2018.11.09
【バイヤーのイチオシ:体験レポート】貴重な「初摘みカカオ」を求めて、マレーシアのカカオ農園へ!
《新酒、新米、新チョコレート! ヌーヴォーの秋は「初摘みアジアカカオ」に注目》という記事でもご紹介しているチョコレート<ナユタ チョコラタジア>cacao nouveau 2018 AUTUMN。このチョコレートは「アジア人のための地産地消チョコレート」というコンセプトのもと、初摘みカカオ=カカオ・ヌーヴォーによる新チョコレートというジャンルを開拓したことで注目されているアイテム。今回は、その仕掛け人である、プラドエピスリー・グランアルチザンのバイヤー、五藤久義さんに、新チョコレートの鍵を握るマレーシアのカカオ農園での様子を伺いました。
注目のカカオ産地、マレーシアへ
「カカオ・ヌーヴォー」とは、今年収穫したカカオ、いわゆる「新もの」。この8月(2018年)に、マレーシア産初摘みフレッシュカカオの新チョコレート(※<ナユタ チョコラタジア>「cacao nouveau 2018 AUTUMN」を企画した五藤久義バイヤーが、チョコレートの原料であるカカオを求めて、マレーシアのラウブ村にあるカカオ農園「KOH’S FARM(コーズファーム)を訪れました。
鮮度を追求するために注目した、「東南アジア」のカカオ
カカオの生産地というと、コートジボワールなどのアフリカや南米、中米が有名ですが、実は今、東南アジアのカカオの品質の高さに注目が集まっているのだとか。そんななか五藤さんが着目したのは、日本から近いマレーシアのカカオ。「マレーシアを選んだ理由はふたつあります」と、五藤さん。「まずは、農園と現地メーカーの連携が強く、鮮度の高い摘みたてのカカオをすぐに加工できること。そして、日本に近いので、完成したチョコレートを短時間で店頭に並べられること」
日本との距離が短いことは「フードマイレージ」の減少という観点からもメリットがあるうえに、何より「カカオのフレッシュさを極める」うえで欠かせませんでした。「今回のチョコレートではとくに、輸送時間が短いことが何よりのポイントでした」
収穫からわずか1カ月半〜2カ月でチョコレートに!
一般的に、主要生産地といわれるアフリカや南米のカカオは、収穫後船便でヨーロッパに渡り、クーベルチュールに加工されます。収穫したカカオ豆がチョコレートになり日本の店頭に届くまでには、トータルで約2年から3年もかかるのだそうです。
これに対し、マレーシアのKOH’S FARMのカカオによるチョコレートは、カカオ収穫から伊勢丹新宿店の店頭に並ぶまでわずか1カ月半~2カ月という短さ。「つまり、収穫期を迎えたばかりの9月の初摘みカカオを11月にはチョコレートとしてお届けできるということ。これは画期的、すごいことなんです」。新米やボージョレ・ヌーボーと同じように、「新チョコレート」や「カカオ・ヌーヴォー」をチョコレート好きの方に紹介できると思うと、それだけで五藤さんはわくわくしたそうです。「初摘みカカオによる新チョコレートが誕生する工程を自分の目でしっかりと見ておきたい、という思いで時間を作って赴きました」
「初摘みカカオのチョコレート」という、新たな挑戦
「念のために強調しておくと、1カ月半~2カ月というスピードでチョコレートを作るのは、決して簡単なことではありません」。カカオの生産は、個人で行う場合もあれば団体で取り組む場合もあり、体制はさまざまですが、どのように収穫、保管、加工をしたかというトレーサビリティの管理が十分でないことも。生産地や輸入方法によっては、どのカカオがいつ収穫されたものなのか特定できない場合もあります。
「乾燥し、焙煎をかけて保管しておけばチョコレートの素材としては問題がないので、収穫最初の『初摘みカカオ』を重宝するような文化もないんです。初摘みのフレッシュカカオをその季節のうちにチョコレートにすることについては、ほぼ前例もなく、かなりハードルが高い試み。初積みカカオのチョコレートを作るためには、トレーサビリティの管理が厳密に行われている農園や加工する工房との綿密な関係を築くことが重要でした」
はるかな道のりを乗り越えて、いよいよカカオと対面!
