2016.09.28
ボトルでは選べない!? 知らないことだらけのバルサミコ基礎知識
以前、WEB FOODIEで紹介した「オリーブオイルの正しい選び方。美味しいものを見分ける3つのポイント」が好評だったことに続き、編集部が次に注目したのがバルサミコ酢。
スーパーの店頭ではよく見かけますが、「どう選べばいいのか」とまでは考えたことってないかも。材料はぶどうで熟成させたものかな……とはっきり調べたことはない。
そこで今回は、バルサミコのプロ、シイ・アイ・オージャパンの久保田智彦さんに、美味しい選び方や、材料と製法についてなど、ごくごく初心者向きの基礎知識を教えてもらいました。
すると、オリーブオイルと似た感じかな……?という予想を大きく覆す、驚きの事実がたくさんあったんです!
ボトルからわかることは、ほとんどない!?
「ワインならラベルに産地、収穫年(熟成期間)、生産者から、なかには畑の格付け、ぶどう品種、甘辛度合いまで、いろいろな情報が書かれていますよね。一方バルサミコの場合、産地とワインビネガーを加えているか否かの情報くらいしかないんです」
ええっ、そうなんですか!?
「バルサミコは味を大きく左右する熟成期間でさえも、ボトルに表示してはいけないという決まりです」と久保田さん。
結局、自分好みのバルサミコが欲しい場合は、試食するしかないんだそう。
ボトルやラベルがヒントになる、オリーブオイルとは違うんですね。では、ボトルに表示されていない味わいの違いは、どこから生まれるのでしょうか?
産地や製法についても詳しく教えてもらいました。
バルサミコとは「豊かな香り」が語源
久保田さんによると、バルサミコの正式名称は、「アチェート・バルサミコ」。イタリア語で「アチェート=酢」「バルサミコ=芳香」という意味。いかに「芳香」を出すかが、バルサミコ作りのキモなのだとか。
「バルサミコの産地はワインやオリーブオイルと違いふたつしかないんです。イタリア北部、ミラノから車で1時間ほど南下したエミリア・ロマーニャ州の「モデナ」と「レッジョ・エミリア」地区。この地区で厳しい条件の元、ぶどう果汁から作られた『芳香のある』お酢だけが、バルサミコという名称を名乗れるのです」
1/100まで煮詰めた後、何度も樽を替えて香りづけ
久保田さんによると、ふたつの製造方法があるそうです。
「まずは伝統タイプ。要は昔ながらの製法で、収穫したぶどう果汁を鉄釜で煮詰めます。これを『モストコット』と呼びます。100kgの葡萄果汁が1〜2kgまでになるんですよ。次にそれを樽に入れて熟成させるのですが、水分の蒸発に応じて1年ごとに小さい樽に移し替え、樽の材質も、クリ、クワ、オーク、トネリコ、サクラと変えていくんです」
えっ、なんでそんな手間と時間をかけるのでしょう?
「バルサミコの語源は『芳香』、つまり香りが命。樽の香りを果汁に移していくことが、何より重要なんです。なかには10回近く移し替えるものもあります。伝統タイプの製造法は、大変な手間がかかる分、値段も数千円からウン万円まで跳ね上がります。イタリア食材の専門店やイタリアの催事でないと、あまりお目にかかれないですね」
スーパーで見かけるのは、ワインビネガーを加える簡易タイプ
「もうひとつの簡易タイプは、モストコットにワインビネガー(=ぶどう酢)を加えて熟成させる製造方法です。スーパーに並んでいるほとんどがこのタイプで、手頃な値段で買えるのが魅力です。樽は移し替えず、カラメル色素を使って手軽にコクを出しているメーカーもあり、ラベル裏の原材料を見ると表示があるのでわかります」
ホワイト・スプレー・粒など、進化形にも注目!
最近、注目のバルサミコが登場している、と久保田さん。
「ホワイトバルサミコは、色をつけずに風味だけ加えたいときに便利。白ぶどうをステンレスの鍋で煮詰めるので、透明感が出ます。和食との相性がよく、寿司酢、三杯酢、酢味噌におすすめです。
さらなる進化形が、色鮮やかな料理にかけても色が付きすぎないようにと考えられた「スプレータイプ」や、フィンガーフードなどに使うと華やかになる「バルサミコ・パール(真珠)」と呼ばれる粒状のタイプ。どちらも通常のバルサミコとホワイトバルサミコの両方があるそうです。
まだまだ知らない、バルサミコQ&A
さらに久保田さんに、気になるバルサミコの素朴な疑問についても教えてもらいました。
Q 保存は冷蔵? 常温?
A .保存は常温でOK。冷蔵庫に入れるとかえってぶどうの澱(おり)が凝固して瓶の底にたまってしまいます。液ダレをそのままにしておくと劣化のもとになるので、ふたをする前に必ずよく拭き取ってください。もともと熟成したものなので、賞味期限はかなり長いのが特徴です。
Q 高級なバルサミコの値段ってどのくらいするの?
A. 伝統製法で12年以上熟成させて造られたものは、アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ(伝統的)と呼ばれる最高級品です。葡萄の品種が限定されており、ワインビネガーはもちろん添加物は一切なし、最低12年以上の熟成が必要です。50年、100年熟成させたものがあり、100mℓで1〜3万円することも。「公爵の酢」「調味料のキャビア」とも呼ばれていて、昔は貴族の献上品や嗜好品だったんです。
Q より美味しく使う、おすすめの調理法は?
A.スーパーで気軽に買えるバルサミコはドレッシングに使うだけでなく、加熱にもむいています。プロのシェフの間では半量くらいまで強火で煮詰める方法が人気。酸味がなくなりコクが出て、肉や魚のソテーにぴったりの極上ソースになるんですよ。肉や魚を漬け込んで焼くのもおすすめです。
ただし高級なバルサミコは、火を通すと香りが一気に飛んでしまうので加熱する料理には不向きです。
取材協力/シイ・アイ・オージャパン 常務取締役 久保田智彦さん
写真右が久保田さん。イタリアの生産者を訪ねてバルサミコやオリーブオイルを仕入れ、日本の消費者に紹介している。日本中のデパートの催事に出店。取材の当日に、三越伊勢丹の催事担当、杉崎義英さん(写真左)とイタリア展の打ち合わせで熱心に語り合う。
催物のご案内
【催物のご案内】
2016年9月27日(火)~10月2日(日) 最終日午後7時閉場
伊勢丹新宿店本館6階=催事場にて、イタリア展を開催いたします。会場でしか出会えない素晴らしいイタリアの食をご用意しております。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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