2016.11.13
本で旅する世界の食文化 〜一流シェフの気分を味わえる3冊〜
料理本なのに、表紙を飾るのが「料理」でも「お店」でもなく「ワンちゃん」だったり、まるでモード系ファッション雑誌のようなアーティスティックなオブジェ!? だったり……。世界にはあっと驚く料理本がたくさんあります。たとえ海外旅行は叶わなくても、食のためなら想像の羽根をどこまでも羽ばたかせてしまう――そんな食いしん坊で好奇心旺盛なみなさまに、本を通じて世界の食文化をナビゲートするこの連載。
案内人を務めるのは、代官山 蔦屋書店の料理コンシェルジュ・後藤奈岐さん。
第1回目は、スペインとフランスから、一流シェフの気分を味わえる3タイトルを紹介します。
3Dプリンタにイヌの表紙!? 奇想天外なスペインのレシピ集
1990年代ごろからフランスと並び、世界の美食家たちから熱い注目を集めているのがスペイン。
「世界の美食家たちが訪れる……地元の人のための、というよりは、世界市場を見据えたレストランが多いです」
というまさに食の最前線。そんなスペインで発行されている定期刊行物のなかで、世界中の料理人やパティシエからも注目されているのが『so good..』と『apicius』です。
まるで科学雑誌!? チャレンジングなレシピ集『so good..』
これ、なんだかわかります? 3Dプリンタでケーキの型を作るところから、という複雑を極めたレシピを紹介したものなんです(手間のかけかたが間違っている気がしますけど……)。家庭で再現可能かどうかはちょっと未知ですが、まるで科学の専門誌のようなそのビジュアルに刺激を受けること間違いなし!
「内容は、世界の名だたる一流パティシエがレシピを提供しているレシピ集です。ジャン=ポール・エヴァン、アンドーニ・ルイス・アドリス、フランシスコ・ミゴヤら、これほどまでのスターシェフをよくぞと、毎号驚かされます」
そんな世界の名だたるパティシエのなかには日本人もほぼ毎号登場しているのだとか。
「この号では奈良県<パティスリー エメラ>の藤原直樹シェフ、福岡県<ジャック>の大塚良成シェフが紹介されていますね。基本的にはフランス菓子を中心としたレシピですが、『#13』では、大田区にアトリエを構える創作和菓子ユニット『WAGASHI ASOBI』のが紹介されていたりと、既存の枠にとらわれないチャレンジングな企画もあります」
まさに世界の製菓の最前線を知ることができる1冊です。
料理本とは思えないアート系のビジュアルにうっとり『apicius』
食材の盛り付け方や、絵の具を壁に投げつけたアートのようなソースのかけ方など、これが料理だとわからないくらい芸術的な写真の数々。そんな一流シェフのレシピが詰まった『apicius』の表紙を飾るのは……お腹をすかせたワンちゃんです。
「『so good..』『apicius』ともに、いまやその世界の専門の料理人であればおそらく知らない人はいないほどの雑誌。代官山 蔦屋書店に買い求めにいらっしゃるのも、プロの料理人の方や、料理学校の生徒さんが多いです」
言葉の壁はない! 眺めるだけで満腹なフランスの雑誌
「美食の牽引国、というと、やはり多くの人が最初に思い浮かべるのはやはりフランス。そんな本場の空気感をダイレクトに届けるプロ御用達の雑誌が、『Thuries GASTRONOMIE』です」
美食の国のトップランカーたちが手がける芸術品のような料理写真をパラパラと眺めるだけでも圧巻! このひと皿、いつかは食べてみたい……と夢が膨らむ1冊です。
「シェフそれぞれのレシピのほかに、ワインや新刊書籍の紹介、『今月の食材』として素材にフォーカスするなど、料理人が気になるところをしっかりフォローしています。まさにプロ御用達の雑誌ですね」
そのため、同誌を代官山 蔦屋書店に買い求めにくるお客さまのなかにも、フランスでの修業時代を過ごした当時からの習慣で購読を続けているというシェフが少なくないとか。
まるで一流シェフの気分になれるような3冊。いつかは本物を口にする日を夢見て、料理とそれを生み出す人々の情熱に思いをめぐらせながら、ゆっくりと味わいたいですね。
後藤奈岐さん
代官山 蔦屋書店で食関連の本を担当する料理コンシェルジュ。「ル・コルドン・ブルー」でフランス料理を学んだ経験と、翻訳業で培った語学力を活かし、世界中の本の選定や、プロの料理人を招いてのイベント運営などを行なっている。
代官山 蔦屋書店
電話:03-3770-2525
住所:渋谷区猿楽町17-5
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