2016.08.22
創業100余年京都の老舗<老松(おいまつ)>本店。 和菓子から伝わる魅力、おすすめとは
伝統を守りつつも新しいことにも取り組んでいる京都の老舗<老松(おいまつ)>は、多くの和菓子好きの人から愛されています。その魅力に迫るべく、京都の北野にある本店を訪ねました。さらに、4代目当主に和菓子作りの根底にある思いについても、お話をうかがうことができました。
花街の上七軒(かみしちけん)で本店を構える、100余年続く京菓子の老舗
創業から100余年の<老松>は、上七軒の一角に本店を構えています。上七軒とは、JR京都駅から京都市バスに乗って約30分の場所にある花街。「京都五花街」のひとつに数えられ、石畳の通りに昔ながらの町家が立ち並ぶ、美しい景観が広がっています。すぐそばには学問の神様を祀る北野天満宮が。毎月25日には地元の人が「天神さん」と呼ぶ骨董市が開催され、<老松>周辺も賑わいます。
本店でもある<老松>北野店は、格子戸にかかる真っ白な暖簾が映える町家建築。その店構えからも老舗の風格がひしひしと伝わってきます。毎朝、打ち水されている玄関は掃き清められ、ここに立つだけで長い年月をかけて磨かれてきた、京都の洗礼を受けるかのようです。
暖簾をくぐり店内へ入ると、ショーケースに定番のお菓子や季節の商品がゆったりと並んでいます。お茶会にも使われる上生菓子は、今の季節にしか出合えないものばかり。移りゆく上生菓子から季節を感じること、「まさにそれが京菓子店を訪れる楽しみ」と京都の人は話します。
ほかにも<老松>では、先代から受け継がれてきた定番の和菓子や、職人さんの自由な発想から生まれた創作菓子、季節のフルーツを使った寒天菓子「夏甘糖」など、古きものと新しきものが織りなす、豊かな世界観をもったお菓子にも出合うことができます。
<老松>を代表するおすすめ銘菓3選
<老松>の本店では、定番商品が約25種類、季節の上生菓子が約5種類、店頭に並びます。そのなかから代表的な銘菓を3つご紹介します。
「御所車」は京都御所ゆかりの、みやびやかな落雁
当主のお父さまである3代目が考案した<老松>を代表する銘菓「御所車」(写真左)。しっとりとした食感の落雁には、表面にお公家さんが乗る牛車の文様がほどこされ、宮中を思わせる京菓子らしいデザインです。3センチ角ほどの小さな落雁には、甘さが控えめの粒あんが入っていて、幅広い層から人気があります。
「香果餅」は月餅を京風にアレンジした、コーヒーにも合う一品
<老松>の職人さんが香港で出合った月餅を、日本人の口に合うようアレンジした京風月餅「香果餅」。ドライフルーツ入りの白あんを粒あんで巻き、そぼろをまぶした創作和菓子です。頬張った瞬間にやさしく広がるあんこの風味に、フルーツの酸味がアクセントになった、コーヒーや紅茶にもよく合う一品です。
職人さんと相談しながら作る、オーダーメイド和菓子
茶道が盛んな京都では、和菓子をオーダーメイドできる文化が、若い世代にも浸透しつつあります。こちらはその一例。「琳派の日本画家、酒井抱一の作品をお菓子に」という難題に、職人さんが見事に応えた一品。真っ赤な太陽は原画のままに、空は錦玉(寒天)、富士山にかかる霞は道明寺粉で表わしています。あえて富士山を描かないことで、雄大にそびえ立つ姿を想像させてくれます。
和菓子は相手の喜ぶ顔を見るための「おもてなしのひとつ」
<老松>の4代目当主・太田達さんに、和菓子に込めた思いについてうかがいました。
「和菓子はお茶会を構成する要素のひとつ。お茶会はおもてなしの心で開くものですから、お菓子もその気持ちを大切にしています」
太田さんは、和菓子の魅力をより深く知るために「自分好みの和菓子をオーダーする文化に、もっと親しんでほしい」と話します。オーダーメイドで和菓子を作ると聞くと、ハードルが高そうに聞こえますが、もともと茶道が盛んな京都ではなじみのある文化。注文単位は2~3個からでもOK。しかも値段は1個500円前後と、思った以上に身近なことなのです。
初めての人でも気軽に自由に、おもてなしの和菓子を作ってほしい
「お茶に親しんでいない人でも、自分たちが作りたいお菓子をイメージして、店へ相談しに行く。そんな風にして、もっと気軽に自由に楽しんでいいのです」と太田さん。
「大切なことは」と太田さんが付け加えたのは「楽しむ心」。招く側、招かれる側、両方ともに楽しむ心に寄り添うことこそが、本来の和菓子の在り方だそうです。
初めて和菓子を注文して作ってみたいという人は、イメージしている具体的な見本になる物や写真があれば持参したり、絵で描いたり言葉で説明したりと相談すればOK。材料や製法は職人さんにお任せするのがおすすめです。また、そのお店の既存の和菓子を選び、色を変えたり焼き印を加えたり、金粉をふるなど手軽なアレンジなら、予算を抑えることも可能なのだそう。
手のひらに乗る小さな世界に、わくわくする豊かなおもてなしの心が込められた<老松>の和菓子。ぜひ一度、味わってみてはいかがでしょう。
取材協力/有職菓子御調進所 老松 四代目当主 太田 達
<老松>4代当主。世界各国に活躍の場を広げる茶人でもある。茶事、京菓子づくり体験、京文化教養講座、展覧会を通じて、日本文化の継承に尽力。江戸中期の京都を代表する儒学者・皆川淇園創立の学問所「弘道館」の維持継承にも努めている。
催物のご案内/商品の取扱いについて
【催物のご案内】
<有職菓子御調進所 老松>特別出店
■開催期間:2016年8月31日(水)~9月6日(火)
■場所:日本橋三越本店 本館地下1階 自遊庵
※9月6日(火)は上生菓子の販売はございません。
【セミナーのご案内】
日本のおもてなし <有職菓子御調進所 老松>
主人 太田 達氏による「茶の湯の空間」セミナー
■開催日:2016年8月31日(水)
■場所:日本橋三越本店 本館7階催物会場内特設会場
■定員:28名様
■参加費:3,240円(税込)
■ご予約・お問い合わせ:電話 03-3274-8273
茶の湯の精神で日本を幸せにしたい――をコンセプトに、茶の湯のおもてなしの本質と新しさを創造する<有職菓子御調進所 老松>の季節のお菓子をはじめとするクリエーションを、日本橋三越本店 地下1階の自遊庵にて期間限定でご紹介いたします。
期間中は自遊庵嗜み処にて、老松のスタッフによる呈茶もご提供いたします(有料)。
また、8月31日(水)には、店主・太田 達氏による「茶の湯の空間」セミナーも開催し、太田氏や<老松>が考案するおもてなしの空間について、直接お話しいただきます。
【商品の取扱いについて】
記事で紹介している商品のうち、「御所車」「香果餅」は、
2016年8月31日(水)~9月6日(火)まで、日本橋三越本店本館地下1階=自遊庵にてお取扱いがございます。
伝統の味わいと、創意工夫によって生まれる新しい美味しさを取りそろえた、三越オンラインストア「和菓子セレクション」はこちら。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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