1粒数百円にも納得！ 高級さくらんぼ・佐藤錦はやっぱりすごかった

初夏の風物詩でもあるさくらんぼ。数ある品種の中でも、ひときわ人気を集めるのが佐藤錦です。宝石のように輝くルビー色の果肉はなんともやわらかく、上品な甘さが魅力。見た目の美しさから、贈答品としても重宝されています。一般的にさくらんぼは栽培に手間暇がかかるため、ほかのフルーツに比べても値段が高めですが、なかでも佐藤錦は一段と高価。今回は高級さくらんぼの代表格・佐藤錦がそもそもどうして高いのか、さらには美味しさの秘密を、伊勢丹新宿店の青果コーナー店長・野村徹さんに聞きました。

ほかとはまったく違う！ ゼリービーンズのような甘み

佐藤錦は粒が大きく、まるで砂糖をたっぷり使ったゼリービーンズのような、はっきりとした甘さが特徴です。

「糖度は16〜18度前後と言われ、中には20度を超えるものもありとにかく甘い。果肉は弾力がありながらもなめらかで、まさに最高レベルのさくらんぼです」

同じ品種であっても、栽培される農園などによって糖度は大きく異なるので一概には言えませんが、一般的なスーパーに並ぶ高砂という品種は糖度が13度ほど。佐藤錦の糖度の高さが伺えます。

佐藤錦の生みの親は、山形県東根市で農家を営んでいた佐藤栄助さん。もともとさくらんぼは雨や暑さ、寒さに弱くてデリケート。さらに、味わいも酸っぱさが立ちやすく、美味しく育てるのは至難の技でした。そこで佐藤さんが「育てやすくて、味もいい品種を作ろう」と立ち上がり、比較的育てやすいが味はイマイチな品種と、味はいいがデリケートで育てにくい品種との交配を重ね、15年以上にわたる努力の末に「佐藤錦」を誕生させたのです。

育てやすく、味もよいことで一躍高級さくらんぼの代名詞となった佐藤錦。現在では、さくらんぼの名産地・山形県内で栽培されるさくらんぼの75％のシェアを占めるんだとか。

まさに箱入り！ 雨よけやボイラーが必要な佐藤錦の栽培

佐藤錦は育てやすい品種とはいえ、やはりほかの果物と比べると栽培にかなりの手間がかかります。

「雨は身割れや劣化の原因になるので、雨粒が直撃しないよう、雨よけハウスは必須。また、寒い時期は霜の被害を防ぐため、ひと晩中ボイラーで温めることもあります」

木の上方に枝や実が密集していると下方に日光が届かないため、上方の小さい芽を間引く「芽かき」も欠かせません。さらに、いざ収穫という段階になっても、機械は使えないので、人の手で一つひとつ丁寧にもぎ取り、箱詰めしていきます。

「農家の方々が細心の注意を払っていても、流通の段階で傷むこともあるので、店頭でもさらに人の目でチェックしています」

特に佐藤錦は糖度が高いため傷みやすく、小さな傷がきっかけで、そこからカビが発生することもあるのだとか。

とにかく箱入り娘のように、手塩にかけて育てられ、選別されたことを思えば、1粒数百円（！）という値段にも納得のまさにさくらんぼの女王、それが佐藤錦なのです。

ちなみに、さくらんぼは追熟しないので、買ったら早めに食べきること。

「冷蔵庫へ入れるのは食べる直前に。冷やしすぎると甘みを感じにくくなってしまうのと、何度も冷蔵庫に出し入れすると痛みやすくなるので、軽く冷やして食べるのがオススメです」

 

佐藤錦のほかにも！ 最近注目の高級さくらんぼたち

最近では、佐藤錦のほかにも注目の高級さくらんぼがあるんだとか。

酸味と甘みバランスの良い味わいの「紅秀峰」

ひとつは、さくらんぼの時期の終わりごろに出回る「紅秀峰（べにしゅうほう）」。「佐藤錦」とほかの品種を交配して開発された比較的新しい品種です。国産のさくらんぼにしては珍しく、アメリカンチェリーのように濃い紅色の果実をしています。

「紅秀峰は酸味と甘みのバランスが抜群。とてもジューシーな果肉は佐藤錦と比べると硬めで、食感のよさも魅力です。佐藤錦よりも日持ちもするので、お中元などにも向いています」

黄色い果実の「月山錦」は幻の品種

もうひとつは、黄色いさくらんぼ「月山錦（がっさんにしき）」。こちらは栽培農家が非常に少なく、1本の木から採れる量も限られているため、一般的なスーパーにはほとんど出回ることのない、かなり希少価値の高いさくらんぼなんだとか。

「糖度は、最高級のマンゴーやイチゴを超える20〜24度ととても高く、とにかく甘い！ まさに幻の品種ですから、見かけることがあれば話の種にでもぜひ食べてみてください」

高級なさくらんぼは、一粒で十分！ と思えるくらいの満足感を与えてくれるもの。おいしさの余韻も含めて、初夏のさわやかな味わいをぜひ楽しんで。

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