2015.09.29
米? 豆? 麦? 味噌選びに役立つ伝統調味料の世界
日本のソウルフード、お味噌汁に欠かせない味噌。どの家にもある、誰もが知っている調味料ですが、その作り方や歴史はあまり知られていないのでは? そこで今回は、知らなかった味噌の深~い世界へご案内します。
色ではなく、麹によって呼び名が変わる
まず、味噌というと「赤」や「白」という言葉が浮かぶのですが、どんな種類があるのでしょう? 東京中野に店を構える老舗「あぶまた味噌」の佐藤清さんに教えていただきました。
「味噌はまず、色ではなく、材料である麹の種類で分類されます。味噌は主に大豆と麹と塩で作るのですが、麹には豆麹、米麹、麦麹の3種類があり、それぞれからできたものを豆味噌、米味噌、麦味噌といいます。大豆のお嫁さんと麹の旦那さんが結婚すると、旦那さんの姓になると覚えてください(笑)」
てっきり色で判断していると思っていましたが、使う麹によって変わるんですね。
気候や風土の違いから生まれた多彩な種類
さらに、これらは作られる地域も異なるのだとか。味噌のなかでも最も歴史の古い味噌は豆味噌です。豆味噌の中で有名な愛知県の八丁味噌は、岡崎城から西へ八町はなれた八丁村で作られていたもの、特徴はそのコク。米味噌のなかで最もポピュラーな信州味噌は長野県発祥で、麦味噌は九州を中心に親しまれているそうです。
「米味噌のなかでも、お米の量を多くして甘く仕上げたものを甘味噌といい、それが西京味噌や当店の看板商品である江戸甘味噌になります。特に江戸甘味噌は三河出身(現在の愛知県)の徳川家康が、八丁味噌のようにコクがあり、西京味噌のように甘く上品な味噌を……と命じて作られたもの」とのこと。
かつて都民の6割が食べていましたが、戦時中に米をたくさん使う江戸甘味噌は贅沢品だと製造が禁じられ、その間に信州味噌が普及したという経緯があるといいます。
離れた土地の味噌同士を組み合わせる
お米の産地である日本海側では、原料のお米の比率が高いなど、地域ごとの違いは風土や特産品の影響も大きいのだそう。地方にはまだまだ知られざる味噌があるそうで、全国の味噌から自分にぴったりの1品を探してみるのも楽しそうです。
さらに上級テクニックとして、佐藤さんからこんな提案も。
「気に入った味噌を数種類揃えて、自分だけの合わせ味噌を作るのもおすすめです。コーヒーなどと同じで、味噌も合わせると互いの良さがプラスされておいしくなる。このときのコツは、たとえば、北海道と九州など産地の遠いものを合わせること。遠い分だけ違いが大きくなるので、新しい味わいが楽しめるんです」
いい味噌は、焼いたときの香りがいい
お気に入りの味噌を見つけたら、味噌汁以外にどんな使い方を楽しめますか? 「うまみを楽しむ八丁味噌系なら煮込み料理に使ったり、おにぎりや季節の野菜につけて焼くのもおすすめ。いい味噌は、焼いたときの香りがいいんですよ」。その香ばしさを想像するだけで、食欲がそそられます!
平安時代の文献にも登場するほど古くから親しまれ、時代や地域ごとに発展してきた味噌。そのほんの入口に立っただけで、多様で奥深い世界があることに驚かされました。はたして我が家の味噌はどのように作られ、どんな歴史を経てここにあるのか? そんな思いで味噌と向き合ってみると、「いつもの味」ががらりと変わってくるかもしれませんよ。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=シェフズセレクション/あぶまた味噌にてお取り扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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