「さて、マレーシアのKOH’S FARMの様子を写真とともにご紹介しましょう」。KOH’S FARMは、クアラルンプールから車で2時間半、山岳地域のラウブという村にあります。「8月29日(2018年)の早朝にマレーシアの国際空港に着き、いちどホテルに荷物を置いてから、ほかのスタッフとともに車で向かいました。北海道のような一本道をひたすら走ったのですが、日本と違うのは、途中に集落がポツン、ポツンポツンとあるぐらいで、道の周りにはほぼ何もないこと」。山と崖ばかりの景色のなかを、真っ直ぐ走り抜け、ようやくKOH’S FARMに到着。
「やっと農園に着いた! と思ったら、そこはまだ入り口。実際にカカオを栽培しているのは農園の入り口から砂利道をガタガタガタガタと50分も進んだ場所でした」。長時間の縦揺れで車酔いになるスタッフもいたなか、なんとか持ちこたえてカカオへとたどり着いたのだとか。「生鮮売場を担当していたときに漁師の船に乗った経験が役に立った? のかもしれませんね!」
親子二代で35年、マレーシアのモデル園「KOH’S FARM」
KOH’S FARMは、親子二代にわって35年続いている農園。独学でカカオの栽培方法を学ぶことから始め、2010年、2011年にはカカオ豆品評会でCocoa of excellenceを受賞したのだそうです。
「マレーシア政府からカカオのモデル園として評価されるなど、とても信頼できるカカオ農園です」。写真は、マレーシアのモデル園であることを証明する看板と、この日農園を案内してくれた二代目のコーさん(Mr.Koh)。
りんごのような酸味、さわやかな甘み。「カカオはフルーツだ!」
カカオを栽培している場所に到着。「黄色やピンクのカカオの実が枝からぶら~んと直接下がっている姿は非常にインパクトがありました。感動してカカオの木をみていたら、コーさんがにわかに木からカカオをもぎ取り、その場で割って果肉(カカオパルプ)を食べさせてくれました。
ジュルッと出てきた果肉は、鼻を近づけると独特の酸っぱい香りがして、カカオはフルーツなのだとあらためて実感。果肉部分を農園で食べるという経験は初めてでした」。果肉はすぐ傷んでしまうので、これは農園でしか体験できない贅沢。「やっぱりおいしいなあ~、としみじみ。りんごを思わせるような酸味、若干の苦み、さらにさわやかな甘み、旨み……。口に含んだときのおいしさは格別でした」
パーム、パーム、パーム! カカオより多いパームツリー、そのワケは?
フレッシュなカカオを堪能した後は、広大な農園を見学。「KOH’S FARMには、ドリアンやバナナ、パームツリーもありました」。こうしていろいろな種類の植物を一緒に栽培するのには、理由がありました。違う作物がともに育つ環境はカカオにとって良い影響を与えるそうで、他の作物とうまくバランスをとって育てることでカカオが強くなるのだとか。「カカオを栽培しているエリアでは、カカオ以上にパームツリーが目立っていましたが、なるほど、これはカカオのためだったのだと納得しました」
農園の中だけでなく、マレーシアは市街を離れるととにかくパームツリーばかりだったそう。「高く伸びているものあれば、見たこともないくらい太いものもある。やっぱり自然の力ってすごいです。パームツリーの景色は、今回の出張でもっとも印象に残っていることのひとつです」
発酵、乾燥後のカカオ豆には、すでにチョコレートの香りが
農園のすぐ隣に、白い果肉を落としたカカオ豆を発酵、乾燥させる作業所があり、こちらも見学。ポロシャツを着た農園スタッフが、発酵の準備作業をしています。
こちらの写真は発酵させたカカオ豆を地面に広げて乾燥させている様子。「ちょうど乾期だったので、天日干しでも安心ですね」
そして乾燥を終えたカカオ豆がこちら。「いよいよチョコレートに近づいてきた感じがするでしょう? 食べてみると、味は苦かったけれど、すでにこの時点でチョコレートの香りがふわっと! 」。このカカオ豆が工場に出荷され、さまざまな過程を経て商品化されていくというわけです。
マレーシアには政府が認めるモデル農園がいくつかあり、KOH’S FARMはその代表格と評価されています。「しっかり見学して、栽培、収穫、そして加工の過程を確認することで、安心感、信頼感が増しました。どんな食品でも同じですが、生産者に直接会い、会話をすることはやはり大事。今回の出張でカカオへの思いが増した気がします」
<ナユタ チョコラタジア>の新アイテムは、カカオ78%!
KOH’S FARMのカカオを使って完成した<ナユタ チョコラタジア>「cacao nouveau 2018 AUTUMN」は、カカオ含有量78%とちょっと高め。「いろいろ実験した結果、初摘みカカオのフレッシュ感を感じるのに最適な含有量がこれでした。最近人気なのは、さらっと味わえる70~75%。でもこの新チョコレートではもっとカカオ感を楽しんでほしいと思い、この割合に決めました」。「新チョコレート」は、フレッシュなカカオを味わうために生み出された、チョコレート好きにも、新もの好きにも楽しんでいただけるアイテム。「ぜひ、自分の舌で味わっていただきたいし、そのときにこの農園レポートのことを少しでも思い出していただけると嬉しいです!」
ちなみに五藤さん、このチョコレートとのペアリングには「スコッチウイスキー『スプリングバンク』が絶対おすすめ!」だとか。「チョコレート好きもウイスキーも好きも、ぜひ一度お試しください」
※取扱い:伊勢丹新宿店
※販売期間:2018年11月1日(木)から
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=プラ ド エピスリーにてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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