2016.10.21
江戸前の三大そば(蕎麦)、「藪」「更科」あとひとつ知っていますか?
100年以上に渡って歴史を紡いできた老舗のおそば屋さんの中には、御三家と呼ばれる系統があることをご存知ですか? 街で見かける店の屋号からその一門であることをうかがい知ることができますが、一体、どのような違いがあるのでしょう。御三家の歴史や特徴について調べてみました。
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江戸前のそばを守り継ぐ、御三家の老舗「三大そば(三大蕎麦)」とは?
「そばという食べ物は江戸時代に生まれたもの。細長く切って食べることから、正式には『そば切り』と呼ぶんですよ」。そう話すのは、そば料理研究家であり、<築地薮そば>のご主人、鵜飼建三さん。
その江戸時代に生まれたのが、「藪(やぶ)」「更科(さらしな)」「砂場(すなば)」からなるそばの御三家です。どの系統も1軒のそば屋から始まり、兄弟や親戚、弟子などが暖簾分けをして広がったそうです。よく似た屋号の店があちらこちらにあるのはそのため。屋号には伝統が刻まれているんですね。
【藪そば】下町の粋なそばの代表。つゆの濃さは御三家随一!?
<かんだやぶそば><並木藪蕎麦>などの老舗がある藪系は、幕末の頃、東京・根津の団子坂にあった「蔦屋」が発祥と言われています。あれ? 「藪」とつかないのはどうしてですか?
「『蔦屋』は藪に囲まれていたことから、通称『藪そば』と呼ばれていました。それがいつしか店名になったと聞いています」と<築地藪そば>の鵜飼さん。この「蔦屋」で職人として働いていた一人が、鵜飼さんの祖父。その祖父が明治25年に開いた<上野薮そば>は、鵜飼さんの兄、良平さんが三代目を継いでいます。
下町生まれの藪のそばは、そばの実の外側にある甘皮を適度に挽き込むため味が濃く、それに合わせてつゆも濃いめに仕立てるのが伝統といわれています。辛さは御三家随一とよく聞きますが、「それはかつての話です。藪の暖簾を継いでいても『こうあるべし』という縛りはなく、むしろ時代に合った味を作るのが教えでもあるのです」
では、ほかの系統はどうでしょう。
【更科そば】長野がルーツ。色白で繊細な更科蕎麦が代名詞
調べてみると、更科のルーツは信州の布屋。そば打ちの腕前に長けていた信州出身の堀井清右衛門が、領主に布屋からそば屋への転身を勧められ、江戸の街に「信州更科蕎麦所 布屋太兵衛」の看板を掲げたのが始まりとされています。更科の「科」の文字は、領主であった保科家に由来するのだとか。
その暖簾を継ぐのは、創始者の直系にあたる<総本家 更科堀井>のほか、<永坂更科 布屋太兵衛>など。代名詞となる更科そばは、そばの実の中心の粉で打つ純白のそば。繊細な喉ごしを楽しむもので、つゆも淡く甘めです。<総本家 更科堀井>では「更科そば」には甘口、通常の「もりそば」には辛口と使い分けています。
【砂場そば】大阪生まれ江戸育ち。「もり」と「ざる」を打ち分ける店も
一方、砂場系の発祥は、なんと大阪。藪と同じく砂場は通称で、大坂城築城の際の資材置き場だった砂場近くに店があったことに由来すると伝えられています。江戸の街に移ったのは江戸時代中期。ちなみに、大阪には砂場の暖簾を引き継ぐ店は残っていないそうです。
東京の砂場系の老舗は、<砂場総本家><巴町砂場><室町砂場><虎ノ門 大坂屋砂場>など。このうち、<室町砂場>は、「ざるそば」と「もりそば」を打ち分けることで知られています。「ざる」はそばの実の中心の粉を卵水で、「もり」は甘皮を含んだ粉を水だけで打つそうです。
一般的には海苔がのっているのが「ざる」、なにものらないのが「もり」といわれていますが、そばそのものが違うなんて、ちょっとびっくりですよね。
香り高く色鮮やかな新そばを、老舗そば屋で味わおう
そんな御三家の流れを汲む各店では、秋の訪れとともに新そばを味わうことができます。収穫したての新そばは清々しい香りと淡いうぐいす色が持ち味です。
<築地薮そば>では、2016年は10月下旬から北海道・鹿追産の新そばが登場予定です。江戸時代に思いを馳せながら、粋に手繰ってみてはいかがでしょう。
築地藪そば ご主人 鵜飼建三さん
東京・築地市場の向かいのビルに店を構える<築地薮そば>のご主人。フランス料理店で腕を振るっていた経験を持ち、そばとフレンチを融合させた料理も多数考案。特別コースで披露されることも。
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店舗のご案内について
記事でご紹介している築地 藪そばは、日本橋三越本店新館地下1階にございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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