2018.03.13
塩と酢でうまみ凝縮。魚谷清兵衛の「小鯛の笹漬」
上質な魚介の加工品を製造・販売する<魚谷清兵衛>のロングセラー商品「小鯛の笹漬」。樽に詰められた小鯛の味つけはごくシンプル。連子鯛(レンコダイ)の小鯛を3枚におろし、薄く塩をして米酢にさっとくぐらせるだけ……ですが、侮ることなかれ。透明感ある薄桃色の美しい色合いの小鯛をひと切れほおばれば、しっとりとなめらかな舌触り。かむほどに凝縮されたうまみが口いっぱいに広がります。
通年販売されている商品ですが、店頭に並べば即日完売するという人気ぶり。約50年間にもわたる看板商品で、リピーターも多いというこの一品。その製法には、きっと並々ならぬこだわりがあるに違いありません。「小鯛の笹漬」の美味しさの秘密、そしておすすめの食べ方を<魚谷清兵衛>の代表、魚谷亨さんに聞きました。
【秘密①】脂がのり過ぎない「連子鯛」を使用
味に一番影響するのは「魚の質」だという魚谷さん。選ぶ基準はサイズ、色、鮮度にあるといいます。
「使うのは40〜70gの連子鯛のみ。鯛としては小ぶりですが、このサイズが一番脂ののりがちょうどいいんです。ほどよく脂がありながらもさっぱりとしているのが特徴です。これ以上成長してしまうと脂がのり過ぎて笹漬には向きません。淡いピンク色なのが皮と身の間にほどよく脂がのっているサインです」
通年で商品を提供できるよう、連子鯛は福井県から山陰地方にかけて獲れるなかから、時期ごとに最も状態がいいものを厳選。
「水揚げしたら冷凍せずに生のまま加工することが重要。生だからこそしっとりとした食感に仕上がり、素材の持ち味を損なうことなく味わえるんです」
【秘密②】うまみを引き立てる塩・酢の「いい塩梅」
「小鯛の笹漬」の魅力は、キュッと締まった身の食感と、優しい塩味と爽やかな酸味の中に際立つ魚のうまみです。それは魚をおろす、中骨を抜く、1匹ずつ加減しながら味付けるなど、丁寧な手作業と長年磨かれた技術に裏打ちされたもの。
小鯛は3枚におろされ、中骨を除いた状態で味付けの工程に移ります。
「化学調味料は一切使わず、塩と酢のみで味付けます。大切なのは、素材のうまみを最大限に引き出すこと。シンプルなだけに加減が難しく、塩辛くても酸っぱくてもいけません。味が濃すぎると飽きてしまいますし、薄すぎるとうまみが立ちません。うまみを引き出す塩と酢の『いい塩梅』によって、初めて『また食べたい』と思ってもらえる味わいが生まれるんです。魚の微妙なサイズの違いで調味料の分量も変わり、鮮度を保つためにスピードも求められるので、味付けには熟練の技が必要です」
【秘密③】味わいの変化を生み出す「杉樽」
もともとは福井発祥の名産品として知られる「小鯛の笹漬」には、古くから杉製の樽が用いられ、<魚谷清兵衛>でも一貫して杉樽にこだわっています。
「通気性のよい杉樽は魚の水分調整に最適。しっとりとした食感を保ち、杉の爽やかな香りが魚の風味を豊かにしてくれます。商品の賞味期間は約1週間ですが、日ごとに味が馴染んでいくのも魅力のひとつ。『3日目が一番好き』など、味わいの変化を楽しむお客さまもいます。以前、業界で樽を安価なプラスチック製に変える動きもありましたが、笹漬の豊かな味わいは杉樽でなければ出せません」
ご飯のお供や寿司ネタ、おつまみにも
最後に魚谷さんに「小鯛の笹漬」のおすすめの食べ方を聞きました。
「まずは何もつけずにそのまま、またはわさび醤油でシンプルに味わっていただきたいですね。ご飯のお供にもぴったりです。また、小ぶりなサイズを生かして手まり寿司にしたり、短冊状に切ってちらし寿司の具にするのもおすすめです。個人的には日本酒に合わせるのがイチオシです」
魚を美味しく食べるための知恵が詰まった「小鯛の笹漬」。刺身からガラッと変身した小鯛のうまみを、ぜひご家庭で味わってみてください。
春を感じる新商品も見逃せない!
<魚谷清兵衛>が展開する季節に合わせた限定商品も見逃せません。現在は期間限定で、小鯛を桜の葉と一緒に漬けた「桜香小鯛」が登場。塩と酢のみで小鯛のうまみを生かす製法はそのままに、桜の春らしい香りが相まっていつもの「笹漬」とはまた違う新たな味わいが楽しめます。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=フレッシュマーケット/魚谷清兵衛にてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Ranking
人気記事ランキング