2016.02.04
油揚げ+お米には意味があった! 「いなり寿司」の豆知識
大人から子供まで、みんなが大好きな「いなり寿司」。親しみを込めて「おいなりさん」と呼ぶこともありますよね。でも改めて考えてみると、「おいなりさん」って誰のこと? どうして油揚げとお米の組み合わせなの? など、知らないことばかり。そこで、さまざまな日本文化に詳しい和文化研究家・三浦康子さんに、いなり寿司の由来について教えていただきました。
いなり寿司は「稲荷神」へのお供え物
普段はおにぎりと同じように食べている、親しみ深い食べ物「いなり寿司」。でも本来は、神へ捧げる神聖な食べ物なんだそう。
「いなり寿司は、初午祭で『稲荷神』へ捧げるお供え物に由来します。『稲荷神』は農耕を司る神様のことで、その神を祀るのが稲荷神社。その総本山が京都の伏見稲荷大社です。初午とは、2月最初の午の日のことで、伏見稲荷大社がある稲荷山に神が降臨したとされる日。全国の稲荷神社では、五穀豊穣や商売繁盛を祈願する『初午祭』が行われます。その際に稲荷神へ奉納されるのが、いなり寿司というわけです」
2016年は2月6日が初午に当たる日。2月の行事と聞いて、まず思い浮かぶのは「節分」(2月3日)ですが、こんな大切な行事もあったんですね。
「油揚げ」にも「お米」にも意味があった!
「油揚げは、稲荷神の使いとされる『狐』の好物。本来の狐の好物はネズミですが(※ネズミの油揚げという説もあります)、殺生はタブーとされるため、代わりに大豆でできた油揚げを供えるようになったようです。その後、油揚げの中に農耕の神である稲荷神がもたらしてくれた飯(酢飯)が詰められるようになりました。稲荷神にまつわる2つの食材が組み合わさってできたのが、いなり寿司なのです」
東日本では「俵型」、西日本では「三角形」
いなり寿司には「俵型」と「三角形」がありますが、三浦さんによれば、その形は東西で分かれ、それぞれに意味があるんだそう。
「東日本の主流は『俵型』。「米俵」に見立てて生まれた形です。対して西日本では『三角形』が主流。「キツネの耳」に見立てたものです」
形は違えど、どちらにも稲荷信仰が反映されているんですね。
あなたはどれを選ぶ? バリエーション豊かな「いなり寿司」カタログ
いわれを知ったら、「いなり寿司」が食べたくなってきませんか? 「いなり寿司」とひと口に言っても、油揚げと酢飯だけのシンプルなタイプから、酢飯の中に具材が入っているもの、おこわで作られたものなど、バリエーション豊かないなり寿司が売られています。いろいろなタイプを食べ比べてみても面白いですね。
①<神田志乃多寿司>昔いなり
創業1902年以来、長く愛される老舗<神田志乃多寿司>。人気の「昔いなり」は、昔ながらの味と製法を受け継いだ銘品です。甘めに味付けされた手揚げの油揚げは厚みがあり、口に入れた瞬間じゅわっと煮汁が溢れます。酢飯に入っているレンコンが、食感のアクセントに。
②<スシアベニューK’s>柚子いなり
油揚げが裏返しになった、関西風の三角形タイプ。一口食べるとほろりと崩れる酢飯にはゆず皮が混ぜ込まれ、さわやかな柚子の風味が広がります。
③<亀戸 升本>マクロビ稲荷
具材の色鮮やかさが美しい一品。玄米の酢飯に煮付けた人参やしいたけを混ぜた『玄米五目稲荷』(写真左)、モチモチとした食感の黒米を使った『玄米黒米いなり』(写真右)のセットです。
④<おこわ米八>おこわいなり
酢飯の代わりに「おこわ」を包んだ変わりいなりは、おこわ専門店<おこわ米八>ならでは。「かやくおこわ」、「栗おこわ」、「お赤飯」や季節のおこわなど全5種類が贅沢に味わえます。
取材協力
三浦康子(みうらやすこ)
和文化研究家。古き良き日本の文化を今に生かす方法をTV、ラジオ、新聞、雑誌、Webなどで提案。NHK「マイあさラジオ」、フジテレビ「ノンストップ!」などレギュラーも多数。順天堂大学非常勤講師もつとめ、「行事育」提唱者としても注目されている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、『粋なおとなの花鳥風月』(中経出版)ほか多数。http://wa-bunka.com/
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=旨の膳/神田志乃多寿司、スシアベニューK’s、亀戸 升本、おこわ米八にてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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