2017.06.28
テロワールにスパークリング! 伊勢丹バイヤーに聞く日本酒トレンド2017
日本酒ブームが続くなか、フルーティで軽やかなお酒が席巻したかと思えば、ほっこりやさしい味わいのお燗がじわじわ人気となるなど、トレンドはめまぐるしく変化し続けています。2017年はいったいどんなタイプの日本酒が注目されているのでしょうか?
さまざまなイベントも手がけながら日本酒の魅力を発信し続ける伊勢丹新宿店・和酒担当の倉友桐さんに、2017年の日本酒がもっと楽しくなる3つのトレンドを解説してもらいました。
【トレンド1】風土や気候を生かす「テロワール」の発想
これまでの日本酒造りは「農家さんから酒米を仕入れて酒を造る」ことが一般的でした。しかし近年は、生産地の風土や気候を生かす「テロワール」の発想を持った酒蔵が登場しています。
「お酒は8割が水なので、蔵のある土地の水質は酒質に大きな影響を与えます。またお酒造りに必要な『酵母』も本来は自然界のもの。『テロワール』を大切にする蔵では機械化が進む現代でも伝統の製法に立ち返り、さまざまな工程に土地の力を取り入れることで、他の蔵には真似のできない独自の味を目指しているのです」
なかでも異彩を放つのが日本酒発祥の地・奈良県にある<美吉野醸造>。通常日本酒造りに用いられる酵母や乳酸の添加を行わず、自然の力だけで発酵させる室町時代の手法「水酛」で造る『花巴』は、一度飲んだら忘れられないインパクト抜群のお酒です。
また、「テロワール」の中でも米から育てる「ドメーヌ蔵」が増加中。
「ワインの世界でブドウの栽培から酒造りまで一貫して行う生産者を『ドメーヌ』と言いますが、日本酒の世界でも自ら田んぼに立ってお米を栽培する造り手が増えてきています。お客さまもそんな『こだわりのお酒』を求めるようになってきました」
倉友さんが注目する「ドメーヌ蔵」が岡山県の<丸本酒造>。オーガニック認証の3大スタンダードである「有機JAS」、「NOP」、「ECRegulation」のすべてを取得するなど、ナチュラルな酒造りに取り組んでいます。
【トレンド2】世界に広がる「スパークリング」
2つめは近年増えてきている「スパークリング日本酒」の躍進。生きた酵母の働きによってシュワシュワとした軽やかな飲み口を表現するいわば日本のシャンパーニュです。若い人にも人気ですよね。
「シャンパーニュのように楽しめるスパークリング日本酒は、世界に日本酒の魅力を伝えるための旗印となるものです。最近では2020年の東京オリンピックの乾杯酒を目指すための協会『awa酒協会(※)』が設立されて大きな話題になりました。上質でクリア、心地いいスパークリング日本酒は国際的なラグジュアリー・シーンにぴったりだと思います」
※awa酒協会とは2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、世界のラグジュアリーな乾杯シーンで日本のawa酒がシャンパーニュやスパークリングワインと肩を並べる存在になることを目指し、国内の蔵元同士の連携を強めるとともに、awa酒の認定基準を定めることによる品質向上を図り、普及促進に努めている。
<天山酒造>の「天山 スパークリング」は、澱と共に長時間熟成させる事による特有のフレーバーと、はっきりとした輪郭の力強い酸を感じるドライな味わい。また、<山梨銘醸>の「七賢 星ノ輝」はやわらかな光の気泡を放つ酒。ほんのりと甘さを感じさせながらもさわやかな口あたり、感動と至福ののど越しが楽しめます。
【トレンド3】「ネクストジェネレーション」が続々登場!
3つめのキーワードは「ネクストジェネレーション」。日本酒というと「伝統」「昔ながら」といった言葉が浮かびますが、近年は世代交代が進み、若く才能ある造り手が頭角を現わし始めています。
「ネクストジェネレーション蔵の特徴は、現在の若い人の感覚やライフスタイルに合った日本酒を造っていることです。例えば福島県<曙酒造>の「天明」は、通常の純米大吟醸よりも酒米を磨き、「ちょっとリッチ」なお酒を表現していますし、愛媛県の<成龍酒造>ではあえて香りを抑え、食事に合う新しい食中酒開発に取り組んでいます。どちらも若手蔵元が中心となり、独自のカラーで酒造りをしている注目蔵です」
3つのトレンドに注目すると日本酒の「今」がわかるはず。多様に進化する最新の日本酒シーンを味わい尽くしましょう!
催物のご案内
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Ranking
人気記事ランキング