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2016.03.26

ガーデンプランナーに聞く、桜・お花見の楽しみ方

ガーデンプランナーに聞く、桜・お花見の楽しみ方

もうすぐ、お花見シーズン到来。みなさんは毎年、どのように花見を楽しみ、何を思いながら桜を眺めていますか? 今回はフラワーアーティストであり、ガーデンプランナーの塚田有一さんに、花見のおもしろさや桜の魅力について伺いました。また、特別に桜をつかった生け花も披露していただきましたので、ぜひご覧ください。

そもそも桜とは? 日本人と桜の関係

桜の枝

――日本人は、本当に桜が大好きですよね。

「『万葉集』で一番詠まれたのは梅でしたが、その後花といえば桜、になりました。美意識云々という前に寒い冬を越えて山里に春を呼ぶ花であり、いろんな表情を持っているところが、日本人の美意識や心情にフィットしたんじゃないでしょうか。花の盛りの華やかさに対し、一気に散ってしまうはかなさもある。ちょっと妖しさもありますよね。ちなみに『さくら』の語源とは、『さ=聖なるもの』、『くら=座す』で、『聖なるものの降りる場所』という意味を持つんですよ」

――たしかに、桜はすごく清浄なイメージがありますね。

「だから昔の日本人は、桜が咲くと『神様が降りてきてくれた』と解釈したんです。冬の間枯れていた山に、いち早く咲くのが桜ですからね。花見と農耕は関係が深く、たくさん花が咲くことは、実りが多くなる、つまり豊作の象徴でした。桜を見ながら『もっと咲け』と囃し立て実りを願うことで、田畑の豊作を願ったのが始まりなんです」

――その後、今のように国民的行事にまで広まったんですね。

花見の魅力は<桜と対話できること>

――塚田さんならではの、花見を楽しむ視点ってありますか?

「そうですねぇ……。やっぱり花を見て『もの思う』のは人じゃないですか。見ることって、相手があって初めて成立しますよね。愛でる、という感情も、また今年も春がやってきてこうして桜に出合える、その奇跡に感じ入ること。『愛でる』はですから『めずらしい』ことでもありますよね。そう思えばほかの多様な命と一緒の時を、地球上で生きているんだなぁという感覚が得られると思いますよ」

――単にお酒を飲んで騒ぐだけじゃなくて、桜と対話するようなイメージですね。

「桜は花開くことが自身を放つことですし、人は話したり表情などで自身を放ちます。日本は、地下で4つのプレートが合わさっているので、植物の種類がものすごく多様なんです。でも、現在ではその多様性が失われようとしているということで、ホットスポットに指定されている。それをよく知らない日本人も多いですから、花見をしながら、そういった日本の風土にまで思いを馳せてもらえるとうれしいです。桜だけが春を表すのではなく、やわらかい草や、小さな花々や、風や虫たち、鳥たちなどなど生命に溢れかえった山の息吹を浴びに行くことがお花見だったのでしょう」

――今日は実際に、塚田さんに桜を生けてもらいました。花材は東海桜と山桜の二色の桜に、雪柳、しだれ柳。とても幽玄な雰囲気で素敵です。

桜を生ける塚田さん

「生けた花の絵のもっとも古いとされるものには柳と桜が青磁の瓶に生けられたものが描かれています。それをイメージしてみました。春になると、山では氷が溶けて水が温み流れます。その雪解け水のイメージも入れたくて、ガラスの器を使ってみました」

――柳の曲線も美しいですね。

「芽吹いたばかりの感じもいいでしょう。植物自体は無垢な存在ですから、場を清めてくれますよね。生け花は、『ここではないどこか』を引き寄せる技術。都会だと家やベランダも狭いですし、庭がない方も多いですから、こうして花を飾ることで、季節や『遥かなもの見えない世界』を引き寄せるのはオススメです」

桜の生け花

花見を疑似体験してみました

雲井の桜

<とらや>雲井の桜(1本)3,888円(税込)  ※1本の中には2つの羊羹が入っています

――では、塚田さんが生けてくださった桜を眺めながら、早速お花見気分を味わってみましょう。

「素敵な和菓子ですね」

――とらやさんの、春限定の「雲井の桜」という羊羹だそうです。雲井=はるか遠くという意味で、宮中を表しているのだとか。

「なるほど。春の宮中で咲き誇る桜を表現しているんですね。羊羹の色味は淡くて春霞を連想させます。小豆は曲水の玉石のようでもありますね」

――塚田さんは、毎年お花見はされるのですか?

「実はあまり(笑)。ひとりでひっそり見ているほうが好きなんです。わざわざ名所へ出かけるよりも、身近なところや、旅先で偶然出合うのがうれしいですね」

――そうなのですね。これまでに思い出に残っている桜はありますか?

「お堀沿いの桜は好きです。土手の淡い緑や、連翹(れんぎょう)や雪柳、山吹、シャガなどと咲き競う感じでしょうか。くぐり抜けたり、そぞろ歩きながらとか、人が少ない深夜の月明かりなどでぶらぶらしながら見ているのが好きかも知れません。たしかに花は、よく見ると枝の先端で咲いています。そして、どんなときでも、自らを放ち、時の流れの時代の先端で咲いている。植物はその土地の言葉であり、花は季節ごとの大地の歌なんです。花に出合い、その歌が聞こえるようになりたいですね」

いかがでしたか? 花を生けるときは、「自分が小さくなってここで遊んで楽しいか」を考えるという塚田さん。花に対してのピュアな思いがたっぷり伝わってくるインタビューでした。<桜と対話する>気持ちで楽しむお花見は、また桜の新たな魅力に気づかせてくれるかもしれません。

塚田有一さん塚田有一(つかだ ゆういち)

ガーデンプランナー/フラワーアーティスト/グリーンディレクター。 1991年立教大学経営学部卒業後、草月流家元アトリエ/株式会社イデーFLOWERS@IDEEを経て独立。作庭から花活け、オフィスのgreeningなど空間編集を手がける。 旧暦や風土に根ざした植物と人の紐帯をたぐるワークショップなどを展開。 「学校園」「緑蔭幻想詩華集」や「めぐり花」など様々なワークショップを開催している。温室(http://onshitsu.com/)

文: 西島恵

写真:下村しのぶ
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

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