上の納豆を食べてきたという独自の目線で、その魅力を徹底解説します。さらに、おいしい納豆を見分けるポイントも伝授。これを読めば、きっと今日から納豆の選び方が変わるはず!
個性豊かな味と香り。「地納豆」がアツい!
自身を生粋の「納豆マニア」と語る石井さん。運営する納豆の総合情報サイト「納豆wiki」に掲載する納豆は2,000種類を超え、それぞれの味や特徴などの情報を発信しています。
「どこでも気軽に買えるナショナルブランドの商品もいいですが、ぜひ多くの人に知ってもらいたいのが、『地納豆』と呼ばれる、その土地に根付き、昔から食べられている納豆。それぞれ見た目や香り、味の個性が違って奥深いんです。その多くが生産量の少ないものなので、全国各地を巡るなかで、それまで見たことのなかった納豆や、噂でしか聞いたことのなかった納豆と出合うのが何よりの喜びですね」
見た目、香り、混ぜた感触……マニアの注目点とは?
そんな石井さんのライフワークにもなっている納豆のチェックは、大きく分けて以下の5段階で行われます。
①全体の見た目
②香り
③混ぜた感触
④粒の特徴
⑤味、食感
①全体の見た目をチェック
まずは混ぜる前に全体の見た目を確認します。
「注目するのは、粒ぞろい、豆の色み、そして『被り』と呼ばれる豆についた白い膜の状態。特に『被り』は、納豆菌が大豆のたんぱく質を分解して生まれるもので、これが全体的に均一でしっかり出ていると、納豆菌がよく働き、旨み成分が作られているという指標になります。
機械ではなく、手盛りでふんわりとパッキングされているものは豆と豆の間に空洞ができるので、豆の上面だけでなく全体に『被り』ができているものが多いです。『まじめに作られた納豆だな』と感じますね」
②香りをチェック
次に納豆の香りをチェックします。
「納豆特有の発酵した香りの中に、大豆そのもののよい香りを感じられるかがポイント。大豆の香りがしっかりしていると、味も濃厚なものが多いからです。また、それ以外の香りがすると雑味があったり、発酵が進みすぎてしまっていたりすることがあります」
③混ぜた感触をチェック
続いて、混ぜたときの感触や糸の状態を確認します。
「丁寧に手盛りされた納豆には、箸がスッとスムーズに入る感触があります。混ぜてみると、糸の量が多いものや少ないもの、糸がスーッと伸びるもの、粘りの引きが力強いもの、さらっとしているものなど、さまざまな個性が見えてきます」
④粒の特徴をチェック
続いて、豆ひと粒単位の特徴をチェックしていきます。ここで石井さんが手にしたのは、なんと定規! 大豆の大きさについてはJASで規定されていますが、乾燥大豆の大きさは必ずしも納豆の粒の大きさと一致しないため、石井さんは独自の判定として、納豆になった状態で粒のサイズを測っているそうです。
「新しい納豆に出合ったら、必ず定規で粒の大きさを測ります。サイズの目安は、それぞれ直径が9mmより小さいと極小粒、10mm前後が小粒、15mm前後が大粒、17mm以上が極大粒、小粒と大粒の中間を中粒とし、5種類程度に分類しています。なお、それぞれのサイズの境目あたりの大きさだった場合、ふっくらとした豆と長粒のやせた豆とでは、同じ寸法でも判定が別れることがあります。
個人的にはどのサイズでも好きですが、大粒は豆の味が感じやすいので『アタリ』が多いという実感がありますね。サイズを測るのと同時に、表面の状態もチェックします。粒の表面がなめらかだと舌触りがよく、よりおいしく感じますから」
⑤味、食感をチェック
納豆を十分に混ぜて糸を立たせたら、味の確認へ。
「豆のかたさやかじったときの質感、発酵による旨み、豆そのものの味を意識して食べます。納豆の食感は、歯ごたえのあるものからふっくらやわらかいものまで幅広い。味わいも豆の味が強いものや、独特な風味を持つもの、軽やかでクセのないものなど、ものによってさまざまな特徴があります」
個性豊か! 伊勢丹の人気納豆を食べ比べ
これらのポイントを踏まえて、いよいよ食べ比べスタート! 伊勢丹新宿店で人気の納豆4種について、それぞれ特徴と魅力を解説していただきました。
<菅谷食品>旨みたっぷりの小粒「雪こつぶ」
ひとつ目は、全国納豆鑑評会で6回の受賞歴を誇る東京都青梅市の納豆メーカー<菅谷食品>の「雪こつぶ」。大豆は、北海道江別地区の契約農家から仕入れる、やや大きめの小粒を使用しています。
「豆はやや白っぽく、ほんのりと甘い香りが感じられます。粒がふっくらとしており、かじったときの質感が非常になめらか。豆そのものの味は控えめですが、発酵による旨みがしっかりと感じられます。小粒なのにこれだけ旨みが際立っているのは、煮豆の技術が高い証拠です。総合点が非常に高い納豆ですね」
