2015.05.11
約140年の時を経て復活した「申餅(さるもち)」は、葵祭の味
毎年5月15日に行われる葵祭は、盛夏に行われる「祇園祭」と秋に行われる「時代祭」に並ぶ、「京都三大祭」のひとつ。今年も緑風が吹き渡るころに祭儀礼が執り行われる予定で、国内はもとより海外からも多くの方が観覧に訪れます。長い歴史を誇り、我が国でもっとも優雅で雅趣に富む葵祭に今、時を経て復活した「申餅(さるもち)」が祭りに再び彩りを添えています。
葵祭は、あの超定番物語にも登場
葵祭は正式には「賀茂祭」といい、平安遷都を境に五穀豊穣を祈願する国家的な祭儀礼として行われてきました。平安時代中期の貴族の間では、「祭り」といえば「賀茂祭(葵祭)」を指すほど定着しており、かの『源氏物語』にも登場。光源氏の妻・葵の上と六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)が祭りを見物するため、一条大路で車争いをしたエピソードを覚えている方も多いことでしょう。長い歴史のなかで賀茂祭が葵祭と呼ばれるようになったのは、江戸時代は元禄以降のこと。京の朝廷文化がもっとも華やかであった平安の古を偲び、御所車や御簾、神職の冠にいたるまで、すべて斎王(天皇家がつとめた)ゆかりの葵の葉で飾るようになってから称されるようになりました。
華やかな祭りにほんのり色づく「はねず色」
京都御所を出発して下鴨神社、上賀茂神社を巡行する葵祭は、朝廷の行事であり貴族の祭りだったことから、華麗な衣装や装飾された美しい御所車などが見られる、豪華絢爛で麗しい祭りとして知られています。一方、その華やかさとは対照的に、祭りの名物として庶民に古くから親しまれていたのは、「申餅」というひと口サイズの慎ましやかな餅菓子。小豆のゆで汁でついた餅は「はねず色」と呼ばれる薄あかね色で、明け方に一瞬、空がほんのりとあかね色に染まる様子を表現。生命の生まれる瞬間を表しているといわれています。
下鴨神社の宮司だけが知る口伝の「葵祭の申餅」とは……?
申餅は「葵祭の申餅」と呼ばれ、祭期間中の申の日に食して、無病息災を願った故事に由来します。明治初年の法令制度化により販売も食べることも廃止されましたが、2010年、下鴨神社の宮司の口伝を頼りに和菓子店「宝泉堂」が約140年ぶりに復元しました。その味はというと、はねず色のやさしい色味にふさわしく、ほどよい柔らかさの餅と、そのなかに優しく包まれた粒感の残る小豆あんが甘美で美味。葵祭に訪れたのなら、かつては神前に御供されたという葵祭の味を、その雰囲気と一緒に味わってみてください。
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