大豆の特徴:やや大きめの小粒
香り:やや甘め
煮豆の仕上がりと食感:ふっくら柔らか、舌触りなめらか
豆味の濃さ:★★★☆☆
旨みの強さ:★★★★☆
取扱い:伊勢丹新宿店
<笹沼五郎商店>藁の香りが際立つ「特選 わらつと納豆」
ふたつ目は、茨城県水戸市で創業明治22年の歴史を持つ老舗<笹沼五郎商店>の「特選 わらつと納豆」。北海道産「スズマル大豆」の小粒をわらで包んだ納豆で、水戸の伝統的な製法を継承し、手作業で作られています。
「藁の香りが豆に移ることで、ほかの納豆にはない深みのある風味を生みだしています。豆の締まった歯ごたえも特徴的。藁が水分を吸収する分、パック詰めのものよりも豆の水けが少ないので、噛んだときにややざらつきを感じます。しかし豆そのものの味が凝縮していて、濃厚な旨みが楽しめます。糸の引きもいいので食べ応えがありますね」
大豆の特徴:小粒
香り:深みのある藁の香り
煮豆の仕上がりと食感:歯ごたえしっかり
豆味の濃さ:★★★★☆
旨みの強さ:★★★★★
取扱い:伊勢丹新宿店
<登喜和食品>上品な口当たりとピュアな味わい「遊作」
3つ目は、東京都府中市<登喜和食品>の「遊作」。納豆作りに最適な、茨城県産「納豆小粒(しょうりゅう)大豆」を使用し、国産の松から削り出した経木で包んでいます。
「経木の爽やかな香りがインパクト大。豆がふっくらと仕上がっており、ふんわりと手盛りされているので、『被り』が豆全体に、均一に出ています。混ぜると糸がスーッときれいに伸び、口当たりが上品。えぐみや雑味のないピュアな味わいで、とても食べやすい納豆です。冷蔵庫から出したら、少し常温に戻してから食べた方が豆の味が感じられます」
大豆の特徴:小粒
香り:経木の爽やかな香り
煮豆の仕上がりと食感:ふっくら柔らか
豆味の濃さ:★★☆☆☆
旨みの強さ:★★★☆☆
取扱い:伊勢丹新宿店
<川口納豆>もっちり食感の大粒「宮城県産 大粒 三ツ折」
最後は、宮城県栗原市に本社を構える<川口納豆>の「宮城県産 大粒 三ツ折」。地元産の大豆「タンレイ」を使用した、今回のラインナップで唯一の大粒納豆です。
「豆の色が濃い大粒で、表面に若干シワが見られますが『被り』は全体的にしっかりと出ています。ほんのりと甘い香りの中に、ナッツにも似た香ばしい風味が感じられるのが特徴。歯ごたえはややかためで、ひと粒ひと粒にもっちりとした弾力があります。はじめは豆の味があっさりとしているように感じられますが、噛むほどに旨みがじんわりと滲み出てくるのが印象的ですね」
大豆の特徴:大粒
香り:ほんのり甘め、香ばしい風味
煮豆の仕上がりと食感:もっちりとした弾力
豆味の濃さ:★★★☆☆
旨みの強さ:★★★☆☆
取扱い:伊勢丹新宿店
納豆の味は「水」が鍵! 産地で選ぶコツとは
商品ごとに異なる個性や味わいが楽しめる納豆。売り場でおいしい納豆を見分けるには、どんなコツがあるのでしょうか。
「おいしい納豆の条件として、上質な豆が使われていること、納豆作りの技術が高いことは大前提ですが、購入の際にチェックしやすいのは『生産地』。水がおいしい地域では、良質な納豆が作られていることが非常に多いのです。
納豆を作るには、豆を洗ったり、豆を浸水して膨らませたり、蒸したりなど、水を使う工程が数多くあります。そこで使われる水が納豆に含まれる大部分の水分になるので、水のよし悪しが納豆の味わいを大きく左右します」
石井さんによると、近年はどんな水を使っているかについて言及する納豆メーカーが増えているのだそうです。
「水がおいしい地域では、いい米やいい酒ができる。『米どころ』や『酒どころ』と言われている地域は、実は『納豆どころ』でもあることが多いのです。それをひとつのポイントとして、納豆を選んでみてください」
石井泰二(いしい・たいじ)
納豆の総合情報サイト「納豆wiki」主宰。約15年前に納豆の食べ比べをスタート。これまでに食べた納豆は国内外3,500種類以上にのぼる。「納豆マニア」としてテレビ番組への出演や、セミナーの講師を務めるなど、納豆の魅力を広く発信している。
催物のご案内/商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=シェフズコレクションにてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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